あの師範代があばれた熱湯風呂【75感門】

2021/03/13(土)16:17
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ちょうど1年前、2020年3月3日だった。

 

[破]の教室の勧学会に、ある学衆が3500字にのぼるコメントを投稿した。
なぜ自分は師範代をやりたくないのか。

仕事でのエピソードから己の矜持、人生観まで語り尽くし、

「私は、松岡正剛と同じ地平に立ちたい。」と言明した。

 

その冗長性はまるでダチョウ倶楽部の上島竜兵が

「絶対に押すなよ!」と言いながら、

熱湯風呂の上で最後の一押しを待つ姿に似ていた。

 

「このままひっそりイシスをフェードアウト」と書いていた学衆は、

師範、師範代、仲間からも背中をばんばん叩かれ、

「押すなって言っただろお」とにやつきながら師範代となり、

46守を人一倍の熱とスピードで駆け抜けた。

 

そして今日、感門之盟で卒門式を迎えた彼の姿を見て

仲間の一人は確信した。

 

彼には最後の一押しなんてそもそも必要なかった。
未来の学衆たちと誰にも見せない人一倍の努力が

すでに彼をソノサキから引っ張り熱湯を涙へと代えていた。

 

  • 羽根田月香

    編集的先達:水村美苗。花伝所を放伝後、師範代ではなくエディストライターを目指し、企画を持ちこんだ生粋のプロライター。野宿と麻雀を愛する無頼派でもある一方、人への好奇心が止まらない根掘りストでもある。愛称は「お月さん」。