「MEdit賞」発表! お医者さんに読ませたい三冊【MEditLab×多読ジム】

2023/05/01(月)08:00
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 多読ジムSeason13の多読コラボ《MEditLa×多読ジム》の「MEdit賞」を発表いたします。

 ↓詳しい企画概要は下記の記事をご覧ください

https://edist.isis.ne.jp/guest/tadoku_meditlab/

 今回のアワード講評者はMEditLab順天堂大学STEAM教育研究会の代表であり、イシス編集学校で唯一無二のロール名「析匠」をになう小倉加奈子析匠です。「析」の「匠」だけに講評者にはぴったりですね。今回は講評ならぬ「析評」をお届けします。

 エントリーメンバーは、前回《春秋社×多読ジム》の覇者・佐藤裕子、そしてコラボ初挑戦となる中谷千恵、畑勝之、北條玲子、さらに中原洋子、福澤美穂子、畑本ヒロノブ、松井路代ら多読ジムの冊師陣に加え、我らが冊匠・大音美弥子の全9名。激戦を制し、 MEdit賞を手にするのは誰か…?

 

◆析評◆

全球凍結時代から男達への手紙(畑本ヒロノブ)

 

 3冊目の『セックスロボットと人造肉』がインパクト絶大で、SF的で壮大な三冊セットだなぁというのが第一印象でした。「医者に読ませたい本」というお題からすると、個人の心情に寄り添うヒューマン・ドラマ的な本が選ばれやすいと思うので、畑本さんの好みが際立つエッジの効いた選書だったと思います。
 ただ、3冊ともにスケールの大きいテーマを扱っていることもあって、600字程度のリコメンド文では相当に文章を彫琢しないと、それぞれどんな本なのか、その特色を説明するのが難しいなという印象を持ちました。3つの本に共通するキーワードを決めて文章の構成を組み立てていくと本同士の関係性とともにそれぞれの本の内容が際立つように思いました。

https://edist.isis.ne.jp/cast/meditlab_tadoku_4/

 

◆析評◆

雑談が痛みをとり、命をつなぐ(松井路代)

 

 “編集かあさん”らしい3冊で、お名前を伏せても、これは松井さんの作品だなと当てる自信があります。3冊それぞれに登場する人物たちの声として「不便ではあるけれど不幸ではない」という言葉を引っ張ってきた、あるいはそのように言い替えた、編集かあさんらしい光の当て方、まとめ方がとても素敵です。編集は不足から生まれるということを改めて教えてくれる3冊ですし、不足を引き受けることこそ、ケアの本来であることを医療従事者はこのリコメンド文から知るべきだと思いました。

 ちなみに、『急に具合が悪くなる』は、松井さんの多読ジムでの読書プロセスを拝見する中で、即、購入して読みました。特にこの1冊は、もっと広く読まれるべき本だと思っています。

https://edist.isis.ne.jp/cast/meditlab_tadoku_1/

 

◆析評◆

西行と賢治の方法で医学を読む(佐藤裕子)

 

 1冊に拙著を選んでいただき、著者冥利につきました。読者の手に渡った自分の文章の感触を知る貴重な機会でした。たぶん、私の本に合わせた本の世界観が偉大すぎることもあって(なんといっても宮沢賢治と西行ですから…)、3冊を貫く見立ての軸がだんだんと揺らいでしまったのが残念でした。

 社会のシステムで人体の構造や仕組みを説明するという私の見立てでは、他の2冊を支えきれていないようにも思いますので、私の本をいったん外して、他の何か、思想的な方向で生命を繙く1冊をプラス1してみることを試していただけると良いかなと思いました。

https://edist.isis.ne.jp/cast/meditlab_tadoku_1-2/

 

 

◆析評◆

直感を信じて、味わう(中谷千恵)

 

 まさに医食同源の3冊。通常の三冊筋プレスのテーマ「食べる3冊」ともつながりのある選書で、多読ジムの常連らしい美しい三冊筋を魅せてくださったように思いました。
 食べることは生きること。栄養学は今、医療の現場でも改めて見直されている重要テーマのひとつです。飽食の時代だとはいえ、土壌汚染や森林破壊などの環境破壊によって地球人100億人はいつ全員飢餓の状態になるかわかりません。スコープを広くしていくとSDGsにもつながる選書だと思います。まだまだリコメンド文は、虫の目鳥の目でいかように変わる余地のあるものだと思いました。少々論旨のハコビが強引すぎる部分がありましたので、丹念にキーワードを拾ってつなげていくとより美味になりそうです。

https://edist.isis.ne.jp/cast/meditlab_tadoku_3/

 

