【勝手にアカデミア】『三枝博音と鎌倉アカデミア』×3×REVIEWS

2025/04/27(日)08:00 img
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 松岡正剛いわく《読書はコラボレーション》。読書は著者との対話でもあり、読み手同士で読みを重ねあってもいい。これを具現化する新しい書評スタイル――1冊の本を3分割し、3人それぞれで読み解く「× REVIEWS」。
 多読アレゴリアのクラブ【勝手にアカデミア】は今回、はとさぶ連衆(受講生)の3人が、自分たちのキーブックである『三枝博音と鎌倉アカデミア』のヨミトキを三分割書評で挑戦。伝説の学校をレビューで活写する。


 

【勝手にアカデミア】による三枝博音と鎌倉アカデミア』×× REVIEWS 

 

戦後の混乱期に誕生した奇跡の学校

序章 鎌倉アカデミアがめざしたもの――野散の大学・四年半の軌跡
第1章 学問の深さと厳しさ――哲学者・三枝博音の歩んだ道
第2章 楽しい学園をめざして――「自分」の頭で考える人間づくり

 

「鎌倉アカデミア」とはいったい何だったのか。松岡正剛校長も千夜千冊で評価した三枝博音(二代目校長)の思想から深掘りする。

 「鎌倉アカデミア」は学びの理想郷だ。戦後の混乱が続く1945年秋、鎌倉大学校として鎌倉に創設された。西洋哲学を志し、技術が知力発達の母胎であると考えて三浦梅園に学んだ三枝博音が、その二代目校長に就任する。三枝は、プラトンのアカデメイアに掲げられた「幾何学を知らぬ者、くぐるべからず」を、学園山門に掲げた。科学的に、自分の頭で考える学問の場を作ろう、「楽しい学園」を目指そう、と。大学の認可を得られぬ上に資金難に見舞われ、4年半で廃校の憂き目に遭った学園だが、数多の有為の人材を輩出したと今も語り継がれる。鎌倉の文化人が、進駐軍の慰安施設建設に異を唱え、文化主義の理想の為に惜しみない情熱と資源を注いで守ろうとした「鎌倉アカデミア」は、戦後教育史に名を残す古都の誇りである。(晶月・安田晶子)


現役の俳優が作家が躍動す
第3章 多彩で個性的な教授たち――作家・高見順も教壇に立つ

 

「鎌倉アカデミア」の特異性は、参集した教授陣のその顔ぶれの多彩さにあった。

 鎌倉アカデミアを特徴づけるのは、なんといっても多彩な教授陣だ。学者、作家、俳優、映画監督と多岐にわたる。終戦直後の混乱期にこのような逸材たちが集ったことがまず驚きである。それは鎌倉という場所にも起因するのか。まずは後に校長となった三枝博音。長髪をかき上げ「哲学はすべての学問に通じる根本である」と語るのが常だ。産業科の菅井準一は、自然科学研究者として生きた科学を教えた。ウィーン大学で学んだ俳優の遠藤慎吾は、演劇科の学生に読書と思索を徹底させた。文学科の吉野秀雄は、桜の下で『万葉集』を講義した。『ゴジラ』脚本家として知られる村田武雄は、映画科で「嘘はいけない」と説いた。多士済々の一言居士。これが、鎌倉アカデミアの教授たちだ。(歩風・伊東賢伸)


今も続く、学び合う共同体の精神
第4章 鎌倉アカデミアに来い――教える者と学ぶ者の人間ドラマ
第5章 種蒔く小さな集団――己れを信ずる者の新しい旅立ち
終章 光は闇の中で見える――語り継がれる鎌倉アカデミア

 

