道ばた咲く小さな花に歩み寄り、顔を近づけてじっくり観察すると、そこにはたいてい、もっと小さな命がきらめいている。この真っ赤な小粒ちゃんたちは、カベアナタカラダニ。花粉を食べて暮らす平和なヴィランです。
”アナロジーは、個人の経験や記憶のデータベースと照合しなければ動きません。「何をもって何とみなすか」のあいだには、人それぞれの「ものの見方」が入らざるを得ないのです。そのため、10人いたら10人のアナロジーがある。だからこそ、導かれた視点が価値を持つのです。 ・・(中略)・・自分のイマジネーションに向き合うことさえできれば、誰の中にもアナロジカルに発想する力はあるのです。”ー『才能をひらく編集工学』(安藤昭子、2020)
EELにはたくさんの祝電が送られてきている。6月23日に新社長に就任した安藤を寿くものだ。2階学林堂は紅白のお花が飾られて鮮やかである。その安藤が中心となり、発想力にビジョン浸透にと、EELでは数々の企業研修を進めてきた。近年「アナロジカル・シンキング」の講座が特に人気がある。「地と図」や「アーキタイプ」を型として活用する。
イシスではアナロジー・アフォーダンス・アブダクションの「3A」は編集稽古の骨法であるが、日常のビジネス業務ではほとんどアナロジーの威力を実感されていない方が多い。個人的な見方や好きや飛躍より、客観的な説得性や納得性を詰める思考が動く。そこを解きほぐして、自由連想の扉をひらく。
最近では、かつて松丸本舗のブックショップエディターであり、現役の[離]火元組でもある小川玲子師範にも講師をお願いした。小川さんは受容と評価のメリハリがうまい。鋭い。濃淡がある。対面で、ビシッと南を指すフィードバックを返すことができる。「連想に型があることに驚いた」「らしさを捉えるのが楽しい」「編集稽古をしてみたい」など、受講者の感も応も動く。今後は、アナロジーやアブダクション実践の講座ラインナップを仮設していくことになるだろう。編集工学3Aに、読相や方法日本の見方もまぜまぜしていきたい。
[編工研界隈の動向を届ける橋本参丞のEEL便]
//つづく//
橋本英人
函館の漁師の子どもとは思えない甘いマスクの持ち主。師範代時代の教室名「天然ドリーム」は橋本のタフな天然さとチャーミングな鈍感力を象徴している。編集工学研究所主任研究員。イシス編集学校参丞。
かつて校長は、「”始末”とは、終わりのことですが、エンディングとビギニングは一緒だということ。歌舞伎役者が最後に舞いたい踊りは、自分を目覚めさせる踊りかもしれないわけで、終わりのメッセージとは、何か始まりを感じさせるもの […]
「日本流(経営)の本質は、異質なものを編集する力だったはずだ。ーーー異質なデータを価値ある情報に編集する知恵がこれからの勝負となる。それをセマンティックプラットフォーマーと呼んでいる。」 一橋大学ビジネスス […]
【参丞EEL便#034】 職場から「おしゃべり」が失われている?
ブライアン・イーノは、1996年に「scenius(シーニアス)」という言葉をつくった。「scene + genius」。文化的および知的進歩の多くは、あるシーン(やリアルな場所)から、一種の集合的魔法をおこした多数の人 […]
【参丞EEL便#033】「ちえなみき」で触れる7つの文字の世界
ひとつ、「雲」という字は元々は「云」と書き、これは雲気たなびく下に、竜のくるっと巻いたしっぽが見えている形である。大昔、人々は雲の中に「竜」がいると考えていた。 来場者10万人を突破した福井県敦賀市「ちえなみき」で、「一 […]
赤坂から、赤堤へ。 2012年12月、EELは6万冊の本と一緒に、赤坂から赤堤(最寄りが豪徳寺駅)へと引っ越しをした。知の移転を行った。 そこからちょうど10年、校長への献本や千夜本や、EELプロジェクト関 […]
コメント
1~3件/3件
2025-11-25
道ばた咲く小さな花に歩み寄り、顔を近づけてじっくり観察すると、そこにはたいてい、もっと小さな命がきらめいている。この真っ赤な小粒ちゃんたちは、カベアナタカラダニ。花粉を食べて暮らす平和なヴィランです。
2025-11-18
自ら編み上げた携帯巣の中で暮らすツマグロフトメイガの幼虫。時おり顔を覗かせてはコナラの葉を齧る。共に学び合う同志もなく、拠り所となる編み図もなく、己の排泄物のみを材料にして小さな虫の一生を紡いでいく。
2025-11-13
夜行列車に乗り込んだ一人のハードボイルド風の男。この男は、今しがた買い込んだ400円の幕の内弁当をどのような順序で食べるべきかで悩んでいる。失敗は許されない!これは持てる知力の全てをかけた総力戦なのだ!!
泉昌之のデビュー短篇「夜行」(初出1981年「ガロ」)は、ふだん私たちが経験している些末なこだわりを拡大して見せて笑いを取った。のちにこれが「グルメマンガ」の一変種である「食通マンガ」という巨大ジャンルを形成することになるとは誰も知らない。
(※大ヒットした「孤独のグルメ」の原作者は「泉昌之」コンビの一人、久住昌之)