イシス編集学校には秘伝のお茶がある。その名も「七茶の法則」。『知の編集術』にも『知の編集工学』にも載っておらず、通常は入門者だけが味わえる特製編集茶だ。
「一杯のお茶から九州を読み解く方法」と題した九州エディットツアーでは、そのスペシャルティーが参加者にふるまわれた。どんなお味だったのか、七茶に肖りつつ振り返ってみよう。
Charm:
「みなさま、ようこそ~」お茶の温泉に漬かって、茶目っ気あふれる挨拶をしたのは田中さつき師範代。大分は耶馬渓在住で、中継会場も提供した。温かいナビに空気も和らいでいく。
Chance:
「いつものお茶にもチャンスあり」と、編集の茶柱を立てたのは地方支所・九天玄氣組の組長、中野由紀昌である。オープニングムービーには日常の様々な場面にそっと寄り添うお茶が並ぶ。そこに注意のカーソルをあてると、お茶はどんな話を聞かせてくれるのだろうか。
Charge:
今回のツアーは九天玄氣組十五周年企画でもある。動画でその歩みを茶ージする。近頃は校長への年賀制作で注目されることが多いが、実際はもっと幅広い活動を行っている。発足会、講演会、講座、茶摘み、書店とのコラボイベント、9周年・10周年企画など。そして、そこにはいつもお茶が傍らにあった。
Challenge:
茶匠・上原美奈子が九州のお茶の歴史と、自らの茶レンジ人生を語った。茶道家だった上原が九天と出会ったとき、「荒廃する茶畑を何とか救いたい」という思いが芽生え、お茶農家へと転身をとげてゆく。お茶のためならどこまでも!の情熱に圧倒される。
Channel:
「身近にあるお茶の木を探してください」という上原の問いに、体当たりで答えたのが守番匠の石井梨香だった。石井は「古い神社にお茶が多い」という情報をもとに、神功皇后伝説が残る場所に周波数を合わせて片っ端から踏破。みごと、お茶の木を次々と発見していった。
Chain:
お茶を発見したところから、さらにふるさとの歴史を深堀りしていく。石井は香春町の町史に、お茶に関する古い習俗があるのを発見。それを聞いた上原が驚きの声をあげる。上原がかつて訪ねた雲南省トーアン族の風習とそっくりだったのだ。トーアン族には「人はかつてお茶だった」という神話があるという。
宇宙を漫遊する小舟は
茶の魂を乗せて
月日と満天の星と化して
生きとし生けるものを生み出した
叙事詩『ダグダガゴライビョー』より
筑豊の町から、海の彼方へ。お茶の声に耳をすますと、古い古い物語が聞こえてきた。
今回の茶レンジャーの活動にみる「七茶の法則」を中野が解説する。どんなことにも編集の可能性がひそんでいる。そのプロセスごと味わいつくすのが編集の醍醐味である。
Change:
お茶の見方が変わったところで、参加者のお茶の物語にも耳を傾ける。あらかじめ用意したお茶は何だったのか。ある参加者は「プレミアムティーを準備したら、茶葉よりもティーバッグのほうがプレミアムだった」と答えて会場を沸かせた。アフター茶会でもお茶の質問が次々と飛び出した。
Chase:
じつは七茶の法則には、プラスワンがある。それはChase(絶対にあきらめずに追いかける)だ。九天玄氣組の編集はまだこれからだ。
そしてツアー後。さらなる茶の物語を求め、ひとり密林へ分け入る茶レンジャー石井の姿があった。
みとま麻里
編集的先達:藤原定家
めんたいエディトン、中洲マリリン。二つの福岡ゆかりの教室名。イシスの九州支所・九天玄氣組の突撃女隊長。その陽気さの裏には知と方法と九州への飽くなき探究心をもつ。着付師をしていたという経歴の持ち主。
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