『絵師ムネチカ』から目が離せない。天才は往々にして何かが欠けている。そしてそのこと自体がまた天才の天才性を引き立たせる。周囲の人々の鼻面を引き回し、人生を変えていく「天才少年」のデモーニッシュな魅力を容赦なく描いた怪作。
これまでにも「神童」もの(?)を数多く描いてきたさそうあきら先生だが、ご本人は極めて方法に自覚的な職人タイプ。長年、マンガ学科の教員として教鞭をとり、『マンガ脚本概論』などの技法書にも定評がある。
夜の書斎に灯りがともり、グラスのなかでゆっくりとワインが揺れる。一字の奥には、まるで宇宙のように広がる世界がある。 本を開くとき、人はただページをめくるだけではありません。そこに刻まれた言葉や文字の奥に、遠い時代の思想や世界観が静かに立ち上がってくる――。
そんな“本の深層”に分け入る時間が、田中優子による読書のひととき「酒上夕書斎」です。このシリーズでは前回から、編集工学の提唱者である松岡正剛の著作を手がかりに、日本の知の系譜をたどっています。
今回取り上げる松岡正剛の一冊は『白川静 漢字の世界観』。
そこに登場するのは、漢字研究の巨人白川静です。白川静は、漢字を単なる文字の体系としてではなく、古代人の祈り、祭祀、政治、そして死生観までを刻み込んだ“文明の記録”として読み解きました。
骨に刻まれた甲骨文字。青銅器に鋳込まれた金文。その字形の奥には、神に祈る儀式や、国家の始まりをめぐる記憶が潜んでいる。白川静は、漢字のかたちから古代の世界観そのものを復元しようとしたのです。
松岡正剛は、白川静を東洋の神髄を文字から解明した人として千夜千冊987夜に記しています。一字のなかに、祭祀があり、神話があり、文明がある。漢字とは、数千年にわたる人類の経験が折り重なった“編集物”である。
では、その壮大な漢字世界を、江戸文化研究の第一人者である田中優子はどのように読み解くのでしょうか。江戸の言葉遊び、戯作、浮世絵、洒落本。日本文化が育ててきた文字の感覚と遊びを知り尽くした田中優子が白川静の漢字宇宙に向き合うとき、どんな視界がひらくのか。
「酒上夕書斎」――グラスを傾けながら、一冊の本から広がる知の宇宙を旅する夜。今回は、漢字という文明の深層に分け入る一冊をめぐって、静かで刺激的な読書の時間が始まります。
◆ 酒上夕書斎 第九夕
日 程:2026年3月31日(火)
時 間:16:30~(生配信)
出 演:田中優子(イシス編集学校 学長/法政大学 前総長/江戸文化研究者)
会 場:ゴートクジ イシス館 応接室より生中継
配 信:YouTube LIVE にて無料配信
URL:https://youtube.com/live/eqoXb7J0R7U
衣笠純子
編集的先達:モーリス・ラヴェル。劇団四季元団員で何を歌ってもミュージカルになる特技の持ち主。折れない編集メンタルと無尽蔵の編集体力、編集工学への使命感の三位一体を備える。オリエンタルな魅力で、なぜかイタリア人に愛される、らしい。
夕映えの書斎、決意の一冊|YouTube LIVE 酒上夕書斎 第九夕(2月24日16:30)
午後四時半。一日の輪郭がほどけはじめる、その境目の時刻。昼と夜のあわいに、思考の灯がともります。 田中優子学長は、ある決意を胸に、この書斎に腰を下ろします。 ――校長、松岡正剛の本をもっと読ま […]
「きもの」は語る。2026年初回・酒上夕書斎、田中優子、装いと思考のあいだへ
正月の空気が、すべて消えてしまったわけではない。街はすでに日常へ戻り、暦も動き出しているけれど、どこかにまだ、年のはじまりの余白が残っている。酒上夕書斎は、その余白に、そっと灯をともしたいと思った。 2026年最初の […]
最後の音が灯る夜へ――「玄月音夜會」第七夜、松岡正剛誕生日特別企画(2026年1月28日)
生涯を「編集」という名の呼吸で生き抜いた松岡正剛。 その数寄の喜びを惜しみなく分かち合い、音と言葉の交差点に無数の火花を散らし、2025年6月より開催してきた「玄月音夜會」が、ついに最終回を迎えます。 いつもどこか風 […]
12月23日16:30|酒上夕書斎 書斎のグラス越しにひらく民主主義
グラスをくるりと回し、一口、味わってから、本をひらく。 「酒上夕書斎」年内最後のYouTube LIVEは、関良基氏、橋本真吾氏との最新共著『江戸から見直す民主主義』。 民主主義という言葉が、 […]
冬の声、記憶の歌がひらく夜 ――『玄月音夜會』第六夜・小室等×六文銭
松岡正剛が遺した詞と旋律は、いまもどこかで静かに呼吸し、ふとした風のように聴く者の内側に触れてゆく。 その息遣いを受けとめ深い情感として立ち上げてきたのが、小室等さんである。 小室さんの歌には、いつも「何を感じているか」 […]
コメント
1~3件/3件
2026-03-19
『絵師ムネチカ』から目が離せない。天才は往々にして何かが欠けている。そしてそのこと自体がまた天才の天才性を引き立たせる。周囲の人々の鼻面を引き回し、人生を変えていく「天才少年」のデモーニッシュな魅力を容赦なく描いた怪作。
これまでにも「神童」もの(?)を数多く描いてきたさそうあきら先生だが、ご本人は極めて方法に自覚的な職人タイプ。長年、マンガ学科の教員として教鞭をとり、『マンガ脚本概論』などの技法書にも定評がある。
2026-03-17
目玉入道、参上。
体を膨らませ、偽りの目玉(眼状紋)を誇張して懸命に身を守ろうとしているのは、カイコの原種とされるクワコの幼虫。クワコの繭から取れるシルクは、小石丸のそれに似て細く、肌触りがよいらしい。
2026-03-10
平和に飛び交うモンシロチョウも、地球史スケールでは、ほんの少し前に日本にやって来たばかりのパイオニアらしい。押さえきれない衝動に駆り立てられて彼方に旅立つ人たちの原型は、海をわたる蝶なのかもしれない。