 

◆析評◆

欲張りなドクトルになるには(大音美弥子)

 

 医師の言葉のチカラに注意のカーソルをぐっと寄せた大音さんらしい選書です。「表現力」というキーワードで医療現場から、パンセまで一気につなぎ、大音冊匠だからこそのダイナミックかつ欲張りな三冊筋です。寺田寅彦の物理学と俳句との組み合わせの相似形を大音さん自身が試みた意欲作であるとも思います。
 一応、今回の課題は、MEdit Labに掲載する可能性もあるということで読者の想定が高校生なのですが、大音さんのリコメンド文は、高校生に容赦ない、全く媚びない硬質な文体で、そこがまたカッコいいと思いました。

https://edist.isis.ne.jp/cast/meditlab_tadoku_9/

 

◆析評◆

遺伝子からのメッセージ(中原洋子)

 

 3冊のバランスがよく練られたリコメンド文ですよね。さすが多読エディスト常連のコラムニストだと思いました。『ライオンのおやつ』の主人公、雫を起点に放射状に広がる2冊。自分を癒す力と他者の役に立ちたい衝動。二点分岐で、主人公、雫のキャラクターを読み解き、それが同時に2冊の紹介になっているという。

 う~ん、読めば読むほど、三冊筋プレスのお手本となるかのよう。そして、高校生にとっても等身大の主人公と自分の姿を重ね合わせて共感できる選書になっていると思います。

https://edist.isis.ne.jp/cast/meditlab_tadoku_5/

 

析評

病の相互編集(北條玲子)

 

 サイエンス好きの高校生や医師たちからはすでに遠いテーマとなっている、差別や忌避の対象となったハンセン病。そのテーマに絞り込んだ選書からして、北條さんの真摯な眼差しが感じられます。明石海人の句でリコメンド文を挟み込み、構成もよく練られています。コロナ禍を経験した我々としては、再度取り組むべき重要なテーマであるとも感じました。
 惜しいのは、特に最後の「医師と患者の相互編集」とは、具体的にどんな試みであるのかをもう少し具体的に書いていただきたかったなというところ。北條さんの現代社会における問題意識と共に提示されると、よりハンセン病を学び直すことの大切さがメッセージとして伝わるかなと思いました。
 ですが、「お医者さんに読ませたい3冊」として本当に今、読むべき本を選んでいただいたと思いました。感染症と差別の歴史は、これまでに何度も繰り返され、コロナ禍においてその教訓は十分に生かされていなかったように思います。医学部では、ハンセン病については疾患そのものの学習もごくわずかな時間しか割かれておりませんし、その歴史的背景を知っている医学生や若い医師がほとんどいなくなっているのは大きな問題だと思っております。私の大学のキャンパスにこの3冊セットをあちこち飾りたいと思うくらいでした!
 というわけで、MEdit賞は北條玲子さんを選ばせていただきます! 北條さんには、「拙著2冊、MEdit Labの出来立てほやほやのパンフレット、きらきらポスターそして缶バッジ3種」を贈呈いたしまーす。

https://edist.isis.ne.jp/cast/meditlab_tadoku_7/

 

◆析評◆

ぼくらはみんな寄り添っている(畑勝之)

 

 すべてマンガでそろえた意外な3冊セットで、読書に苦手意識を持つ読者も手に取りやすい3冊だと思いました。『スラムダンク』につぐ車椅子バスケ漫画『リアル』が入っているのもきっと心惹かれた中高生が多かったのではないでしょうか。残念なのは、3冊の束ねがもう一歩という感じなところです。

 それぞれの本の特色はしっかり説明されているだけに、この3冊がどういう関係性でつながっているのか。「医療」や「バイオ」っぽい3冊、という感じだと少しゆるすぎるように思います。もう少し3冊に共通する具体的なキーワードを設定し、そのキーワードで3冊を結んでいくとこの3冊セットで読む面白さがもっと読者に伝わるかなと思いました。

https://edist.isis.ne.jp/cast/meditlab_tadoku_6/

 

◆析評◆

見えない世界を知るために( 福澤美穂子)

 

