蛹の胸部にせっかくしつらえられた翅の「抜き型」を邪険にして、リボンのような小さな翅で生まれてくるクロスジフユエダシャクのメス。飛べない翅の内側には、きっと、思いもよらない「無用の用」が伏せられている。
リハーサル中、校長の書の前に座する吉村堅樹林頭を目にして私は、数メートル下ったところから知らず手を合わせていた。お姿がありがたい……。
休憩時間に駐車場で、謁見をお願いする気持ちで声をおかけした。
A「林頭。神々しくて、近寄れません。お傍から蘭奢待の香りがします。感門之盟では和服をときどきお召しになるんですか?」
林「いや、初めてなのよ」
A「えっ!!! 堂に入ってらっしゃって、ふだんから着付けてらっしゃるとしか思えません」
林「持ってないからね。これ、ぜんぶ優子学長の見立て。アレにしなさい、コレがいい、はい、はい、と」
A「うーん、さすがです。見れば見るほど本物です、高僧です」
林「袈裟は着てたな。坊主やってたからね」
い「・・・お坊さんって、 “やる”もんなんですか?」
林「そうよ。やれるのよ。師範代だってそうでしょ。教えるなんてできませ〜ん、なんて言ってる人たちがさ、立派にやっていくわけじゃない」
そう言いながら林頭は片手に持っていた煙草を灰皿に押しつけ、本楼へと消えていった。林頭の和服姿は粋に向かうと思われたが、むしろ雅だった。
(写真・文/匿名希望)
今井サチ
編集的先達:フェデリコ・フェリーニ。
職もない、ユニークな経歴もない、熱く語れることもないとは本人の弁だが、その隙だらけの抜け作な感じは人をついつい懐かせる。現役時代はライターで、今も人の話を聞くのが好き。
Neo OPERA PROJECT 〜ズレの工学と物語マザー【物語講座18綴蒐譚場】
世は物語であふれている。文学やエンターテイメントのフィクションを超え、気がつけば、歴史や科学のパラダイム、企業やマーケティングのストーリー、SNSでの自己表現などあらゆるものが物語として語られるようになっていた。が、しか […]
11/24(月)12時半〜13時半:「オツ千」初の客入れライブで、千夜千冊『歎異抄』を読み解く【別典祭】
本の市場、本の劇場、本の祭典、開幕! 豪徳寺・ISIS館本楼にて11月23日、24日、本の風が起こる<別典祭>(べってんさい)。 松岡正剛、曰く「本は歴史であって盗賊だ。本は友人で、宿敵で、恋人である。本は逆上にも共感に […]
松岡正剛 太田真三=写真 『見立て日本』(角川ソフィア文庫)より。百人一首は、藤原定家による和歌世界の優れたアーカイブ編集が、絵札と字札が対のカルタ遊びに変容したもの 島が弧を描いて連なる日本を「花綵(かさ […]
仮面の下の素顔とは──? 壇上で、文化人類学者・今福龍太さんの新刊『仮面考』のカバーが外され、広げられて、裏返された。そこには大小さまざまなテキストの塊がびっしりと並んでいる。ぱっと目に入るのは、「離脱せよ」。重要なテキ […]
黒のセットアップの胸元を軽く直していた八田英子律師。司会に呼ばれて壇上に上がるその瞬間、表情にぱっと光が射した。「門」をまたいだのかもしれない。 今日、9月6日は「第88回感門之盟/遊撃ブックウェア」開催日 […]
コメント
1~3件/3件
2026-01-20
蛹の胸部にせっかくしつらえられた翅の「抜き型」を邪険にして、リボンのような小さな翅で生まれてくるクロスジフユエダシャクのメス。飛べない翅の内側には、きっと、思いもよらない「無用の用」が伏せられている。
2026-01-13
自らの体内から這い出したコマユバチの幼虫たちが作った繭の塊を抱きしめるシャクトリムシ。科学者は「ゾンビ化されて繭を守るよう操作されている」と解釈するけれど、これこそ「稜威」の極北の姿ではないだろうか。
2026-01-12
午年には馬の写真集を。根室半島の沖合に浮かぶ上陸禁止の無人島には馬だけが生息している。島での役割を終え、段階的に頭数を減らし、やがて絶えることが決定づけられている島の馬を15年にわたり撮り続けてきた美しく静かな一冊。
岡田敦『ユルリ島の馬』(青幻舎)