編集かあさんvol.1 子どもx本x遊び 新しい十二支を考えた

2019/12/14(土)11:48
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「子どもにこそ編集を!」
イシス編集学校の宿願をともにする編集かあさん(たまにとうさん)たちが、
「編集×子ども」「編集×子育て」を我が子を間近にした視点から語る。
子ども編集ワークの蔵出しから、子育てお悩みQ&Aまで。
子供たちの遊びを、海よりも広い心で受け止める方法の奮闘記。


 

 ネズミが描かれた新しいカレンダーを見ながら、長男(11)が言った。
「これだけブームなのにネコ年が無いのはおかしい。今、干支を作ったら絶対に猫が入ると思う」。

 ちょうど長女(6)が読んでる本にも「十二支のはじまり」のお話が載っている。最後のページでは猫がネズミを追いかけている。
どうしてこうなっちゃったんだろうね。
 じゃあ、新しいの作ってみる? 長男、「やる」とパソコンの前に座った。


 まず今の干支を一覧表にした。
 次に候補の動物を挙げていく。最初は親子で交互に思い出していき、出尽くしたところで動物図鑑を本棚から出して開く。
「ああ、サイを忘れてた!」「カンガルーやコアラもあるね」
 思い出せなくなったところで調べると、動物の名前がどんどんアタマの中に飛び込んでくる。

 今の干支と候補一覧を見比べ、12に絞り込むために、一つ一つ吟味していく。そうすると、ニワトリは鳥類、ヘビは爬虫類といった分類軸が見えてくる。またヒツジが入っててヤギは無いのは何故だろうという問いなども湧いてくる。
 そもそもどうして十二なのかとルーツに迫りたくなってちょっと調べてみる。中国で始まった時は「子丑寅……」は単なる記号であって、動物にあてはめたのは後のことと分かる。他の国にはブタ年などもあるらしい。

「パンダはイメージとちがう。入れるならクマ」
「龍はどうなんだろう? 一つだけ想像上の存在って。ヘビも外してもいいんじゃないかと個人的には思う」
 手を動かしながら発せられる長男のつぶやきに、「そうかなあ、今年はパンダ年っていうのもいいと思うけど」「ヘビは昔、神様の使い
とされていたからかな」と時々ツッコミを入れる。

 なかなか12に収まらないというので、グローバル化社会だから二十四支にしてもいいんじゃないかとアドバイスを挟んでみる。二十四節季という言葉もあるし、二十四にも何らかの意味がありそうだ。

 「新十二支」と「二十四支」を作ろうとゴールが決まった。


 検討の結果、決定したのがこちら。

◆新十二支
ウシ トラ ゾウ ネズミ ライオン キリン
ネコ ウマ ヒツジ ニワトリ タヌキ サイ


ポイント
・ネズミがズルをして1番になったけど、このバージョンでは一番
 最初に出発したウシを一番にした。
・トラ、ライオン、ネコ。ネコ科が多いけど、順番はばらけさせた。
・ニワトリだけは変わらず10番目になった。 

◆二十四支
ライオン キリン ネズミ ウシ トラ ウサギ カモ ヘビ ウマ
ヒツジ ネコ ニワトリ ゾウ クマ シマウマ カメ タヌキ 
コウモリ カバ モモンガ モグラ ハリネズミ カメレオン サイ

ポイント
・百獣の王であるライオンをトップにした。
・カメ年は、縁起も良さそうなのであってもよいと思う。
・最後はどっしりとした印象のサイで締めた。

 長男は、野菜や果物にも大いに興味関心がある。最近、果物の消費が低迷しているというニュースを受け、果物の干支も作ってみた。

◆果物十二支
イチゴ スイカ モモ ミカン イチジク ブドウ
リンゴ カキ マンゴー ナシ バナナ ビワ

ポイント
・イチゴはネズミっぽさ、スイカはウシっぽさを意識して並べた。
・干支はカレンダーだけでなくいろいろなシーンに登場する。
・果物好きとしては、「今年はミカン年ですね!」といった具合に、ちょっとでも果物が話題になるといいなと思う。


〇〇編集かあさん振り返り


 エクセルと動物図鑑を使って、40分ぐらいで集中して遊んだ時間でした。
 集める、選ぶ、並べる。「干支」という対象に介入することで動物たちのそれぞれの特徴や「らしさ」が見える。干支という仕組みの来歴やルールを調べるきっかけにもなって、予想以上におもしろかったです。
 みんなの新十二支も知りたい。子ども編集学校のお題候補に決定しました。