なぜ「鎌倉アカデミア」は終わりを迎えたのか。「鎌倉アカデミア」とは何だったのか。

 鎌倉アカデミアは開校するや否や、次々と身包みを剥がされていった。間借りの校舎も、大学令の拠所となり得たはずの財産も、そして大学の名も。残ったものは、学び合う教師たちと学生たちの日々の交歓であり、新たに生まれたのはアカデミアの名であった。責任を全うできない理事会を排斥した教員と学生と父兄がその場を維持した。産業科の野崎茂によれば、鎌倉アカデミアは、学校という体裁をとっているものの、実は文化運動の拠点にほかならず、従って三枝先生は文化運動のリーダーだった。昭和25年9月に移転先の大船校舎で廃校となったが、学び合う共同体の精神は今もって続いている。(日々・大塚宏)


『三枝博音と鎌倉アカデミア 学問と教育の理想を求めて』
前川清治/中公新書/1996年5月25日/680円(税別)

■目次
序章 鎌倉アカデミアがめざしたもの――野散の大学・四年半の軌跡
第1章 学問の深さと厳しさ――哲学者・三枝博音の歩んだ道
第2章 楽しい学園をめざして――「自分」の頭で考える人間づくり
第4章 鎌倉アカデミアに来い――教える者と学ぶ者の人間ドラマ
第5章 種蒔く小さな集団――己れを信ずる者の新しい旅立ち
終章 光は闇の中で見える――語り継がれる鎌倉アカデミア
あとがき

 

× REVIEWS(三分割書評)を終えて

 やはり「鎌倉アカデミア」はイシス編集学校のアーキタイプだ。ここには、「教える」「学ぶ」の固定的な関係を越えた相互の学びがあった。なにもない戦後の混乱期に、有志によって理想の学校が創られたという事実は、私たちにも勇気を与えてくれる。「鎌倉アカデミア」モデルは、今の時代にこそ必要なのではないだろうか。(み勝手・角山祥道)

多読アレゴリアのクラブ【勝手にアカデミア】は、吟行に映画会にと体験重視。そして極めつけの体験は、記者デビュー。こんなふうに誰でも遊刊エディストで記者デビューできます。プロのライターの指導入りなので、誰でも大丈夫。「文章術」も学べるのが、【勝手にアカデミア】の特徴です。25夏シーズンの入会、お待ちしております。(せん師・大塚宏)

●「勝手にアカデミア」をもっと知るには●

○吟行レポ

【多読アレゴリア:勝手にアカデミア】はとさぶ連衆、鎌倉に集い俳句を詠みつつアカデミア構想に巻き込まれるの巻

○クラブ紹介

【多読アレゴリア:勝手にアカデミア①】勝手にトポスで遊び尽くす

【多読アレゴリア:勝手にアカデミア②】文化を遊ぶ、トポスに遊ぶ

【多読アレゴリア:勝手にアカデミア③】2030年の鎌倉ガイドブックを創るのだ!

【多読アレゴリア:勝手にアカデミア】勝手に映画だ! 清順だ!(25春)


◆Info 多読アレゴリア2025夏

 

【申込】https://shop.eel.co.jp/products/tadoku_allegoria_2025summer

 *多読アレゴリア2024春から継続の方は申し込み手続きは不要です。

【開講期間】2025年2025年6月2日(月)~8月24日(日)
【申込締切】2025年5月26日(月)
【定員】20名(勝手にアカデミア)
【受講資格】どなたでも受講できます
【受講費】月額11,000円(税込)
 ※ クレジット払いのみ
 ※ 初月度分のみ購入時決済
 以後毎月26日に翌月受講料を自動課金
 例)2025夏申し込みの場合
 購入時に2025年6月分を決済
 2025年6月26日に2025年7月分、以後継続

 ・2クラブ目以降は、半額でお申し込みいただけます。
 ・1クラブ申し込みされた方にはクーポンが発行されますので、そちらをご利用の上、2クラブ目以降をお申し込みください。

  • 勝手にアカデミア

    編集的先達:三枝博音。多読アレゴリアの【勝手にアカデミア】は、鎌倉に生まれた伝説の学校「鎌倉アカデミア」をもどきながら、トポスにトピカ、映画に産業、文学に演劇……などなど勝手に学び、勝手に語らい、勝手に創出する。