2026冬、ハイリド源氏倶楽部が生まれます!【多読アレゴリア★募集】

2025/12/12(金)16:40 img
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遊刊エディストをお楽しみのみなさま!

 

イシス編集学校師範、多読アレゴリア着物コンパ倶楽部部長の森山智子です。このたび、2026年冬の多読アレゴリアでもう一つ新たなクラブを立ち上げますので、お仲間を募集します!

 

その名は「ハイリド源氏倶楽部」。”HyperRead”を略してハイリド。

先入観を取り払い源氏物語の原文をハイパーに読むクラブです。

 

 

*シーケンス読みではなくハイパー読み

 

知っているようで知っているとは言いにくい「源氏物語」。なんども現代語訳本を読もうとしたけれど、最後まで読めたことがない「源氏物語」。

 

そうなんです。「源氏物語」の桐壺の「いづれのおんときにか・・・」からシーケンスに読みづつけるにはとても力(努力・忍耐・根性)が要るのです。こんなに芳醇な世界なのに。。涙。

 

そこで、シーケンス読みでない方法はないかと考え仮説したのが、構造的・ハイパー的に読む方法。であるなら、源氏物語をハイパーに読むクラブを立ち上げて、「ハイパー読みやりたい!面白そう!」と手を挙げてくれる人と一緒に、「源氏物語」に分け入れる!と考えた次第です。

 

 

*アーティキュレーションとコンパイル

 

だったら、だれかが現代語に訳した又聞きの「源氏物語」でなく、世の中の先入観を取り払いフィルター無しに感じたい。紫式部が書いた「原文」に分け入りたい。

 

どうやって分け入るの?

 

大丈夫!

分け入る「術」はイシス編集学校の守破離でちゃんと経験しています。

それは、アーティキュレーションとコンパイル。

 

学衆の回答に徹底アーティキュレーションで指南の糸口を引き出す守破師範代の経験。そして、禅問答のようなお題を息絶え絶えにくぐり抜けた離学衆徹底コンパイル

 

師範代の時も、離学衆の時も、必死に食い続けた果てに、突如ひらけた「見たことのない景色」を知っているからこそ、「源氏物語」の原文の奥に広がる未知の世界への確信があります。

 

 

*源氏物語の原文

 

紫式部が自ら書いた「原文」は、残念ながら現在には伝わっていません。ですが、後世の人々が「書き写した」本がいくつか残っています。

こちらは三条西実隆が書き写したものを原形のまま写真複製したもの。

 

宮内庁書陵部蔵

青表紙本 源氏物語 桐壺

平成6年4月1日再版19刷発行(新典社)

 

権大納言藤實隆の署名と花押

*藤實隆は三条西(藤原)実隆

 

源氏物語 桐壺の冒頭

 

 

ご覧のように、原文そのものは、くずし字で書かれています。さらに句読点がなく、清濁の表記もありませんので、私たちが読むためには「ここてはきものをぬいてくたさい」を、どこで区切るか、そして濁点は要るのか要らないのか、からはじめなくてはいけません。

 

ハイリド源氏倶楽部では、この句読点問題は先達の方々の研究の成果に便乗することにして、「源氏物語」の本として、岩波文庫の新しい(2017年に刷新された)『源氏物語』全九巻を使います。

 

『源氏物語』全九巻

岩波文庫

 

 

この新しい岩波文庫の『源氏物語』は、先述の「青表紙本」(*緑色の表紙なので「青」)よりも先の時代に写本された「大島本」とよばれるものを底本にしています。この大島本を含め、現在に伝わる「全ての源氏物語の写本」を突き合わせて本文の校異を示した池田亀鑑(1896-1956)は、30年の歳月をかけて『源氏物語大成』を完成(1956年)しました。

 

ハイリド源氏倶楽部では、この池田亀鑑の『源氏物語大成』(校異編、索引編、研究編、資料編、図録篇)の成果が集約されて、新しい岩波文庫の『源氏物語』全九巻に生まれ変わっていると見ています。

 

 

池田亀鑑の『古典学入門』(岩波文庫)に、このような一節があります。

 

『古典学入門』池田亀鑑

岩波文庫

 

前に述べたように、古典は多くの場合原本的性格を喪っている。ギリシャやローマのような第一義的な古典はもちろんのこと、全世界にわたって近代の典型となるような、古いある時代に成立した第二義的な古典でも、年代の経過変遷に伴って、外部的にも、従って内部的にも、原本性を喪っていることは認められなければならない。

『古典学入門』池田亀鑑

岩波文庫

 

 

*脇をかためる

 

原本性は喪われていることを前提にしつつ、後世に加え重ねられた「見方のきめつけ」からできるだけ自由でニュートラルな立ち位置に立ち、1000年前の当時に近づく工夫を重ねながら、一緒に『源氏物語』に分け入ってみませんか?

