クラッシュギャルズに憧れて 44[守]デビューへ

2019/10/11(金)07:44
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 「さあ、水曜日までに12本の指南、これまでの指南の殻を破って、最速の挑戦を!」。

 

 44[守]師範の清水優年が、黒澤朋子師範代(バック・トリップ教室・Web制作ディレクター)と、森本研二師範代(ユーズームゲ教室・映像制作)に発破をかけた。

 9月30日(月)、44[守]開講にむけて錬守のゴングがなった。登板師範代は担当師範のもとで、最後の模擬演習を行う。錬守前半では、リズムよく指南を返すことが求められる。花伝生時代に自分のペースの指南執筆をしていた2人にとっては、異次元の体験。黒澤も森本もスピードに乗り切れない。

 3日目の水曜日、清水が速報する。「Facebookの募集記事に、黒澤のフライヤーが採用!」。「おお、決まったー! 44[守]の代表、文句なしです!」と実況中継風にエールを送る森本。「教室名負けしないように、ぎゃんばります!」と、黒澤の息は荒くなった。

 

 1980年代、黒澤はクラッシュギャルズに熱を上げていた。ジャーマン・スープレックスのつま先立ちと、ブリッジのアーチに、フェチな官能を覚える小学生だった。地味な印象の大人へと成長した黒澤が、35年の時を経てプロレス・リングへ舞い落ちる。


 翌日の木曜日、森本が1日遅れで12本の指南を完遂した。黒澤は翌日の0時10分に完了。森本も黒澤も、指南速度が上がるほどに言葉を研ぎ澄ませていく。反比例するように、チーム内の私語は絶無になっていく。

 0時を回ると、連日の睡眠不足がボディブローのようにじわじわと効いてくる。黒澤は「リング上のシンデレラ」と名のった。しかし、シンデレラは体を張らない。「少女時代の夢は女子プロレスラー」であった黒澤には、ドレスよりもリングコスチュームがよく似あう。錬守前半戦を終えた黒澤は、息も絶え絶えにリング上に横たわり、間近にせまったデビューの日を睨んでいる。

  • 井ノ上シーザー

    編集的先達:グレゴリー・ベイトソン。湿度120%のDUSTライター。どんな些細なネタも、シーザーの熱視線で下世話なゴシップに仕立て上げる力量の持主。イシスの異端者もいまや未知奥連若頭、守番匠を担う。

コメント

1~3件/3件

堀江純一

2025-10-02

何の前触れもなく突如、虚空に出現する「月人」たち。その姿は涅槃来迎図を思わせるが、その振る舞いは破壊神そのもの。不定期に現れる、この”使徒襲来”に立ち向かうのは28体の宝石たち…。
『虫と歌』『25時のバカンス』などで目利きのマンガ読みたちをうならせた市川春子が王道バトルもの(?)を描いてみたら、とんでもないことになってしまった!
作者自らが手掛けたホログラム装丁があまりにも美しい。写真ではちょっとわかりにくいか。ぜひ現物を手に取ってほしい。
(市川春子『宝石の国』講談社)

川邊透

2025-09-30

♀を巡って壮絶バトルを繰り広げるオンブバッタの♂たち。♀のほうは淡々と、リングのマットに成りきっている。
日を追うごとに活気づく昆虫たちの秋季興行は、今この瞬間にも、あらゆる片隅で無数に決行されている。

若林牧子

2025-09-24

初恋はレモンの味と言われるが、パッションフルーツほど魅惑の芳香と酸味は他にはない(と思っている)。極上の恋の味かも。「情熱」的なフルーツだと思いきや、トケイソウの仲間なのに十字架を背負った果物なのだ。謎めきは果肉の構造にも味わいにも現れる。杏仁豆腐の素を果皮に流し込んで果肉をソース代わりに。激旨だ。