「このエディションフェアがすごい!」シリーズ第43弾は東京堂書店神田神保町店です。世界有数の本の街・神保町でのフェアの様子を、店長の佐瀬芽久美さんからのコメントとともにお届けします。
創業130年の老舗で大規模フェアが実現
神田すずらん通りに位置する東京堂書店神田神保町店は、2020年に創業130年にむかえた老舗です。2012年に大幅なリニューアルが行われ、喫茶を併設した現在の店舗となりました。
書店の顔にあたるガラス張りのスペース一面に貼られた千夜千冊エディションフェアポスター。
佐瀬店長:
(松岡さんは)絵になるので、思い切って全面を松岡さんのポスターにしました。一つのフェアにこれだけのスペースをあてるのは数年ぶりです。
(※以下、青文字が東京堂書店の佐瀬芽久美店長のコメントです)
1階・特設スペースのエディションフェア棚。約300タイトルと言う関連本の取り揃えは、50近い全国のエディションフェアでも最大級です。
最新刊『資本主義問題』を加えた千夜千冊エディション21冊がずらり。特に人気なのは『方法文学』と『編集力』。
フェア棚の中央に鎮座する松岡校長の著作。
佐瀬店長:
中央にある松岡さんの著作を起点に、エディションの関連本へと枝葉が伸びていくイメージで本棚を構成しました。松岡さんの書籍の中では、田中優子先生の対談本『日本問答』『江戸問答』や『情報の歴史21』などがよく手に取られています。
関連本の中では文庫・新書よりも単行本がよく出ているそうです。稲垣足穂『人形人間時代』、ジェローム・デュアメル『世界毒舌大辞典』、貴田庄『レンブラントと和紙』など。『感ビジネス』(左)と『情報生命』(右)の棚の様子。
書店の禁じ手?!
「本の横置き」のモデルはエディットタウンにあり
本棚で目を引いたのが、一般的な書店ではなかなか見られない本の「横置き」。『仏教の源流』の関連本コーナーでは、『空の思想史』『維摩経』『老荘と仏教』などの文庫本が横置きされていました。
佐瀬店長:
角川武蔵野ミュージアムが大好きで、はじめてエディットタウンを訪れた時は、いつまでもこの本棚空間にいたいと思いました。そこで本を横置きにすることで本棚がより立体的になることを発見し、「松岡さんのフェアなら許されるだろう」と、書店ではやられていない横置きを取り入れてみました。
実際に置いてみると、(上の写真のように)高い棚などでは平積みよりも背表紙がよく見えます。全体としてもより動きのある棚になりました。つくっていてとても楽しかったですね。
『千夜千冊エディション20冊突破記念冊子』と2種類の字紋クリアファイル。クリアファイルは一部のエディションフェア店舗限定での取り扱いとなっています。
東京堂書店ならではのユニークな選本
東京堂書店ならではの特色もありました。その一つが書店の入り口の「週間ベスト(総合)」のランキング棚。東野圭吾などの人気作家をおさえ、雀士の顔をもつ小説家・色川武大の『オールドボーイ』が第一位にランクインしていました。
佐瀬店長:
色川さんは前の店長がずっと推していた作家の一人です。ランキングについては、お客様からも一般的な書店ではなかなか見られないタイトルが並んでいるという声を聞きます。
他の書店にはなかなかない並びは、1階レジ前の「”知”の泉」と名付けられた新刊コーナーでも見られました。「”知”の泉」のサインボードを360度取り囲むこの本棚は、「文芸」「芸術」「理工」「人文」「社会」という5名の担当者による選書で組み立てられています。
”憧れの本棚空間はボルヘスの『バベルの図書館』”
佐瀬店長は東京堂一筋28年のベテラン。2年前から神田神保町店の店長をなさっています。このエディションフェアにあたっては、選書から棚づくりまですべてお一人で担当されたそうです。
お気に入りのエディションを伺うと、『方法文学』ととも、ボルヘスの文学作品『伝奇集』を手に取られました。
佐瀬店長:
ボルヘスの短編集『伝奇集』の「バベルの図書館」が特におすすめです。そこに描かれているような本棚空間に憧れます。
佐瀬店長によると、本棚にはできるだけ多くのタイトルを並べ、本が一冊出るとたびに新しいタイトルを配置しているとのこと。そうすることで、本棚の表情が常に変化するように工夫されているのだとか。
圧巻のタイトル数と、来店のたびに新しい表情を見せる東京堂書店の本棚空間が体験できるのは10月上旬まで。
■Info
東京堂書店 神田神保町店
ウェブサイト: http://www.tokyodo-web.co.jp/floor/(外部リンク)
Twitter: https://twitter.com/books_tokyodo(外部リンク)
Back Number
