巣の入口に集結して、何やら相談中のニホンミツバチたち。言葉はなくても、ダンスや触れ合いやそれに基づく現場探索の積み重ねによって、短時間で最良の意思決定に辿り着く。人間はどこで間違ってしまったのだろう。
全国から続々と届くETSの開催レポートで浮かび上がるのは「その地にしかないもの(こと)」だ。
「ワークショップでは日本一のお菓子を出そうと決めていた」と内田文子師範代と宮川大輔師範代は振り返る。
山梨には二十四節気ならぬ甲州八珍果がある。「コウシュウ・ハッチンカ」と読む。ブドウ・ナシ・モモ・カキ・クリ・リンゴ・ザクロ・クルミ。春夏秋冬に対応した代表的な8つの果物を束ねた、山梨にしかないものの一つだ。

甲州八珍果
農業経営コンサルとして全国の農家と共にリアル編集を実践する内田と、甲府市内で創業100年をこえる老舗「春光堂書店」を営みながら、読書会や朝の会でひとびとの交流を日々編集する宮川は、これをどうにか形にしようと自らお題を立てた。
この冬、43[破]を修了したばかりで同じく県内在住の三澤洋美学衆の協力を仰ぎ、「オオトパン」と連携し、パンで表現することを決めた。
オオトパン店主はデザイナーの顔ももち、「素材の近くで暮らしたい」と県外から笛吹市した移住組の一人。「山梨にしかないもの」を大切にし、とりわけ顔の見える生産者から果物を生かした食品開発も手がける発酵エディターだ(いつか編集学校にも入門いただきたい)。
20をこえる打ち合わせと意見交換を経て、旬の柿と葡萄を使ったマスカルポーネサンドが完成した。

紅露柿と葡萄のマスカルポーネサンド
ところで、編集工学の基本の一つに「4つの情報編集のプロセス」がある。あらゆる編集は、情報の「1.収集」「2.関係づけ」「3.構造化」「4.演出」でできているという見方だ。雑誌記事も、プレゼンも、朝起きて会社に行くまでの身支度も、この4プロセスで語ることができる。だからこそ、どこにでもある編集を、ここにしかない菓子づくりとするためにとことん交わし合った。
情報は鮮度も大切だ。八珍果の中から旬の紅露柿(くろ柿)とピオーネ(葡萄)をチョイス。もちろんどちらも県内の顔の見える農家からいただいた(収集)。
パンにとっては果物の水分は大敵でもある。そこでドライフルーツにした。パンとの相性もよく、果実の甘みをぎゅっと凝縮もできる(関係づけ)。
果物とパンのあいだをつなぐのがマスカルポーネクリーム。ほどよい水分がドライフルーツの風味をデコードする。さらに食感も楽しめるよう、柿と相性のよいカカオニブをプラスワンしている(構造化)。
提供のタイミングも気を抜けない。そこで一時間で一冊の本を読み切る読書編集術で集中力を使い果たした15時とする。パンの包み紙には果物の生産者情報を印刷し、三澤学衆がサンドの製作秘話を語った(演出)。

サンドを語る三澤学衆
甲府のツアーテーマは「編集で発見☆たくさんの山梨」。
かくして、山梨にしかないものを、内田・宮川師範代はワークショップで実践した。
上杉公志
編集的先達:パウル・ヒンデミット。前衛音楽の作編曲家で、感門のBGMも手がける。誠実が服をきたような人柄でMr.Honestyと呼ばれる。イシスを代表する細マッチョでトライアスロン出場を目指す。エディスト編集部メンバー。
11/23(日)16~17時:イシスでパリコレ?! 着物ファッションショーを初披露【別典祭】
本の市場、本の劇場、本の祭典、開幕! 豪徳寺・ISIS館本楼にて11月23日、24日、本の風が起こる<別典祭>(べってんさい)。 松岡正剛、曰く「本は歴史であって盗賊だ。本は友人で、宿敵で、恋人である。本は逆上にも共感に […]
第89回感門之盟「遊撃ブックウェア」(2025年9月20日)が終了した。当日に公開された関連記事の総覧をお送りする。 イシス校舎裏の記者修行【89感門】 文:白川雅敏 本を纏う司会2名の晴れ姿 […]
「松岡校長のブックウェア空間を感じて欲しい」鈴木康代[守]学匠メッセージ【89感門】
読書することは編集すること 「読書」については、なかなか続けられない、習慣化が難しい、集中できずにSNSなどの気軽な情報に流されてしまう――そうした声が少なくない。 確かに読書の対象である「本 […]
第88回感門之盟「遊撃ブックウェア」(2025年9月6日)が終了した。当日に公開された関連記事の総覧をお送りする。 なお、今回から、各講座の師範陣及びJUSTライターによる「感門エディストチーム」が始動。多 […]
「松岡正剛の方法にあやかる」とは?ーー55[守]師範陣が実践する「創守座」の場づくり
「ルール」とは一律の縛りではなく、多様な姿をもつものである。イシス編集学校の校長・松岡正剛は、ラグビーにおけるオフサイドの編集性を高く評価していた一方で、「臭いものに蓋」式の昨今のコンプライアンスのあり方を「つまらない」 […]
コメント
1~3件/3件
2025-12-16
巣の入口に集結して、何やら相談中のニホンミツバチたち。言葉はなくても、ダンスや触れ合いやそれに基づく現場探索の積み重ねによって、短時間で最良の意思決定に辿り着く。人間はどこで間違ってしまったのだろう。
2025-12-10
マンガにおける短詩系文学といえば四コママンガということになるだろう。四コママンガに革命をもたらした最重要人物の一人である相原コージは、そのものズバリ『漫歌』をものした。
2025-12-09
地底国冒険譚の主人公を演じ切った幼虫と灼熱の夏空に飛び立った成虫、その両方の面影を宿すアブラゼミの空蝉。精巧なエンプティボックスに見入っていたら、前脚にテングダニの仲間が付着しているのに気づきました。