『キャラ者』は、”マンガ家”だった頃の江口寿史の、(まとまった作品としては)ほぼ最後の仕事。恐るべきクオリティの高さで、この才能が封印されてしまったのはもったいない。
「来年こそはマンガ家に戻ります!」と言ったのは、2016年の本の帯(『江口寿史KING OF POP SideB』)。そろそろ「来年」が来てもいいだろう。

吉村林頭が「講座の中で最高に面白い」と断言するイシス物語講座。
18綴師脚座が8月24日に開催され、そこで3つの文叢名が明らかになった。「師脚座」とは、[守][破]の「伝習座」にあたる、物語講座指導陣による「方法物語」の学びと相互編集の場である。
物語講座では、[守][破]の教室に相当する場を文叢と呼び、文叢名は「二つの物語の一種合成」によりネーミングされる。各文叢名は、担当師範代の「らしさ」を仄かに連想させるとともに、文叢での物語編集の起点や手すりともなる。
4ヶ月で5編の物語を書き上げる講座開講に先立ち、まずは師脚座で明かされた3つの文叢名と6つの文叢物語を、エディスト読者に先行公開する。
沼地の果ての温室 文叢 (北條 玲子 師範代/森井 一徳 師範)
『沼地のある森を抜けて』梨木香歩/新潮文庫
『地球の果ての温室で』キム・チョヨプ/早川書房
地球星人服従 文叢 (畑本 浩伸 師範代/高橋 陽一 師範)
『地球星人』村田沙耶香/新潮文庫
『服従』ミシェル・ウエルベック/河出文庫
産霊山ランデヴー 文叢 (堀田 幸義 師範代/小林 奈緒 師範)
『産霊山秘録』半村良/ハヤカワ文庫
『宇宙のランデヴー』アーサー・C・クラーク/ハヤカワ文庫
自明/普遍とされてきた前提やルールを問い直し、ありえた歴史/おこりうる未来など、世界の別様をアブダクションする。
気候変動や社会的混迷がエスカレートする渦中にこそ読んでほしい、歴史的現在を再編集する契機ともなる物語が、ここには揃っている。
物語を「読む/書く」の間には「物語が物語を生む動的な関係」が存在する。
これを「書く」の側から紐解けば、「擬く/準える/肖る」を駆使した方法物語と言い換えることができる。他方で「読む」の側から紐解くと、物語の読み手を媒介して動き出す「物語の自己編集性」と言い換えることができる。
この「物語の自己編集性」をリバース・エンジニアリングし、自らも物語編集において実践したのが、松岡校長が敬愛したウンベルト・エーコである。
エーコの根幹にあるのは、物語を読むとは、作者と読者の「協力によって遂行される相互的な作業」であるという考え方だ。エーコは、「作者の意図こそが唯一絶対の真理である」とする立場と、「解釈は読者の自由であり、無限の可能性がある」とする立場の両方を批判した。そして、読者の自由な解釈は、テクスト自体が持つ構造や文体など(テクストの意図)によって方向づけられ、制御されるとし、こうした解釈の枠組みを「モデル読者」という概念を用い説明した。
「モデル読者」とは、個々の物語テクストが要請する「理想的な読み手像」である。物語テクストから「モデル読者」に要求されるのは、物語の「筋」を追うことだけでなく、物語テクストの随所に仕掛けられた「鍵穴」と、物語テクストの内外に広がる「物語知識間のハイパーリンク構造」を何度も推論的に散策し、仮説的に物語の意味を解釈することである。
このように、物語の読み手は「物語の自己編集性」に導かれ、「モデル読者」たらんとする経験を通して、物語テクストに織り込まれた「方法物語」を引き受ける。そして、物語を読む/書くの円環的な往還の中で、世界を方法的に問い直し/編み直してゆく…
文叢物語の方法的な「共読」を契機として、文叢や講座全体で相互共振しつつ「方法的に書く」ことを加速させます。
「方法物語」の真髄に迫りたい方の受講、お待ちしています!
文/高橋陽一(18綴・物語講座 師範)
[遊]技法研鑽コース 「物語講座」第18綴
https://es.isis.ne.jp/course/yu-narrative
■ 期間:2025年10月6日(月)~2026年2月1日(日)
ライブ稽古「蒐譚場」2025年12月13日(土)
編集工学研究所(本楼)
■ 資格:[破]応用コース修了者(突破)以上
■ プログラム:窯変三譚/トリガー・クエスト/編伝1910
■ お申込み ※再受講割引あり。
https://shop.eel.co.jp/products/es_yu_mono_018
イシス編集学校[遊]物語講座
編集の源に物語あり。世界を見立て、構造化して語り直す、「方法としての物語」を体現する月匠、綴師、創師、師範、師範代のチーム。
【受講者募集中!18綴物語講座】好きなものを好きと、言ってみる
「わたし、物語が好きだと気がつきました」 その言葉を聞いて、思わず顔がほころんだ。 大岡山の駅から徒歩5分、ごく普通の外観のマンションの一室。階段をのぼり、冷房の効いた部屋に入ると、青熊書店で購入した […]
【受講者募集中!物語講座第18綴】直接ではない、何かを媒介として伝えるのだ
先日、90歳になる少し前に義母が亡くなった。その時に京都で、義母の60年来のお友達の方と会食していた。彼女は義母が高校を出て勤めていた銀行の秘書課の後輩で、ずっと長い間、いちども喧嘩をしたこともない、とてもいい付き合いを […]
コメント
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2025-10-15
『キャラ者』は、”マンガ家”だった頃の江口寿史の、(まとまった作品としては)ほぼ最後の仕事。恐るべきクオリティの高さで、この才能が封印されてしまったのはもったいない。
「来年こそはマンガ家に戻ります!」と言ったのは、2016年の本の帯(『江口寿史KING OF POP SideB』)。そろそろ「来年」が来てもいいだろう。
2025-10-14
ホオズキカメムシにとってのホオズキは美味しいジュースが吸える楽園であり、ホオズキにとってのホオズキカメムシは血を横取りする敵対者。生きものたちは自他の実体など与り知らず、意味の世界で共鳴し続けている。
2025-10-07
「ピキッ」という微かな音とともに蛹に一筋の亀裂が入り、虫の命の完結編が開幕する。
美味しい葉っぱをもりもり食べていた自分を置き去りにして天空に舞い上がり、自由自在に飛び回る蝶の“初心”って、いったい…。