校長の飛び入りを誘った、[破]伝習座きわどい共読シーン

2020/04/07(火)21:31 img
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 「ちょっといい…?」校長が自著『稲垣足穂さん』を手に、オンライン伝習座の画面に飛び入りした。

 44[破]伝習座のプログラム「セイゴオ知文術 10冊を共読する」の最中のことだ。

 

 [破]において最初の関門となるお題「セイゴオ知文術」は、ミニ千夜千冊を書く。課題本は多様な読みを誘う10冊。伝習座では、師範・評匠・番匠・学匠が入れかわり立ちかわり、自分が発見した宝物のように課題本の魅力を語る。とても1冊4分では収まらない、はみ出し気味のトークが伝習座の名物である。

 

 関富夫評匠は、松岡校長の著作『稲垣足穂さん』を担当し、自宅からレクチャーを展開した。長新太やジュール・ヴェルヌなど、関連本もどんどん画面に取り入れる。校長から「もっとあるの?見せて?」の合いの手が入る。関評匠の「70年代という時代背景が地にある」という指摘が、校長の何かを起動させたようだ。

 

 「いやあ関くんのよかったね」と、学林堂のマイクの前に坐る校長。『稲垣足穂さん』の解説を書いた「ばるぼら」とは誰か? なぜリットーミュージックの立東舎なのか? など評匠にも謎だったことを明かしてゆく。横から差し出された『タルホ事典』をひらき、淡い菫色の紙に印刷された「タルホ・セイゴオ・マニュアル」をズームアップして示す。

 

 校長にとって70年代とは、『遊』を中心に文章を書くことにいちばん集中して向かった時なのだそうだ。稲垣足穂のように捉えがたい、でも捉えたくてならない存在に、かきたてられたからなのだろうか。

 

 小さな本に秘められた謎が、明かされたようでまた増える。[破]の稽古には、もどかしく、きわどい読書体験も仕込まれている。

 

 

 

 

  • 原田淳子

    編集的先達:若桑みどり。姿勢が良すぎる、筋が通りすぎている破二代目学匠。優雅な音楽や舞台には恋慕を、高貴な文章や言葉に敬意を。かつて仕事で世にでる新刊すべてに目を通していた言語明晰な編集目利き。