中二病という言葉があるが、この前後数年間は、”生きづらい”タイプの人にとっては、本格的な試練が始まる時期だ。同時に、自分の中に眠る固有のセンサーが、いっきに拡張し、世界がキラキラと輝きを放ちはじめる時節でもある。阿部共実『月曜日の友達』は、そんなかけがえのない瞬間をとらえた一編。
4月に入り、小学校から大学まで、数多くの入学式が開催された日本。一部の大学では世間の注目を浴びる対話型人工知能の使用を制限する報道があった。どんな制限があっても物事を前に進めるのは人間による編集だ。教師役の師範代と生徒役の学衆が対話を通じて編集の型を学ぶイシスはオンラインの学校。3年間のコロナ禍でも文字ベースの学びは継続されていた。そんなイシスの中での数少ないリアルイベントだった仲間たちと会話しながら方法を交し合う「汁講」も、オンラインのみでの開催となった。リアルで学びあうことは一度もなく、「直接会ってみたかった」という残念な想いもあった。
今回、47期の基本コース(2021年4月開講)と応用コース(2021年10月開講)の師範、師範代、学衆、約25名が世田谷区赤堤にある編集工学研究所に集結し、初めてのリアルな再会となる特別汁講「ふきよせ会」が行われたのだ。
開幕直後、案内役の律師・八田英子による編集工学研究所の本棚紹介ツアーがスタート。本棚は校長・松岡正剛のアタマの中そのもの。現住所に引っ越した直後、編集前の本棚を見た校長が不調に陥ったエピソードが語られる。初めて聞いた学衆は驚きを隠せない。アタマの中とリアルの本棚の配置や書物の構成を一致させることは編集的な読書に向かうためのヒントになる。
ふきよせ会への参加ルールの1つに蔵書1冊の持参があった。くじ引きを通じて参加者同士で持参した本の交換が行われる。元々の持ち主による本の紹介を聞きながら受け取ることで、手元の1冊が特別汁講を思いだすトリガーな1冊へと変容するのだ。くじ番号が偶然にも相互となる事例も。二人の絆が将来にわたって固く結ばれる予感がある。
汁講にはいくつかのルールがある。その一つが参加型の「ワークショップ」を盛り込むことだ。今回の「ふきよせ会」も例に漏れず、編集工学研究所1Fの本棚から自分にとって「関係のない」と思った本を1冊取り出すところからワークは始まった。「ないモノ」を見つける編集稽古は[守]の基本コースで既に学んでいる。つづいて4人一組となって集まった4冊を並べ、編集の型を使いながら、本同士の関係線を引き、独自の見方づけを行ってタイトル編集を行う。制限時間後の発表ではタイトルに至るまでのプロセスを全員でシェアする。マイクを持ったプレゼンターが突出した発見を説明する場面では、聞き手が特徴的な書物の表紙にも注意を向けることも。
会の後半では、47期に関わった数名がランダムで選ばれ、当時を振り返る「思い出編集」が行われた。担当師範代から見た学衆の様子や稽古へのカマエが重ね合わされる。「編集学校に入る前にあった無念が、師範代登板を終えた頃には成仏できた」と、感謝する声も。語らいが進むにつれて、さらに先の編集道を歩むためのエネルギーがチャージされていった。「ふきよせ会」の参加者がイシス編集学校の内と外で動きまわることを期待できるイベントとなった。彼らの活躍が再びレポートされる日が待ち遠しい。
畑本ヒロノブ
編集的先達:エドワード・ワディ・サイード。あらゆるイシスのイベントやブックフェアに出張先からも現れる次世代編集ロボ畑本。モンスターになりたい、博覧強記になりたいと公言して、自らの編集機械のメンテナンスに日々余念がない。電機業界から建設業界へ転身した土木系エンジニア。
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コメント
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