飲む葡萄が色づきはじめた。神楽鈴のようにシャンシャンと音を立てるように賑やかなメルロー種の一群。収穫後は樽やタンクの中でプツプツと響く静かな発酵の合唱。やがてグラスにトクトクと注がれる日を待つ。音に誘われ、想像は無限、余韻を味わう。

偶然を必然にする。これが編集の基本である。
情報を動的にする。これが編集の骨法である。
イシス編集学校の数ある講座の中でも、この2つが実感でき、方法として体得できるのは「物語講座」しかない。昨年からプログラムが大きく改編され、さらにハイパー・プログラムになった。講座開講に先立って9月4日に開催された師脚座は、守破でいえば伝習座。師範代、師範による学びの場である。師範によるプログラムレクチャーと物語講座で手渡したい編集の核が確認された。その核は以下の3ポイント。受講を迷っている方はぜひ参考にされたい。
1.「トリガークエスト」で偶然を必然に
「トリガークエスト」という言葉から何を連想するだろう。クエストをトリガーにするという名の通り、次々にクエストが降ってくる。そのクエストをクリアすると、師範から一人ひとりに違うクエストが届けられる。そう、クエストをクリアしながら物語を仕上げていく道筋がそれぞれで違うのだ。自分が書きたいと考えていた物語が、偶然のクエストによって突き崩される。否応なく偶然を必然に物語を編集せざるを得なくなる。この流れに身を任せることで、編集的自由を体感する醍醐味を感じられるはずだ。
2.「窯変三譚」に方法の手すり
内容に没頭すると方法を忘れる。[守]で学んだ型はどこにいったのか。わかっているがうまく使えない。そこで物語編集し、磨き上げていく上で抑えておきたい方法の手すりが最初のプログラム「窯変三譚」で用意されている。「窯変三譚」とは、新聞記事を素材に素になる物語を用意し、それを落語・ミステリー・幼なごころに1週間に1編ずつ書き分けるというものだ。方法意識に覚醒しながら、ジェットコースターのような編集加速が体験できる。
3.「文叢の物語」「編伝1910」で読んで書く
物語講座は物語を書くだけの講座ではない。物語を「読む力」も高めることができる。最後のプログラム「編伝1910」では、『情報の歴史21』の1910年前後20年の歴史を読み解き、さらにピックアップしたテーマや人物を読み込む。その「読み」の用意が「書く」ためのプランニング編集の与件になっていくわけだ。赤羽卓美綴師が仕立てた「1910人物マップ」も参考資料として提供される。
「読み」は講座の前から用意されている。物語講座では教室が文叢となる。それぞれに文叢名がある。その文叢名は、二つの物語の一種合成で松岡正剛校長がネーミングしたものだ。この文叢名にちなんだお題も待ち構えている。
ではここで、師脚座で明かされた文叢名を、今回の指導陣とともにエディスト読者に先行紹介しよう。
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芳一ドン・キホーテ文叢
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◆ヤドカリ軍団のエース:網口渓太 師範代
& 永遠の初心少女 福澤美穂子 師範
『耳なし芳一』小泉八雲/光文社古典新訳文庫『怪談』
『ドン・キホーテ』ミゲル・デ・セルバンテス/岩波少年文庫
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天守よだか文叢
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◆編伝賞受賞のチャーミングレディ 後藤泉 師範代
& 戻ってきた児童文学の編集リーダー 大原慈省 師範
『天守物語』泉鏡花/岩波文庫『夜叉ケ池・天守物語』
『よだかの星』宮沢賢治/岩崎書店『宮沢賢治のおはなし(8)よだかの星』ほか
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はてしない裏庭文叢
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◆多読マラソンのパワフルマザー 小林奈緒 師範代
& ブランディング伝説と編集剛腕 裏谷恵子 師範
『はてしない物語』ミヒャエル・エンデ/岩波書店または岩波少年文庫(上下)
『裏庭』梨木果歩/新潮文庫
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ナウシカ黒蜥蜴文叢
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◆速修から物語へスピードクイーン 三津田恵子 師範代
& ベテラン辣腕編集職人 小路千広 師範
