Qを入れるとAが出てくる。検索のその先はAIが問いに答える時代なのだろうか。
ChatGPTを始めとする生成AIが生活に織り込まれ始めた。問いを投げ込めばAIが膨大なデータをもとに応じてくれる。今はまだ揺らぎを内包しているが、このまま世界に散らばる情報を取り込み続ければ、精度を高めていくことは間違いない。生成AIに警鐘を鳴らす声はむしろシンギュラリティの足音にすら聞こえる。世界は手垢のついた言葉をつなぎ合わせたAに覆われてしまうのか。
編集学校はAでとどまらない。Q&Aではなく、Q&E。新たに編集が始まり、問いがさらなる問いへとつながっていく。問いは往還するのだ。50[守]特別講座の「田中優子の編集宣言」に集まった膨大な問いは2万字に及ぶ回答集に結実した。問いを素通りせず、重ねられた田中優子の「返」が熱に変わり、新たな問いを生み出し始める。
外骨ジャーナル教室の学衆ツチダにとって質問回答集は「機」となった。テキストだけのつながりから生じた豊穣に憧れ、言葉から想像力をドライブさせたいと願う。ツチダの問いは外骨ジャーナル教室で新たなうねりとなった。その起点が「積読くずし」と題した自主稽古だ。1冊目の積読本『地図マニア 空想の旅』では、地図を二軸四方で分ける。38のお題を身体に通しながら本を読む試みだ。
ツチダに触発され、他の学衆からも新たな問いが生まれていく。ドイが考案した教室の「らしさ」の一種合成は、新しい四字熟語で外骨ジャーナル教室を表すお題だ。テキストベースでどこまでできるか、38題の稽古が終わった教室で学衆たちはとことんまで遊び倒す。
学衆たちが重ねたQ&Eはそれぞれのエディティングキャラクターをも突出させる。場を照らし、暖めるツチダ、対話の根っこを深くまで伸ばすドイ、そして、キリコさんはそれぞれの言葉をつなぎ合わせ、いきいきとさせる。三者の瑞々しい対話がもたらした一座建立に師範代の山下はオドロキとヨロコビを隠さない。新しい「わたし」に出会ったのは学衆だけではない。場を作った師範代も自らを破り、編集し直す。
ありきたりの情報を飲み込む生成AIが生み出すのは既知でしかない。それに対し、編集学校は未知に向かう。問いが生み出すのは答えだけではない。問いに応じて編集が始まり、新たな問いが波及していく。だからこそ、創発を生み、相互編集を経て、学衆の可能性が拓かれる。
「田中優子の編集宣言」は特異点として問いの連鎖の起点となった。50[守]の加速は止まらず、進破者が続出、急遽教室数を増やした50[破]がいよいよ開講する。ツチダたちも新たな問いを胸に破の教室の門を叩く。彼らのより遠くの未知に向かう編集はまだ始まったばかりだ。
◆イシス編集学校 第51期[守]基本コース募集中!◆
日程:2023年5月8日(月)~ 2023年8月20日(日)
ご参加希望の方はお申し込みをお急ぎください。
詳細・申込:https://es.isis.ne.jp/course/syu
佐藤健太郎
編集的先達:エリック・ホッファー。キャリアコンサルタントかつ観光系専門学校の講師。文系だがザンビアで理科を教えた経歴の持ち主で、毎日カレーを食べたいという偏食家。堀田幸義師範とは名コンビと言われ、趣味のマラソンをテーマに編集ワークを開催した。通称は「サトケン」。
数寄は人生のスパイスだ。その対象が何であれ、数寄は世界を彩り、その香りで人々を惹きつける――。54期[守]師範が、「数寄を好きに語る」エッセイシリーズ。カレーをこよなく愛する佐藤健太郎師範が只管に歩き続け […]
リスクも不確実性も見たくない。だから、小さく分解し、分散する。では、見えなくなったらなくなるのか。 新NISAの導入以来、賑やかな個人向け投資の世界では、卵を一つの籠に入れず、時間と空間でリスクを分散さ […]
悠久の慈愛、ガメラ、乾いたミルフィーユ、邪心を吸う木、生きる死ぬ、安定打坐、カルシウム姫……。 共通点がない。意味の分からない言葉の組み合わせすらある。この7つの言葉が分かるのはこの広い世界を見回してみても […]
用法2は鬼門だ。第52期[守]基本コースの伝習座で師範の石黒好美はそう絞り出すように語った。吐くほど苦しかったとの言葉に本楼に参集した師範代、ZOOM越しに画面にかじりつく師範代も心なしか頷く。「今までになかった秩序をつ […]
三度の飯よりカレー好き。師範・佐藤健太郎のことだ。カレーで編集思考素を語るかと思えば、食べ歩き道をエディストする。そんな佐藤に52[守]ボードのキックオフ記事を注文した。やはりカレーだった。じんじんと舌のしびれるようなカ […]