先生・先輩・親戚のおじさんetc…。誰にだって先達がいる。先達からの贈り物は、それがほんの一言や一冊であっても、その人の人生に一瞬にして新たな潮流を起こす。そのような体験をしたことがある方は少なくないのではないか。
イシス編集学校校長の松岡正剛も例外ではない。『松岡正剛の国語力』(東京書籍)によると、松岡校長の編集力の潮流を起こしたものは、例えば、小学四年生の吉見先生からの一言「明日から図書委員せいや」であり、中学校の藤原先生から贈られた一冊『チャタレイ夫人の恋人』であったという。
2024年3月17日、第83回感門之盟「エディット・タイド(EDIT TIDE)」の2日目のオープニングで、本棚劇場に立った八田英子律師と司会・新井和奈師範は、”編集工学の先達”である松岡校長からの「潮流を起こした贈り物」を紹介した。
八田律師はじめ、イシス編集学校を運営する学林局にとって、潮流となった一冊は、『情報の歴史』。世界のありとあらゆる出来事を1年ごとに5つのトラック(世界政治動向/経済・産業・金融/科学・技術/思想・社会・流行/芸術・文芸・文化)に分類して配置した、松岡校長のクロニクル編集の結晶である。
「編集(Edit)によって新たな潮流(Tide)をつくる」という思いから、「エディット・タイド」と題された今回の感門之盟では、このクロニクル・フォーマットにあやかり、イシス編集学校が誕生した2000年からの24年の歩みを「エディット・タイド・クロニクル」としてあらわした。
八田律師は「一般に、有事や事件が起こると、新しい動きを抑えて保守にまわりがちになる。そうではなく、事件が起きたときこそ大きな企画を作り、次々と新しいチャレンジをしていく。これが松岡校長とイシスの潮流だ」という。
「2024年のこの先は、みなさんが新しいクロニクルをつくる番です。今日の感門之盟を、新しいイベント・ロールをつくる潮流にしていきましょう」(八田律師)
本楼に飾られた高さ約2メートルの「エディット・タイド・クロニクル」。レイアウトは、デザイナーの穂積晴明方源が一手に引き受けた。
一番右側のオレンジのトラックは、東日本大震災やロシアによるウクライナ侵攻のような、当たり前が大きく揺さぶられた出来事を捉えている。新型コロナ・パンデミックで世界が停滞を余儀なくされる中、松岡校長やイシスは、「千夜千夜の秘密」出演(青トラック)、「角川武蔵野ミュージアム」「近江ARSプロジェクト」(黄トラック)、「情報の歴史21」出版(緑トラック)など、次々に新しい潮流を起こしていった。
感門Day2の司会・新井師範は、校長自筆から贈られた「玄々書」を紹介した。「玄々書」とは、初めて師範ロールを全うした方に贈られる書である。松岡校長が新井師範へ贈った漢字は「苺」。ただし、母の中の点が2つではなく3つの苺だった。
松岡校長が新井師範へ贈った「苺」の書。「校長が私が3児の母ということを覚えてくださっていて。書を見た時は嬉しくて思わず『わーっ』と声をあげてしました」(新井師範)
校長から師範代へ贈られる「教室名」も、これまでに多くの師範代に「エディット・タイド」を起こしてきた。新井師範がこれまで贈られた教室名は、「アイドル・ママ教室」「アイドルそのママ教室」「決戦アイドル教室」どれも「アイドル」がついていた。
新井師範は、「アイドル」とついた教室名を聞いた当時を「最初は恥ずかしいと思いました」と振り返りつつ、「でも校長は、アイドルでありたいという私の願望を言葉にしてくださった」と顔を思わずほころばた。教室名は、師範代の可能性を展く、校長による格別のネーミング編集術の実践でもある。
感門之盟のスタートに際し、新井師範は「感門之盟は、たくさんの潮流が起こる場。豊かな海流に育まれた大漁の魚をみんなで料理して寿ぎながら、たくさんのウェーブを起こしていきましょう」と、1日の船出を宣言した。
感門テーマ「エディット・タイド」の「タイド」は、潮流(Tide)だけでなく「態度」の意味も込められている。校長からいただいた「苺」にあやかりたいと苺模様の衣装を調べ尽くした結果、原宿のゴスロリショップのこの一着にたどりついたという。
「エディット・態度」は足元にこそあらわれる。上着と一対となる厚底ブーツ。「これが最後の一足だったんです!」(新井師範)
アイドル・ママへ我が子のような眼差しを向ける松岡校長
上杉公志
編集的先達:パウル・ヒンデミット。前衛音楽の作編曲家で、感門のBGMも手がける。誠実が服をきたような人柄でMr.Honestyと呼ばれる。イシスを代表する細マッチョでトライアスロン出場を目指す。エディスト編集部メンバー。
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