 

もちろん岩波文庫だけで分け入るのではありません。大いなる助っ人として次の2冊も使います。

 

『官職要解』和田英松

講談社学術文庫

 

官職を要解する『官職要解』。これは、平安時代の朝廷内の全組織と役職と位階を解説した本です。

 

「源氏物語」では登場人物の本名は全くでてきません。名前ではなく「あの人」とか「役職」でよばれます。一昔前の会社内で名前ではなく「部長」や「社長」と呼びかけていたことと同じですね。

ですので、光源氏の友人の頭中将がどんな仕事をしていたのか、この本を手に入れられましたら、ご覧になるとより彼に近づくことができると思います。

 

そして、なんといってもこれがなくては、古文は読めません。今では使われていない言葉、今とは違うニュアンスの言葉。それらを調べるためには必携です。だから辞書の収録語数はとても大事。

是非、電子のものではなく、実物の紙の本をお手元にご用意ください。

それも、「全訳」タイプではない「古語辞典」です。

 

旺文社『古語辞典』

43,500語収録

*左は高校生の時に買ったもの

 

 

授業・入試に役立つ『全訳 古語辞典』は、22,500語。

一方、全国の高校生を支え続ける入試に強い『古語辞典』は、43,500語。

この11,000語の差が実はとても大きいのです。

 

 

*HyperReadの起点

 

準備が着々と整ったところで、いよいよハイパーリード(HyperRead)の出発点になる本がこちら。

 

岩波文庫『源氏物語』九巻

 

 

この巻に「索引」がありますが、【作中人物索引】には、『源氏物語』の本文中に登場する人物のすべてについて、その事績と登場する巻とページが示されています。また、【作中和歌一覧】には本文中の和歌の全てが読み手の名前とともに示されています。

つまり、気になる人を追いかけたり、気になる歌からその場面に分け入ることができるようになっているんですね。

ですのでまずは、この索引の使い方を編集するところから始めます。

 

 

*京都行きます

 

「ハイリド源氏倶楽部」では、毎シーズンごとに源氏物語にまつわる京都の一日をご用意します。どうぞお楽しみに。

 

 *冬 大原野神社  2月22日(日)

 *春 葵祭     5月15日(金) 
 *夏 貴船     8月 2日(日) 
 *秋 三室戸寺  11月29日(日)

 

 

 


■ハイリド源氏倶楽部 <新入部員募集>

 

人伝でなく、又聞きでもない。自分の目で紫式部の書いた文章を読み、ときに書き写して、声に出したりしてみる。手すりなしに、ゆっくりと、しっかりと、古語辞典をたよりに、自分の「源氏物語」の読みに分け入り、感じるところを取り出してみませんか。

 

守破離の先のお楽しみの実験、やりたい気持ちこそがチャンスです!

 

 

【開講期間】2026年1月5日(月)~3月29日(日) ★12週間

【お申し込み】https://shop.eel.co.jp/products/tadoku_allegoria_2026winter
【申込締切】2025年12月22日(月)

【受講資格】千離衆かつ守破師範代経験者限定

【受講費】月額11,000円(税込) ※ クレジット払いのみ

【定員】10名

*冬、春、夏、秋のシーズンごとに一旦終了して、シーズンごとに新たに入部者を募ります。(何度でも連続での入部もOKです)

 

【必須本】開講までにご用意ください

 『源氏物語』全九巻(岩波文庫) 

 『新訂 官職要解』和田英松(講談社学術文庫)

 『古語辞典』40,000語以上収録のもの

*無地のノート(B5またはA5)と筆記具も合わせてご用意ください

 

 

 

丙午(ひのえうま)の2026年、

仔馬のようにぴょんぴょんしましょう。

 


(文:森山智子)

 

 

  • 森山智子

    編集的先達:和泉式部。SE時代にシステムと着物は似ていることに気づき開眼。迷彩柄の帯にブーツを合わせる、洋服生地を帯に仕立てる等、大胆な着こなしをはんなり決める。イシスにも森山ファンは数多い。
    2025年春から多読アレゴリアの「着物コンパ倶楽部」を主宰。