木々が色づきを増すこの季節、日当たりがよくて展望の利く場所で、いつまでも日光浴するバッタをたまに見かける。日々の生き残り競争からしばし解放された彼らのことをこれからは「楽康バッタ」と呼ぶことにしよう。
遊刊エディストと社会の境界で、日々うずうずと編集を続けるチーム渦。新たに、前期53[守]空耳ラブレター教室の師範代・山口奈那をメンバーとして迎え入れた。
その山口が、最初に手掛けるのは、54[守]創守座ルポ。創守座とは、[守]の当期師範代たちの研鑽の場だ。いったいそこでは何が起きていたのか。師範代経験者だからこそ見えてくる景色を、お届けする。
物語は人と人を結ぶ。読み聞かせてもらった『オズの魔法使い』、色褪せることなく語り継がれる『源氏物語』。人から人へと語られることで物語は輝きを放つ。10月5日、本楼で行われた「創守座」にはそんな特別な物語の始まりを予感させる種がいくつも散りばめられていた。
師範が語り手となる用法語りでは開講目前ということもあり、冷静な語り口調の中にも一層の熱が入っていた。パソコンの画面越しに創守座を見つめながら、ふと自分が過ごしたこの夏の15週間を振り返ってみた。もしかして、師範代マザーだったのか、と思うことがあれもこれもと溢れて飛び出してきた。
[守]を卒門した者が進むことが出来る[破]の講座には物語を編集的フォーマットと考える。その元になる型を母型(マザー)とよぶ。マザーは一つの型から枝分かれし、たくさん葉を茂らせながら、色とりどりの花のように様々な物語が咲いていく。
実は師範代になっていく道も物語であり、マザーがあるのだと「創守座」はこっそりと語りかける。この師範代マザーを師範たちは巧妙に話に織り交ぜて、これからの手すりとして師範代に託す。
用法1を語る佐藤健太郎師範(アイキャッチ写真)は「世界と私」は明確に分かれておらず、「私の世界、世界の私」という見方を転換させていくことで学衆の回答に入り込む。そうして「私」は私ではなく、師範代という存在に「なっていった」ことに気づいた。
阿久津健師範は用法2の語りの中で、編集思考素は「正しい」、「間違い」という自分の世界モデルを手放して回答を見ることの大切さを伝えた。そうすることによって、正誤判定ではなく、回答の面白さを見つけることができる。
▲用法2を語る阿久津健師範
普段の自分では受け止めきれない言葉でも、師範代という目を通して、回答を見れば「こんな見方があるのか!」とキラキラ輝く宝石のように思えた。回答の面白さを目の前にすれば普段の意固地な自分なんてどうでもよくなり、夢中になって回答を楽しむことが出来る。師範代とは一番回答を楽しむ名人なのだ!早く指南を書きたいという、うずうずは「楽しい」という気持ちだったのだ。
もうすぐ54[守]の講座が始まる。この師範代マザーが教室ごとにどのような物語に変身していくのか。師範代と学衆が無我夢中で楽しむ格別な物語の蕾が開く。
▲指導陣が広げた「創」のシソラースに、“託す”愛情を感じた
文/山口奈那(53[守]師範代、チーム渦記者)
アイキャッチ写真/阿久津健(54[守]師範)
文中写真/相部礼子(54[守]同朋衆)
◆イシス編集学校 第54期[守]基本コース 募集中!◆
稽古期間:2024年10月28日(月)~2025年2月9日(日)
詳細・申込:https://es.isis.ne.jp/course/syu
エディストチーム渦edist-uzu
編集的先達:紀貫之。2023年初頭に立ち上がった少数精鋭のエディティングチーム。記事をとっかかりに渦中に身を投じ、イシスと社会とを繋げてウズウズにする。[チーム渦]の作業室の壁には「渦潮の底より光生れ来る」と掲げている。
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2025-11-11
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2025-11-04
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