高僧林頭降臨【88感門】

2025/09/06(土)17:38 img
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リハーサル中、校長の書の前に座する林頭を目にして私は、数メートル下ったところから知らず手を合わせていた。お姿がありがたい……。

休憩時間に駐車場で、謁見をお願いする気持ちでお声をおかけした。

 

 

A「林頭。神々しくて、近寄れません。お傍から蘭奢待の香りがします。感門之盟では和服をときどきお召しになるんですか?」

林「いや、初めてなのよ」

A「えっ!!! 堂に入ってらっしゃって、ふだんから着付けてらっしゃるとしか思えません」

林「持ってないからね。これ、ぜんぶ優子学長の見立て。アレにしなさい、コレがいい、はい、はい、と」

A「うーん、さすがです。見れば見るほど本物です、高僧です」

林「袈裟は着てたな。坊主やってたからね」

い「・・・お坊さんって、 “やる”もんなんですか?」

林「そうよ。やれるのよ。師範代だってそうでしょ。教えるなんてできませ〜ん、なんて言ってる人たちがさ、立派にやっていくわけじゃない」

 

そう言いながら林頭は片手に持っていた煙草を灰皿に押しつけ、本楼へと消えていった。林頭の和服姿は粋に向かうと思われたが、むしろ雅だった。

 

(写真・文/匿名希望)

  • 今井早智

    編集的先達:フェデリコ・フェリーニ。
    職もない、ユニークな経歴もない、熱く語れることもないとは本人の弁だが、その隙だらけの抜け作な感じは人をついつい懐かせる。現役時代はライターで、今も人の話を聞くのが好き。