何の前触れもなく突如、虚空に出現する「月人」たち。その姿は涅槃来迎図を思わせるが、その振る舞いは破壊神そのもの。不定期に現れる、この”使徒襲来”に立ち向かうのは28体の宝石たち…。
『虫と歌』『25時のバカンス』などで目利きのマンガ読みたちをうならせた市川春子が王道バトルもの(?)を描いてみたら、とんでもないことになってしまった!
作者自らが手掛けたホログラム装丁があまりにも美しい。写真ではちょっとわかりにくいか。ぜひ現物を手に取ってほしい。
(市川春子『宝石の国』講談社)

★バックナンバー:
―――優子先生からみて編集学校に”ないもの”、不足していることは何だと思いますか。
「議論」とか「対話」でしょうか。あるいはそういうチャンスでしょうか。「この人と話したいみたい」「師範に直接あって話を聞きたい」とか、これは今だって求めればできることだとは思うんです。
でも、[守]・[破]の汁講や[離]の表沙汰など、リアルで集まる機会に、校長や師範の話を聞いたりはしますが、あるテーマで激しく議論することはない。「議論」「対話」の良い点は、自分の言ったことに対して反論があったり、それを自分がどう感じているのかに気づいたり、それに対してまた反論できるのかが試される。そういうことが起こっているときに、「ここは情報が足りなかった」「ここはちゃんと考えていなかった」とか、「頭の中が整理されていなかった」という色んなことが分かるんですよ。
私自身もそれはたとえば大学で講義をしているときや、特にテレビに出ると、あることを30秒で説明するというような状況の中で話をしなければならないので、不足が見えやすい。そういう経験というのはとても貴重です。文章を書くのも大切だけど、文章は何度も読みなおして自分で推敲することができる。発言は二度と推敲できない。その恐さは味わった方がいい。
たとえば、MOOC(ムーク)では、インターネットで講義を聞いて、レポートも提出しますが、それだけではなくて、カフェという場が用意されていて、議論できるようになっていますね。
―――松岡校長も「対話」「議論」が特に師範クラスに足りないのではないかと言っています。訓練されていないのでなかなかリアルの議論がうまくいきません。編集学校は仕組み上、稽古のプロセスが外側に見えにくくなっているので、編集力が外に見えるようにするためにもディスカッションが必要ということですかね。
そうですね。それでね、ディスカッションと対話でちょっと違うのは、対話の場合は2人だけでいいわけです。そのとき、先生は何か教えるのではなく、話を言い換えて理解を深めていく。これは、イシスがやっていることと同じですね。言い換え、着替え、持ちかえです。それを対話でやる。そうすると、その場でどんどん自分の思い込みが外れていく。要するに、ギリシア哲学にプラトンが持ちこんだことですね。
そういう対話型のものと、テーマを決めてディスカッションする方法があって、江戸時代の私塾では両方やっています。対話に議論をくっつけていく。それをやると最終的にどうなるかというと、自分の考えがはっきりしてくる。そのとき、発話には責任を取る。
言ったことに責任をとるというのは、発言したことがどういう意味かを説明し、社会に持ち出したときにそれがどう作用するかまで見通すことです。そういう経験をしていると、発言がより自分の言葉になっていく。
―――編集学校ではいろいろな人が受講していて、これは良い悪いを抜きにして、習熟度には差があります。高みを目指して、松岡校長の持っている編集の独自性や新しい価値をつくる編集力を学び、体得しようとする方向性があってもいいのに、そうはなっていません。このあたり、優子先生はどう見ますか。
教育の世界はどこでもそうですが、「底上げをするか」「天才を育てるか」のどっちを取るかの議論になる。たとえば、編集学校では自分でそれを選べるようにしてもいいわけです。「みんなと一緒に底上げして自分のレベルをあげていくためにここの教室を入ります」とか、「ここのクラスは天才を育てるクラスです」というのがあってもいいわけです。今のところ、[守][破]は底上げかなと思います。[離]も天才を育てているという感じではない。
―――大学教育の現場ではいかがですか。また、日本と欧米の違いは。
日本の大学は「底上げ型」なので、国際競争力がないといつも企業から攻められる(笑)。欧米は「エリート型」ですね。そういう傾向が強いです。日本はこれからもなかなか変わっていかないでしょうね。なぜかというと、日本はそもそも底上げ的なんです。
―――「そもそも」というのはどのくらい前からですか。
江戸時代まで遡ります。庶民クラスも含めて、全体の知的レベルが高い。でもトップはあまりいない。つまり、トップと中間層の間が近いという傾向が本当に長い間あります。
―――でも、江戸時代や近代には今の日本にはいないイノベーターがたくさんいましたよね。それはなぜですか。
底上げしているからです。底から出てくるんです。でも誰かに育てられたわけではない。仕組みがそれを現出させている。仕組みというのはさっき言ったような私塾のあり方がまさにそうですね。
工作舎時代の松岡正剛(右)
―――同じ底上げ型でも私塾と今の教育では全然違うわけですね。
違いますね。私塾はまさに私の塾。カリスマの先生がいて、その人のところで学びたいから行く。自分で選んで入って、そこで揉まれる。もちろん落ちる人もいるけれど、その中で頭角をあらわしていく人もいる。塾生はその塾が合わなければ、別の塾に変えてもいい。
今の大学のように学校に行ったからって就職できるとか、出世できるとかそんなことはまったく関係ない。好きじゃないとやっていけない。あと、一緒に暮らしながら学ぶ。もしかしたら才能のある人を本当に育てるとなると、ちょっと大変だと思うけれど、同じ釜の飯で一緒に暮らすことが必要なのかもしれない(笑)。いまは変わりましたが、昔の編集工学研究所や工作舎はそんな感じの雰囲気でしたよね。
―――今の日本の私立大学も私塾のように変わっていく可能性はありますか。
とにかく「ジェネラリストを育てる」というのが大学の責務になっています。つまり、何でもできる人ですね。たまに国立で研究者として尖っていく人を育てているところはありますが、本当にごく一部です。また、それができるのは理科系の研究ですね。
つづく
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金 宗 代 QUIM JONG DAE
編集的先達:宮崎滔天
最年少《典離》以来、幻のNARASIA3、近大DONDEN、多読ジム、KADOKAWAエディットタウンと数々のプロジェクトを牽引。先鋭的な編集センスをもつエディスト副編集長。
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