名を追い、名を負って 25[花]やまぶき道場

2019/09/19(木)18:50
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 やまぶき式部、井組の親分、岡村城の若殿、月姫、セブ島のゴーシュ。25[花]やまぶき道場は全員が別名を持っていた。31回を数える花伝所史上、類をみない試みだった。

 

 命名者は松本礼子。仲間の奮闘を励みに4週目にたどり着いた感謝を名前に込めた。質量・熱量ともダントツの井ノ上裕二は親分。相手への心配りが抜群で、場を和ませる岡村修司が若殿。月姫こと池永月子は共感力が高く、登場のたびに道場をパッと明るくする。

 

 一歩ずつ切実に進む最年少の佐藤英太はセロ弾きのゴーシュになぞらえた。松本はやまぶき式部。細かな観察力とた手弱女(たおやめ)ぶりに注意のカーソルを当て、花伝師範・清水伺名子が名付けた。

 

 背負った名はそれにふさわしいカマエを引き出す。親分はゴーシュの追いかけるべき背となり、月姫と若殿と式部は互いの長所に倣いあった。これが翌週に迫った錬成への追い風に。相互編集が加速すると指導へのフィードバックも具体的になり、編集工学への理解も深まっていく。

 

 放伝した5人は全員師範代として教室名を持った。松本と佐藤は38[守]で、でんでんシモーヌ教室、不足大事教室を名乗り、岡村は39[守]ブレイク半歩教室、池永は41[守]オカンの下弦教室の師範代をつとめた。井ノ上は38[守]・[破]の熱線シーザー教室師範代のあと、[守]の師範を歴任し、次はいよいよ番匠へ。

 

 名を追い、名を負って走り出した聖火ランナーたちはもう誰にも止められない。

  • しみずみなこ

    編集的先達:宮尾登美子。さわやかな土佐っぽ、男前なロマンチストの花伝師範。ピラティスでインナーマッスルを鍛えたり、一昼夜歩き続ける大会で40キロを踏破したりする身体派でもある。感門司会もつとめた。

コメント

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川邊透

2025-07-01

発声の先達、赤ん坊や虫や鳥に憑依してボイトレしたくなりました。
写真は、お尻フリフリしながら演奏する全身楽器のミンミンゼミ。思いがけず季節に先を越されたセミの幼虫たちも、そろそろ地表に出てくる頃ですね。

川邊透

2025-06-30

エディストの検索窓に「イモムシ」と打ってみたら、サムネイルにイモムシが登場しているこちらの記事に行き当たりました。
家庭菜園の野菜に引き寄せられてやって来る「マレビト」害虫たちとの攻防を、確かな観察眼で描いておられます。
せっかくなので登場しているイモムシたちの素性をご紹介しますと、アイキャッチ画像のサトイモにとまる「夜行列車」はセスジスズメ(スズメガ科)中齢幼虫、「少し枯れたナガイモの葉にそっくり」なのは、きっと、キイロスズメ(同科)の褐色型終齢幼虫です。
 
添付写真は、文中で目の敵にされているヨトウムシ(種名ヨトウガ(ヤガ科)の幼虫の俗称)ですが、エンドウ、ネギどころか、有毒のクンシラン(キョウチクトウ科)の分厚い葉をもりもり食べていて驚きました。なんと逞しいことでしょう。そして・・・ 何と可愛らしいことでしょう!
イモムシでもゴキブリでもヌスビトハギでもパンにはえた青カビでも何でもいいのですが、ヴィランなものたちのどれかに、一度、スマホレンズを向けてみてください。「この癪に触る生き物をなるべく魅力的に撮ってやろう」と企みながら。すると、不思議なことに、たちまち心の軸が傾き始めて、スキもキライも混沌としてしまいますよ。
 
エディスト・アーカイブは、未知のお宝が無限に眠る別銀河。ワードさばきひとつでお宝候補をプレゼンしてくれる検索窓は、エディスト界の「どこでもドア」的存在ですね。

堀江純一

2025-06-28

ものづくりにからめて、最近刊行されたマンガ作品を一つご紹介。
山本棗『透鏡の先、きみが笑った』(秋田書店)
この作品の中で語られるのは眼鏡職人と音楽家。ともに制作(ボイエーシス)にかかわる人々だ。制作には技術(テクネ―)が伴う。それは自分との対話であると同時に、外部との対話でもある。
お客様はわがままだ。どんな矢が飛んでくるかわからない。ほんの小さな一言が大きな打撃になることもある。
深く傷ついた人の心を結果的に救ったのは、同じく技術に裏打ちされた信念を持つ者のみが発せられる言葉だった。たとえ分野は違えども、テクネ―に信を置く者だけが通じ合える世界があるのだ。