『問いの編集力』×3× REVIEWS

2024/10/24(木)12:01
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 本は最初から最後まで読むもの? 必ずしもそうではありません。本はひとりで読むもの? これもそうとは限りません。読書はもっと自由で多様です。本はどこで読んだって、どこから読んだっていい。
 松岡正剛いわく《読書はコラボレーション》。読書は著者との対話でもあり、読み手同士で読みを重ねあってもいい。
 そこで、相互編集&つまみ読みを軸にした新しい書評スタイル――1冊の本を3分割し、3人それぞれで読み解く「3× REVIEWS」を用意しました。最近上梓され、たちまち増刷された、安藤昭子(編集工学研究所 代表取締役社長)による話題の書『問いの編集力』(ディスカヴァートゥエンティワン)を、チーム渦の3人の分担書評で紹介します。


 

『問いの編集力』×× REVIEWS

 

 「問い」が気づかせる“私の可能性”

第1章 「問い」の土壌をほぐす:Loosening
第2章 「問い」のタネを集める:Remixing

 

なぜ「問い」を問わねばならないのか。この大きな問いに対し、「3×REVIEWS」トップバッターの吉居は、「問う主体である私」をメタフォリカルに語り直す。

 何を見ても聞いても心が動かない。こんな状況に陥ることは誰にでもある。茨木のり子は「自分の感受性くらい自分で守れ」と檄を飛ばしたが、安藤昭子は「私」を土壌に喩えて語ることにした。
 問いが生まれない、ギモンやワクワクも湧いてこないのはなぜか。問う主体である私が酸欠状態だからだ。まずはそこを動かさねばならない。「たくさんのわたし」という稽古は、私という固まりを表面から奥へと耕し直す作業である。
 問う力は欲しいし、多様性とか多面性とかいう言葉はキャッチ―だ。でもほんとうにそこに近づきたいなら、やるべきは私がふかふかな大地だと証明することだ。「私は〇〇〇な×××である」への答えが一つしかない土壌に、問いは飛んで来たくないようである。
 「問い」は「たくさんのわたし」にこそ根付く。(吉居奈々)

 

 「観の目」で本から問いを呼び込む

第3章 「問い」を発芽させる:Emerging

 

吉居は問いの正体を「動く私を自覚する」ことだと見た。ではどう見るか。2番手の柳瀬はこれを受け、「観の目」を持ち込む。

 「観の目」。宮本武蔵の五輪書の言葉だ。
 「見の目」が、動いている敵の太刀自体を見つめる虫の目に対し、「観の目」は、全体状況を俯瞰する鳥の目のことである。剣術において、目先で今動きつつあるものに目を奪われず、「観の目」を養う大切さを説いた。
 「問いを発芽させる」にも、この「観の目」で観られるかどうか。読書では、目の前の本そのものと向き合っていたら問いは芽吹いてこない。本と、他の本と、自分の知識や経験とを出入りさせて、本を観る。もはや、本の中身を理解しようというカマエはいらない。読書は、武道のような動的な行為であり、本に書かれていない情報をこそ観ようとすること。それが、新たな問いを呼び込むのだ。

 「問い」は、物事とわたしの「間」を観る力だ。(柳瀬浩之)

 

 私たちは「問う人」であった

第4章 「問い」が結像する:Discovering
第5章 「内発する問い」が世界を動かす

 

「観の目」は、眼鏡でもあり、ナイフでもある、と3番手の角山は捉えた。では世界を変える「問い」の使い方とは? 

 問いは、それまで見えていなかった世界を映し出す不思議な眼鏡だ。眼鏡は世界の解像度を上げる。問い=仮説は、世界に切れ目を入れるナイフでもある。ナイフは自他をキズつける。ここにナイフ=問いを差し込んでいいのかという躊躇や逡巡は誰しもある。
 安藤はここにアブダクションの方法を持ち込む。見えているもの(既知)から見えないもの(未知)を引き出すのが推論だがアブダクションはその逆。未知を「あてずっぽう」で仮説し、既知が何たるかを再解釈する。ゆえにアブダクションは「世界の見方」を変える力を持つ。
 ホイジンガは人間を「遊ぶ人(ホモ・ルーデンス)」と定義したが、安藤に従えば私たちは「問う人」だ。立ち止まって問う勇気、いってみれば眼鏡を変える勇気が、私たちを“人”にする。

 「問い」は私たちを“人”にする。(角山祥道)

 

『問いの編集力 思考の「はじまり」を探究する』

安藤昭子著/ディスカヴァー・トゥエンティワン/2024年9月20日発行/2090円

 

■目次
はじめに なぜ「問い」を「問う」のか
第1章 「問い」の土壌をほぐす:Loosening
第2章 「問い」のタネを集める:Remixing
第3章 「問い」を発芽させる:Emerging
第4章 「問い」が結像する:Discovering
第5章 「内発する問い」が世界を動かす
おわりに 「問う人」として

 

■著者Profile

あんどう・あきこ/編集工学研究所代表取締役社長、[AIDA]プロデューサー。出版社時代にイシス編集学校に入門。守破離のコースを経て2010年編集工学研究所に入社。2021年より同社社長。企業・学校・地域など編集工学を多岐にわたる領域に実装・提供する。著書に『才能をひらく編集工学』、『探究型読書』。

 

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プレスリリース

出版社情報 

 


 「問う」ことは、これまでの一様の世界を多様にする。いいかえれば「世界の数だけ、わたしがいる/わたしの数だけ、世界がある」ということだ。

 10月28日に開講する、イシス編集学校の入門コース[守]では、「たくさんのわたし」という編集稽古を体験する。「問い」の数だけ世界が拡張する感覚、「たくさんのわたし」から世界を見る体験を味わってみてはいかがだろうか。

 

◆イシス編集学校 第54期[守]基本コース募集中!◆
稽古期間:2024年10月28日(月)~2025年2月9日(日)
詳細・申込:https://es.isis.ne.jp/course/syu

  • エディストチーム渦edist-uzu

    編集的先達:紀貫之。2023年初頭に立ち上がった少数精鋭のエディティングチーム。記事をとっかかりに渦中に身を投じ、イシスと社会とを繋げてウズウズにする。[チーム渦]の作業室の壁には「渦潮の底より光生れ来る」と掲げている。

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