【このエディションフェアがすごい!43】東京堂書店神田神保町店
【このエディションフェアがすごい!42】ジュンク堂書店 名古屋栄店
【このエディションフェアがすごい!41】MARUZEN&ジュンク堂書店梅田店(大阪市)②
【このエディションフェアがすごい!40】カモシカ書店(大分市)
【このエディションフェアがすごい!39】ジュンク堂書店岡島甲府店(山梨県甲府市)
【このエディションフェアがすごい!38】MARUZEN&ジュンク堂書店 札幌店
【このエディションフェアがすごい!37】知遊堂上越国府店(新潟県上越市)
【このエディションフェアがすごい!36】MARUZEN&ジュンク堂書店梅田店(大阪市)
【このエディションフェアがすごい!35】朗月堂書店(山梨県甲府市)
【このエディションフェアがすごい!34】ジュンク堂書店柏モディ店(千葉県柏市)
【このエディションフェアがすごい!番外編】ジュンク堂書店難波店(大阪市)
【このエディションフェアがすごい!32】柳正堂書店 オギノバリオ店、甲府昭和イトーヨーカドー店(山梨県)
【このエディションフェアがすごい!31】田村書店千里中央店(大阪府豊中市)
【このエディションフェアがすごい!30】紀伊國屋書店新宿本店
【このエディションフェアがすごい!29】ジュンク堂書店郡山店
【このエディションフェアがすごい!28】ジュンク堂書店三宮店(神戸市)②
【このエディションフェアがすごい!26】敷島書房(山梨県甲斐市)
【このエディションフェアがすごい!25】ジュンク堂書店大阪本店
【このエディションフェアがすごい!24】ch.books(長野市)
【このエディションフェアがすごい!22】ジュンク堂書店吉祥寺店(武蔵野市)
【このエディションフェアがすごい!19】丸善津田沼店(千葉県習志野市)
【このエディションフェアがすごい!18】ジュンク堂書店三宮店(神戸市)
【このエディションフェアがすごい!17】ジュンク堂書店大分店
【このエディションフェアがすごい!16】ジュンク堂書店難波店(大阪市)
【このエディションフェアがすごい!15】ジュンク堂書店三宮駅前店(神戸市)
【このエディションフェアがすごい!14】長崎次郎書店(熊本市)
【このエディションフェアがすごい!13】スワロー亭(長野県小布施町)
【このエディションフェアがすごい!10】ジュンク堂書店名古屋店
【このエディションフェアがすごい!09】ジュンク堂書店鹿児島店
【このエディションフェアがすごい!07】ブックセンタークエスト小倉本店
【このエディションフェアがすごい!05】りーぶる金海堂クロスモール店(宮崎市)
【このエディションフェアがすごい!03】ジュンク堂書店池袋本店
【このエディションフェアがすごい!02】ジュンク堂書店福岡店
上杉公志
編集的先達:パウル・ヒンデミット。前衛音楽の作編曲家で、感門のBGMも手がける。誠実が服をきたような人柄でMr.Honestyと呼ばれる。イシスを代表する細マッチョでトライアスロン出場を目指す。エディスト編集部メンバー。
ISIS 25周年師範代リレー [第48期 畑本ヒロノブ 深掘りをつづける編集工学の継続者]
2000年に産声をあげたネットの学校[イシス編集学校]は、2025年6月に25周年を迎えます。第52期の師範代までを、1期ずつ数珠つなぎにしながら、25年のクロニクルを紹介します。 ◇◇◇ 2021年の秋、 […]
【第84回感門之盟】「25周年番期同門祭」Day2 公開記事総覧
第84回感門之盟「25周年番期同門祭」の2日目(2024年9月15日)が終了した。これまでに公開された関連記事の総覧をお送りする。 【84感門】「松丸本舗」を再生させたブックショップエディター […]
25周年番期同門祭記念Tシャツ・期間限定発売中!【84感門】
25周年番期同門祭を記念したTシャツが期間限定で発売決定! 今回の感門之盟メインビジュアルの熊手が背面にあしらわれています。熊手には松岡校長ISIS co-missionが七福神のように並び、編集にちなんだ […]
【第84回感門之盟】「25周年番期同門祭」Day1 公開記事総覧
第84回感門之盟「25周年番期同門祭」の1日目(2024年9月14日)が終了した。これまでに公開された関連記事の総覧をお送りする。 【第84回感門之盟】居合わせることの大切さ 〜 吉村林頭OPメッセージ 文 […]
いよいよ祭が始まった。 2024年9月14日、イシス編集学校の感門之盟 Day1 の幕開けである。 校長松岡正剛が「この名前でいこう」と言った感門之盟のテーマは「25周年番期同門祭」。今回の番期同門祭は、2 […]