[破]は、松岡正剛の仕事術を“お題”として取り出したとっておきの講座である。だから回答と指南の応酬も一筋縄にはいかない。しかしそのぶん、[破]の師範代を経験すれば、どんなことにも編集的に立ち向かえるようになる――学匠・原田淳子は、普段からそう太鼓判を押している。[破]の師範代たちも、過密な稽古にとことん身を投じながら、おのずと遠くをまなざすようになる。
「いきいきした回答には必ず守の型が潜んでいる」(新坂彩子師範代)「どんどん閾値を超えていく、限界のインフレ状態が面白い」(稲森久純師範代)「学衆の回答にアフォードされる快感を知った」(矢倉芳夫師範代)。講座の折り返し点にあたる第2回伝習座では、日夜回答に向き合う師範代にしか発せられないヴィヴィッドな声が飛び交った。さらにまた、いまここの教室運営のみならず、「講座のその先」をはっきりと見据えた師範代の姿もあった。
「自分の教室から必ず師範代を輩出すること。これが最大の仕事だと、腹をくくりました」
落ち着いた佇まいでそんな“野望”を口にしたのは、「四一・一・二五教室」師範代の束原俊哉である。束原は51[守]師範代のときから「方法の身体化」と「表象の磨き込み」を目標に掲げてきた。Hyper-Editing Platform [AIDA]の座衆でもある束原は、今期[破]の師範代ロールも担うなかで、「編集の社会化」と「社会の編集化」の必要性を切に感じるようになったという。上記の言葉もその想いに根差している。これまでは無理やり師範代輩出を目指さなくてもよいと思っていたそうだが、師範代仲間を増やすことがこの社会をよくすることにつながるという確信から、この2カ月で、束原の中に小さからぬ視座の転換が起こったようだ。
「なにか大きなことを言ってしまったかもしれません」。終盤、はにかみながらそう振りかえった束原だったが、彼の決意は、チーム師範代・渋谷菜穂子に同じ“野望”を抱かせるだけの感化力をもっていた。師範代輩出をアンダーシナリオに置いた編集プロセスは、これを機にチームでの連携も加わって、いっそう愉快・痛快に加速してゆくことだろう。
▼束原師範代と渋谷師範代。最近チームラウンジでやりとりするなかで、なんとふたりとも、まったく同じ建物の異なる階で働いていることが判明したという。さすがに運営側もそこまでは仕組めない。完全なる偶然から生じたチーム編成であった。突破および「その先」に向けての戦略会議は、今後ますます盛んになっていくにちがいない。
写真:後藤由加里
バニー蔵之助
編集的先達:橋本治。通称エディットバニー.ウサギ科.体長180cm程度.大学生時に入門後、師範代を経てキュートな編集ウサギに成長。少し首を曲げる仕草に人気がある。現在は高校教員の傍ら、破に携わりバニー師範と呼ばれる。
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