『風の谷のナウシカ』宮崎駿/徳間書店『風の谷のナウシカ 』全7巻
『黒蜥蜴』江戸川乱歩/春陽堂書店・江戸川乱歩文庫
これらの多種多彩かつフレッシュな指導陣を束ねるのが、物語講座立ち上げからのリーダー・赤羽卓美綴師と講座を束ねる3期目の小濱有紀子創師、そして松岡正剛校長と半世紀を共にする木村久美子月匠だ。
物語講座は4ヶ月で5編の物語を書き上げる。世界知、方法知を総動員し、情報が自ずから動き出す物語構造を仮設するプロセスだ。世界読書奥義伝[離]や師範代、師範を経験した人こそ受講されたい。もちろん編集腕自慢をしたい者も大歓迎だ。あの江戸文化研究家の田中優子氏も再受講を心待ちにしているらしい。
まもなく開講の物語講座15綴、お尻がむずむず、体がうずうずしてきたら、いますぐ受講申し込みをどうぞ。
Info
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[遊]技法研鑽コース 「物語講座」第15綴
https://es.isis.ne.jp/course/yu-narrative
■期間 :2022年10月10日(月)~2023年2月5日(日)
ライブ稽古「蒐譚場」12月4日(日)
編集工学研究所(本楼)
■資格 :[破]応用コース修了者(突破)以上
■プログラム:窯変三譚/トリガー・クエスト/編伝1910
■お申込み :https://shop.eel.co.jp/products/detail/422
※再受講割引あり。
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吉村堅樹
僧侶で神父。塾講師でスナックホスト。ガードマンで映画助監督。介護ヘルパーでゲームデバッガー。節操ない転職の果て辿り着いた編集学校。揺らぐことないイシス愛が買われて、2012年から林頭に。
【知の編集工学義疏】第2章 <脳という編集装置>を加速させる
松岡正剛が旅立って一年。 今こそ、松岡正剛を反復し、再生する。 それは松岡正剛を再編集することにほかならない。これまでの著作に、新たな補助線を引き、独自の仮説を立てる。 名づけて『知の編集工学義疏』。義とは意見を […]
千夜千冊エディション『少年の憂鬱』に松岡正剛の編集の本来を読み解くべし。花伝所の放伝生が取り組んだ図解を使って、20分の予定時間を大幅にオーバーして、永遠の少年二人がインタラクティブに、そして「生」でオツ千します。 発熱をおしてやってきた小僧・穂積は大丈夫か? 坊主・吉村の脱線少年エピソードは放送可能か? エディション『少年の憂鬱』をお手元に置いてご鑑賞ください。
【知の編集工学義疏】第1章 <編集の入口>をダイジェストする
松岡正剛を反復し、再生する。聖徳太子の「三経義疏」に肖り、第一弾は編集工学のベーステキストでもある『知の編集工学』を義疏する。連載の一回目は、第一部である「編集の入口」をテーマに「第一章 ゲームの愉しみ」を読み解き、「編集」のいろはを伝える。2022年講義のダイジェスト映像とともにご覧ください。
イシス編集学校の師範、師範代にしか公開されていなかった「伝習座」。その講義の中から、[守]の編集術の最後にあたる「情報の表現」について、吉村堅樹林頭が50分にわたって解説した動画をYouTubeイシスチャンネル限定で蔵 […]
吉村堅樹による用法3解説「Analogical way is Dynamic way」
イシス編集学校の師範、師範代にしか公開されていなかった「伝習座」。その講義の中から、編集術の骨法にあたる「情報の構造化」について、吉村堅樹林頭が50分にわたって解説した動画をYouTubeイシスチャンネル限定で蔵出し公 […]
コメント
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2025-08-16
飲む葡萄が色づきはじめた。神楽鈴のようにシャンシャンと音を立てるように賑やかなメルロー種の一群。収穫後は樽やタンクの中でプツプツと響く静かな発酵の合唱。やがてグラスにトクトクと注がれる日を待つ。音に誘われ、想像は無限、余韻を味わう。
2025-08-14
戦争を語るのはたしかにムズイ。LEGEND50の作家では、水木しげる、松本零士、かわぐちかいじ、安彦良和などが戦争をガッツリ語った作品を描いていた。
しかしマンガならではのやり方で、意外な角度から戦争を語った作品がある。
いしいひさいち『鏡の国の戦争』
戦争マンガの最極北にして最高峰。しかもそれがギャグマンガなのである。いしいひさいち恐るべし。
2025-08-12
超大型巨人に変態したり、背中に千夜をしょってみたり、菩薩になってアルカイックスマイルを決めてみたり。
たくさんのあなたが一千万の涼風になって吹きわたる。お釈迦さまやプラトンや、世阿弥たちと肩組みながら。