自ら編み上げた携帯巣の中で暮らすツマグロフトメイガの幼虫。時おり顔を覗かせてはコナラの葉を齧る。共に学び合う同志もなく、拠り所となる編み図もなく、己の排泄物のみを材料にして小さな虫の一生を紡いでいく。
「さあ、水曜日までに12本の指南、これまでの指南の殻を破って、最速の挑戦を!」。
44[守]師範の清水優年が、黒澤朋子師範代(バック・トリップ教室・Web制作ディレクター)と、森本研二師範代(ユーズームゲ教室・映像制作)に発破をかけた。
9月30日(月)、44[守]開講にむけて錬守のゴングがなった。登板師範代は担当師範のもとで、最後の模擬演習を行う。錬守前半では、リズムよく指南を返すことが求められる。花伝生時代に自分のペースの指南執筆をしていた2人にとっては、異次元の体験。黒澤も森本もスピードに乗り切れない。
3日目の水曜日、清水が速報する。「Facebookの募集記事に、黒澤のフライヤーが採用!」。「おお、決まったー! 44[守]の代表、文句なしです!」と実況中継風にエールを送る森本。「教室名負けしないように、ぎゃんばります!」と、黒澤の息は荒くなった。
1980年代、黒澤はクラッシュギャルズに熱を上げていた。ジャーマン・スープレックスのつま先立ちと、ブリッジのアーチに、フェチな官能を覚える小学生だった。地味な印象の大人へと成長した黒澤が、35年の時を経てプロレス・リングへ舞い落ちる。
翌日の木曜日、森本が1日遅れで12本の指南を完遂した。黒澤は翌日の0時10分に完了。森本も黒澤も、指南速度が上がるほどに言葉を研ぎ澄ませていく。反比例するように、チーム内の私語は絶無になっていく。
0時を回ると、連日の睡眠不足がボディブローのようにじわじわと効いてくる。黒澤は「リング上のシンデレラ」と名のった。しかし、シンデレラは体を張らない。「少女時代の夢は女子プロレスラー」であった黒澤には、ドレスよりもリングコスチュームがよく似あう。錬守前半戦を終えた黒澤は、息も絶え絶えにリング上に横たわり、間近にせまったデビューの日を睨んでいる。
井ノ上シーザー
編集的先達:グレゴリー・ベイトソン。湿度120%のDUSTライター。どんな些細なネタも、シーザーの熱視線で下世話なゴシップに仕立て上げる力量の持主。イシスの異端者もいまや未知奥連若頭、守番匠を担う。
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2025-11-18
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2025-11-13
夜行列車に乗り込んだ一人のハードボイルド風の男。この男は、今しがた買い込んだ400円の幕の内弁当をどのような順序で食べるべきかで悩んでいる。失敗は許されない!これは持てる知力の全てをかけた総力戦なのだ!!
泉昌之のデビュー短篇「夜行」(初出1981年「ガロ」)は、ふだん私たちが経験している些末なこだわりを拡大して見せて笑いを取った。のちにこれが「グルメマンガ」の一変種である「食通マンガ」という巨大ジャンルを形成することになるとは誰も知らない。
(※大ヒットした「孤独のグルメ」の原作者は「泉昌之」コンビの一人、久住昌之)
2025-11-11
木々が色づきを増すこの季節、日当たりがよくて展望の利く場所で、いつまでも日光浴するバッタをたまに見かける。日々の生き残り競争からしばし解放された彼らのことをこれからは「楽康バッタ」と呼ぶことにしよう。