鳥は美味しいリンゴを知っている。リンゴに鳥が突っついた穴がある。よってこのリンゴは美味しい。
──「これは美味しいから」といただいた農家さんからのオマケ。切れば甘味成分ソルビトールが沁みていた。覗いてみたくなる世界は尽きない。
カメラがあるから見える景色がある。2025年11月3日、文化の日、なかなか終わらない夏の暑さから解放され、やっと来た秋らしいカラリとした空気の中、倶楽部撮家のメンバーが渋谷に集合した。街中で撮影のワークショップをするのは初めての試み。瞬姿・後藤由加里と林朝恵はソワソワしながら今回の目玉となるフォトワークや持ち帰ってもらいたい方法の準備を整えた。
最初のワークはカフェでホワイトバランスの調整だ。その場で実際に撮影し、写真を見比べながらバランス次第で色の温度に違いが出て、カフェの雰囲気がまるで違って見えることを感じた。肉眼で見ている世界やこう撮りたいというイメージを写真で表現するには方法(機能)が必要なのだ。
続いて、この日のメインワーク「物語を撮る」だ。人、動物、物、場所、概念など、どんなものでも構わないが、主人公を決めて撮るルールだ。たった1枚でも連続する複数枚でも「物語」が感じられるような写真を撮らなければならない。制限時間は1時間半、カメラ片手に全員が渋谷の街へと駆け出して行った。スクランブル交差点、センター街、MIYASHITA PARK、スペイン坂、宮益坂、道玄坂、しぶや百軒店、代々木公園と渋谷はどの場所を歩くか次第で出会う人もモノも変わってくる。その場で何をどう切り取るかは撮影者次第、全てが編集だ。
夕暮れ時、撮影が終了したメンバーたちは再び同じカフェに集合した。混雑していて席を取るのに苦労したが、コーヒーカップを片手に肩を寄せながら、みんなで撮影した写真を鑑賞した。福澤俊の外付けモニターのおかげで、それぞれが撮影した写真を見るひと時はまるでショートムービーを見ているようだった。
ここからは、メンバー(瞬姿・瞬友)が撮影した写真の中からお気に入りの一枚をタイトルと共にご覧いただきたい。
撮影 福澤俊「孤独なギタリスト」
撮影 小松紳太郎「Lovers in SHIBUYA」
撮影 林朝恵「ホコリの出口」
撮影 後藤由加里「SHIBUYAディストピア」
全て渋谷の断片なのに、見たことのない渋谷、カメラがなければ出会うことのなかった景色だ。少しネタバラシをすると、後藤の写真は街灯を謎の円盤に見立て、渋谷を監視しているイメージで撮影されたのだ。レトロフューチャーな不思議な写真だが、写し出したのはルールだらけのディストピアな渋谷という物語だ。後藤が撮影したアイキャッチ写真からはそれをより感じられるかもしれない。
撮影者の狙いと見る側の間にギャップが生じるのもまた写真の面白さ。写真は撮った人の手元にあるだけでは、もったいない、他者に共有してこそ新しい意味や価値が生まれる。今回、撮影した渋谷のB面を含む倶楽部撮家のフォトリール写真展「モーメント」を別典祭で開催する。豪徳寺にぜひ足を運んでみて欲しい。倶楽部撮家のメンバー(瞬友・瞬姿)も参加する。
アイキャッチ写真 後藤由加里
文・編集 林朝恵
◆「別典祭」開催概要◆
日程:2025年11月23日(日)・24日(月・祝)
会場:編集工学研究所ブックサロンスペース「本楼」(最寄駅:小田急線 豪徳寺駅、東急世田谷線山下駅より徒歩7分)〒156-0044 東京都世田谷区赤堤2丁目15番3号
https://www.eel.co.jp/about/company
申込(2日間有効):1500円(イシス編集学校受講生、多読アレゴリア参加者含む)/無料(一般の方)
申込方法:https://shop.eel.co.jp/products/tadoku_allegoria_2025bettensai
▼倶楽部撮家Archive
もう会えない彼方の人に贈る一枚 PHOTO Collection
林朝恵
編集的先達:ウディ・アレン。「あいだ」と「らしさ」の相互編集の達人、くすぐりポイントを見つけるとニヤリと笑う。NYへ映画留学後、千人の外国人講師の人事に。花伝所の花目付、倶楽部撮家で撮影・編集とマルチロールで進行中。
あっという間に44[花]の錬成期間がやってきた。8週間のプログラムの折り返し、編集基礎体力ができたところで、入伝生に更なる負荷がかけられる。入伝生の多くはこの期間に蛹から蝶へと大きな変化を遂げるのだが、編集学校を見渡して […]
もう会えない彼方の人に贈る一枚 PHOTO Collection【倶楽部撮家】
ある日を境に会えなくなってしまった人。1度も会うことが叶わなかった人。 会いたくても会えない彼方の人がきっと誰しもいるだろう。松岡正剛校長は著書の中で度々、蕪村の句「凧(いかのぼり)きのふの空のありどころ」を取り上げてい […]
2024年8月12日、イシス編集学校校長の松岡正剛が逝去した。エディスト編集部では、直後に約1カ月にわたる追悼コラム連載を実施。編集学校内外から多数寄せられた松岡校長の面影は、1年経ってもなお鮮明だ。まるでその存在が読む […]
光を読む、光を撮る。 2025年8月9日、豪徳寺にあるイシス館とオンラインのハイブリッドで倶楽部撮家のメインイベントとなる瞬茶会(ワークショップ)が開催された。倶楽部メンバーは各々、カメラと懐中電灯を持参して集った。この […]
通りを歩けば紫陽花を見かける季節がやってきた。 土の酸性度によって色が変わるこの花は、現在進行形で変化を続ける入伝生の姿にも重なる。 6月になり錬成期間に入った入伝生は師範代になりきって指南を書きまくる日々 […]
コメント
1~3件/3件
2025-12-31
鳥は美味しいリンゴを知っている。リンゴに鳥が突っついた穴がある。よってこのリンゴは美味しい。
──「これは美味しいから」といただいた農家さんからのオマケ。切れば甘味成分ソルビトールが沁みていた。覗いてみたくなる世界は尽きない。
2025-12-30
ほんとうは二つにしか分かれていない体が三つに分かれているように見え、ほんとうは四対もある脚が三対しかないように見えるアリグモ。北斎に相似して、虫たちのモドキカタは唯一無二のオリジナリティに溢れている。
2025-12-25
外国語から日本語への「翻訳」もあれば、小説からマンガへの「翻案」もある。翻案とはこうやるのだ!というお手本のような作品が川勝徳重『瘦我慢の説』。
藤枝静男のマイナー小説を見事にマンガ化。オードリー・ヘプバーンみたいなヒロインがいい。