プラン7:迷うことはクリエイティブだ【45[破] ハイパープランINFORM】

2021/03/04(木)11:00
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 いきなり始まった45[破]「ハイパープランINFORM」プランニング編集術アワード予選。第75回感門之盟 INFORM共読区「P1グランプリ」本戦出場をめざし、師範が援軍となって応援編集を繰り広げる。あなたの琴線に響くのはどのプランだろうか?

 

 

■非効率を棄する世知辛い世の中

 

 検索窓に言葉を入れると一発で探しものが出てくる。飲食店を探すとき、人気ランキング上位を選べばハズレに合わずにすむと思ってしまう。ネットショップからの引きもきらないオススメをうっかりポチる。ああ、ついつい「効率」に甘んじてしまう。何か“忘れもの”をした気分になりながら。「そうやってターゲットに一直線でたどり着くことになれてていいの?」 声を上げたのはアツコチカこと藤島さんだ。

 迷うことは無駄ではない(いや、無駄そのものだって悪いものじゃない)。条件を足がかりに推論し、経験に照らして選択肢を絞る。そのプロセスでイマジネーションがくすぐられ、創造的な思考につながるはずだ。子どもたちから「迷う機会」を奪ってはいけない。そこで立案されたのが仮想ミュージアム「迷宮プラネット」だ。物心ついたときからスマホがある世代の探究心を育て、教育現場への波及と定着を狙う。

 

 

■思考の空漠に放浪し、遊楽する

 

 このミュージアムには、表と裏ともいうべき両面の魅力がある。迷宮を彷徨うゲームとしての側面は表の魅力だ。門をくぐって迷宮に足を踏み出すと、そこへ竹が勢いよく生え出してあっという間に壁ができる。壁は常に呼吸するように躍動し、どんどん生長していく。まさにplant(植物)がnet(ネットワーク)を編んでいくのだ。ちなみに「プラネット」の語源はギリシア語の「放浪するもの」。プランの起点となった三冊のうち一冊『寅さんとイエス』がネーミングに紛れ込んでいて驚いた。

 

 斉藤師範代と級友たちで膨めた、ゲームのルル三条はこうである。

 

  • 【ツール】
  • 進路を誘う言葉の群れ「いざ、いざ」考えさせる文献「こと、こと」

  • 【ロール】
  • イザナウちゃん(いざー!いざー!とけしかける)
    ヒラメキちゃん(みよー、みよー!と文献でヘルプする)
  • ココホレちゃん(あちこちで吠えて迷わす犬)

  • 【ルール】
  • 壁に浮かび上がる文字や文献を読み、鍵言葉「しる、しる」を入力すると、竹がさわさわ開いて道が開く。これを繰り返す。

 

 そうして、ぐるぐるぐるぐる進むのだが、出口を目指しているわけではなく、迷うことそのものを遊ぶのだ。

 

 

■思考のラビリンスを可視化する

 

 裏の魅力は、自分が迷い歩いた複雑な足跡でつくる3つのモードのラビリンス、思考図像だ。モードを選ぶと画面があらわれる。

 

【アーカイブモード】
キーワードがデータとしてまとめられツリー化している。自分で新たな繋がりを俯瞰したり編集したりもできる。

 

【迷宮モード】
自分の足跡が迷宮として視覚化。初めはクノッソスの迷宮くらいの複雑さで、進むほどに複雑化する。複雑な迷宮を俯瞰していくと、自分の姿が立ち上がる(写真を集めて作るモザイク画像のように)。

 

【アートモード(仮)】
迷宮ではない音楽や絵画に造形される。例えば、深く緻密に思考が繰り広げられた場合は伊藤若冲のような絵画に、いろんな言葉を連想しながら行ったり来たりしつつすればフンデルトヴァッサーのような絵画に、新たな見方を発見しつつ突き進めばストラヴィンスキーの音楽のような感じに、といった具合に。

 

 つまり、ゲームの裏で、知らず知らずに「迷宮なるもの」づくりが進む。美はシンプル イズ ベストとはかぎらない。この込みいったクリエイティビティは、自分と世界の文脈であり、人間の脳の写し絵なのだ。

 

ストラヴィンスキー

フンデルトヴァッサー

伊藤若冲

 

 

■迷うと見つかる“忘れ物”

 

 本屋の通路を彷徨って背表紙に誘惑される時間は至福だ。伝説の本屋「松丸本舗」の裏路地のような通路は、本との思わぬ出会いを幾度もつくってくれたものだ。ネット検索のように目的と結果がひっついていたらそうはいかない。便利さの代わりの“忘れ物”とは、なんだかんだあっての結果オーライや間違いからの発明や、カオスからの創発や異質との出会いを、待つともなく待てる遊び心かもしれない。大人にこそ、「迷宮プラネット」が必要だ。

 

 

▼投票はこちら
45[破] ハイパープランINFORM
・投票締め切り:2021年3月6日(土)午前9時

 

→ 7)ガンダム蓮結教室/迷宮プラネット

    思考空漠放浪遊楽
    ~自分と世界の文脈を可視化する~

 

 

  • 野嶋真帆

    編集的先達:チャールズ・S・パース。浪花のノンビリストな雰囲気の奥に、鬼気迫る方法と構えをもつISISの「図解の女王」。離の右筆、師範として講座の突端を切り開いてきた。野嶋の手がゆらゆらし出すと、アナロジー編集回路が全開になった合図。