「フェチこそ編集のエンジンである」 雨の声文会にて

2019/10/03(木)10:50 img
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 大音美弥子、石川正宏、赤羽卓美、太田香保がひざ詰めで何やら話し込んでいる。

 

 千離衆たち([離]を退院した学衆の総称)が定期的に開催している声文会。9月11日、この日はあいにくの雨で参加者が少ないためか、雑談が続いていた。そこへ突然、半纏姿のセイゴオが乱入。問わず語りに「千夜千冊エディション」や今後の[離]のビジョンについて話し始めた。

 

 話題は「フェチ」におよぶ。去年の末に『雑品屋セイゴオ』(松岡正剛、春秋社)を刊行して以来、セイゴオは「フェチこそ編集のエンジンである」を編集学校のモットーとすべく、フェチ教の“教祖”よろしく隙あらば布教をはかろうとする。

 

 「いまの社会にはフェチが足りないんだよな」とぼやき、「フェチ、嗜癖がクリエィティブの最初にあることを忘れている。編集学校も例外ではないよ」と声文会メンバーをしきりに煽る。ちっとも[離]のおさらいに踏み込めないまま、雑談は23時過ぎまで続いた。

 

『雑品屋セイゴオ』(春秋社)

 

 ちなみにセイゴオのフェチは夜更かし、喫煙、おかき、夏のソーメン、赤と青のVコーン、老眼乱視のメガネ、おにぎり、ノートパソコン、キンカン、葛根湯、ガリガリ君…などなど。困ったことに、咳止めブロンをフェチしたがるため、松岡事務所スタッフであわてて止めに入ることもしばしばだ。

  • 寺平賢司

    編集的先達:カール・ゴッチ。松岡事務所の期待のホープとして、千夜編集部やプロジェクトを仕切る。フィリピン人の母と日本人の父をもつハーフボーイ。調子のよさでは右にでるものがいない。

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コメント

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山田細香

2025-06-22

 小学校に入ってすぐにレゴを買ってもらい、ハマった。手持ちのブロックを色や形ごとに袋分けすることから始まり、形をイメージしながら袋に手を入れ、ガラガラかき回しながらパーツを選んで組み立てる。完成したら夕方4時からNHKで放送される世界各国の風景映像の前にかざし、クルクル方向を変えて眺めてから壊す。バラバラになった部品をまた分ける。この繰り返しが楽しくてたまらなかった。
 ブロックはグリッドが決まっているので繊細な表現をするのは難しい。だからイメージしたモノをまず略図化する必要がある。近くから遠くから眺めてみて、作りたい形のアウトラインを決める。これが上手くいかないと、「らしさ」は浮かび上がってこない。

堀江純一

2025-06-20

石川淳といえば、同姓同名のマンガ家に、いしかわじゅん、という人がいますが、彼にはちょっとした笑い話があります。
ある時、いしかわ氏の口座に心当たりのない振り込みがあった。しばらくして出版社から連絡が…。
「文学者の石川淳先生の原稿料を、間違えて、いしかわ先生のところに振り込んでしまいました!!」
振り込み返してくれと言われてその通りにしたそうですが、「間違えた先がオレだったからよかったけど、反対だったらどうしてたんだろうね」と笑い話にされてました。(マンガ家いしかわじゅんについては「マンガのスコア」吾妻ひでお回、安彦良和回などをご参照のこと)

ところで石川淳と聞くと、本格的な大文豪といった感じで、なんとなく近寄りがたい気がしませんか。しかし意外に洒脱な文体はリーダビリティが高く、物語の運びもエンタメ心にあふれています。「山桜」は幕切れも鮮やかな幻想譚。「鷹」は愛煙家必読のマジックリアリズム。「前身」は石川淳に意外なギャグセンスがあることを知らしめる抱腹絶倒の爆笑譚。是非ご一読を。

川邊透

2025-06-17

私たちを取り巻く世界、私たちが感じる世界を相対化し、ふんわふわな気持ちにさせてくれるエピソード、楽しく拝聴しました。

虫に因むお話がたくさん出てきましたね。
イモムシが蛹~蝶に変態する瀬戸際の心象とはどういうものなのか、確かに、気になってしようがありません。
チョウや蚊のように、指先で味を感じられるようになったとしたら、私たちのグルメ生活はいったいどんな衣替えをするのでしょう。

虫たちの「カラダセンサー」のあれこれが少しでも気になった方には、ロンドン大学教授(感覚・行動生態学)ラース・チットカ著『ハチは心をもっている』がオススメです。
(カモノハシが圧力場、電場のようなものを感じているというお話がありましたが、)身近なハチたちが、あのコンパクトな体の中に隠し持っている、電場、地場、偏光等々を感じ取るしくみについて、科学的検証の苦労話などにもニンマリしつつ、遠く深く知ることができます。
で、タイトルが示すように、読み進むうちに、ハチにまつわるトンデモ話は感覚ワールド界隈に留まらず、私たちの「心」を相対化し、「意識」を優しく包み込んで無重力宇宙に置き去りにしてしまいます。
ぜひ、めくるめく昆虫沼の一端を覗き見してみてください。

おかわり旬感本
(6)『ハチは心をもっている』ラース・チットカ(著)今西康子(訳)みすず書房 2025