〇〇遊んだ本

『てのひらむかしばなし 十二支のはじまり』
 作: 長谷川 摂子
 絵: 山口 マオ
 出版社: 岩波書店

 

十二支に入れなくて怒ったネコがネズミを追いかける

  • 松井 路代

    編集的先達:中島敦。2007年生の長男と独自のホームエデュケーション。オペラ好きの夫、小学生の娘と奈良在住の主婦。離では典離、物語講座では冠綴賞というイシスの二冠王。野望は子ども編集学校と小説家デビュー。

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コメント

1~3件/3件

川邊透

2025-06-17

私たちを取り巻く世界、私たちが感じる世界を相対化し、ふんわふわな気持ちにさせてくれるエピソード、楽しく拝聴しました。

虫に因むお話がたくさん出てきましたね。
イモムシが蛹~蝶に変態する瀬戸際の心象とはどういうものなのか、確かに、気になってしようがありません。
チョウや蚊のように、指先で味を感じられるようになったとしたら、私たちのグルメ生活はいったいどんな衣替えをするのでしょう。

虫たちの「カラダセンサー」のあれこれが少しでも気になった方には、ロンドン大学教授(感覚・行動生態学)ラース・チットカ著『ハチは心をもっている』がオススメです。
(カモノハシが圧力場、電場のようなものを感じているというお話がありましたが、)身近なハチたちが、あのコンパクトな体の中に隠し持っている、電場、地場、偏光等々を感じ取るしくみについて、科学的検証の苦労話などにもニンマリしつつ、遠く深く知ることができます。
で、タイトルが示すように、読み進むうちに、ハチにまつわるトンデモ話は感覚ワールド界隈に留まらず、私たちの「心」を相対化し、「意識」を優しく包み込んで無重力宇宙に置き去りにしてしまいます。
ぜひ、めくるめく昆虫沼の一端を覗き見してみてください。

おかわり旬感本
(6)『ハチは心をもっている』ラース・チットカ(著)今西康子(訳)みすず書房 2025

川邊透

2025-06-17

私たちを取り巻く世界、私たちが感じる世界を相対化し、ふんわふわな気持ちにさせてくれるエピソード、楽しく拝聴しました。

虫に因むお話がたくさん出てきましたね。
イモムシが蛹~蝶に変態する瀬戸際の心象とはどういうものなのか、確かに、気になってしようがありません。
チョウや蚊のように、指先で味を感じられるようになったとしたら、私たちのグルメ生活はいったいどんな衣替えをするのでしょう。

虫たちの「カラダセンサー」のあれこれが少しでも気になった方には、ロンドン大学教授(感覚・行動生態学)ラース・チットカ著『ハチは心をもっている』がオススメです。
(カモノハシが圧力場、電場のようなものを感じているというお話がありましたが、)身近なハチたちが、あのコンパクトな体の中に隠し持っている、電場、地場、偏光等々を感じ取るしくみについて、科学的検証の苦労話などにもニンマリしつつ、遠く深く知ることができます。
で、タイトルが示すように、読み進むうちに、ハチにまつわるトンデモ話は感覚ワールド界隈に留まらず、私たちの「心」を相対化し、「意識」を優しく包み込んで無重力宇宙に置き去りにしてしまいます。
ぜひ、めくるめく昆虫沼の一端を覗き見してみてください。

おかわり旬感本

(6)『ハチは心をもっている』ラース・チットカ(著)今西康子(訳)みすず書房 2025

大沼友紀

2025-06-17

●記事の最後にコメントをすることは、尾学かもしれない。
●尻尾を持ったボードゲームコンポーネント(用具)といえば「表か裏か(ヘッズ・アンド・テイルズ:Heads And Tails)」を賭けるコイン投げ。
●自然に落ちている木の葉や実など放って、表裏2面の出方を決める。コイン投げのルーツてあり、サイコロのルーツでもある。
●古代ローマ時代、表がポンペイウス大王の横顔、裏が船のコインを用いていたことから「船か頭か(navia aut caput)」と呼ばれていた。……これ、Heads And Sailsでもいい?
●サイコロと船の関係は日本にもある。江戸時代に海運のお守りとして、造成した船の帆柱の下に船玉――サイコロを納めていた。
●すこしでも顕冥になるよう、尾学まがいのコメント初公開(航海)とまいります。お見知りおきを。
写真引用:
https://en.wikipedia.org/wiki/Coin_flipping#/media/File:Pompey_by_Nasidius.jpg