 ジャンルもモードもかなり異なる3冊を選んだのはとても面白く、「お医者さん」あるいは「将来お医者さんになるひとに読ませたい3冊」ということで、この3冊を選ばれるんだ!と驚きました。
 『エンド・オブ・ライフ』も選んでくださったのはうれしい。しかし、600字はかなり短すぎたせいか、3冊目の『三体』の紹介があまりにも短くなってしまったのが残念です。今回、600字で3冊の本のリコメンド文を書くというのは、みなさんかなり苦労されたと思うのですが、1冊1冊の読みどころをぎゅっとつかむ凝縮した1文をそれぞれ作れたかどうか。そしてその3冊を束ねるキーワードを設定できたかどうかということが大きいのかなぁと思います。

https://edist.isis.ne.jp/cast/meditlab_tadoku_8/

 ということで、MEdit賞の受賞者は、多読コラボ初挑戦にして初受賞、JUSTライターとしても大活躍中の北條玲子さんでした。北條さん、おめでとうございます! 賞品のMEdit缶バッチやパンフレット、析匠のサイン本を贈呈いたします。
 受賞者の北條さんの作品は全文がMEditLabウェブサイトに掲載されます。他のみなさんの作品も全文または一部抜粋してお名前ととも紹介してもらう予定です。楽しみにお待ちください。

 

 そして次の多読コラボは、齋藤なずな『夕暮れへ』(青林工藝舎)!

https://edist.isis.ne.jp/just/tadoku_seirinkogeisha/

 

DESIGN the eye-catching image:山内貴暉


Info


◉多読コラボ アワード受賞者一覧◉

 

⊕第一回 太田出版⊕
∈トレーニングブック:阿部洋一『それはただの先輩のチンコ』
∈それチン賞:石黒好美「それはただの日本のチンコ」
∈講評者:阿部洋一

∈受賞発表記事:

https://edist.isis.ne.jp/dust/sorechin_interview01/

 

⊕第二回 工作舎⊕
∈トレーニングブック:桃山鈴子『わたしはイモムシ』
           福井栄一『蟲虫双紙』
メーテルリンク『ガラス蜘蛛』
∈田辺澄江賞(二重三冊筋賞):佐藤健太郎「ムシとヒトを繋ぐ神のイト」
∈講評者:田辺澄江
∈賞品:『遊1001号 相似律』
∈副賞:直角三冊筋賞:畑本ヒロノブ
    正三冊筋:小路千広
    二等辺三冊筋賞:大沼友紀
∈受賞発表記事:

https://edist.isis.ne.jp/guest/tadoku_sumietanabe_interview/

 

⊕第三回 春秋社⊕
∈トレーニングブック:山本ひろ子『摩多羅神』
           マーク・エヴァン・ボンズ『ベートーヴェン症候群』
           恩田侑布子『渾沌の恋人』
∈摩多羅神賞:佐藤裕子「ありうらやコスモロジー」
∈賞品:『金と香辛料』
∈講評者:山本ひろ子、堀朋平
∈受賞発表記事:

https://edist.isis.ne.jp/guest/tadoku_shunjusha_award/

 

⊕第四回 MEditLab⊕
∈トレーニングブック:ブックリスト「MEditチャレンジ30」 ※リストから一冊を選択
∈トレーニングテーマ:お医者さんに読ませたい三冊
∈MEdit賞:北條玲子「病の相互編集」
∈賞品:MEditLabオリジナル缶バッジ3種 & 小倉加奈子サイン本二冊(『おしゃべりながんの図鑑 病理学から見たわかりやすいがんの話』『おしゃべり病理医のカラダと病気の図鑑 人体サプライチェーンの仕組み』)
∈受賞発表記事:

https://edist.isis.ne.jp/just/tadoku-medit/


◎第五回 青林工藝舎⊕
∈トレーニングブック:齋藤なずな『夕暮れへ』
∈夕暮れ賞: ?
∈賞品:青林工藝舎刊行漫画誌『アックス』オリジナルグッズ
∈受賞発表記事:

  • 金 宗 代 QUIM JONG DAE

    編集的先達:水木しげる
    最年少《典離》以来、幻のNARASIA3、近大DONDEN、多読ジム、KADOKAWAエディットタウンと数々のプロジェクトを牽引。先鋭的な編集センスをもつエディスト副編集長。
    photo: yukari goto

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