◆「何を目指しますか」。北原ひでお師範は師範代に突きつけた。「学衆がやりたいことをやることですか? それとも優勝ですか?」 師範代は答えた。「やりたいことをやって優勝します!」 P1グランプリ優勝を勝ち取ったジャイアン対角線教室のキセキをレポートする最終回。
■「不足」から出発し未知へ
今期のP1グランプリは、前回と異なり、遊刊エディストの紹介記事&応援記事を誰が書いてもいい、ということになった。ジャイアン対角線教室では、師範代が学衆に向かって「書かせてください」と懇願した。普段の教室とは打って変わり、回答(記事)を出すのが師範代、指南をするのが学衆というわけだ。本音をいえば、師範代だって稽古したいし、創文したいのだ。
画像を作成してくれたのは、プランナーの川上鼓太郎さんだ。実は、1回目の汁講の際、「CGイラストを描くのが好き」とウッカリ漏らしたせいで、師範代から「じゃあ、P1グランプリで活躍してもらわないと」と念押しされていたのだ。今回、川上さんのイラストは、ジャイアン対角線教室の大きな武器となった。
応援記事は難航した。その都度、勧学会で諮りつつ最終的に第5稿を採用することになるのだが、学衆からは途中でツッコミが入った。
「いろいろ、楽しんでいらっしゃいますね笑」(石川英昭さん)
バレたか(笑)。P1グランプリは誰が何と言おうと、楽しんだもん勝ちなのだ。
投票結果の発表がある前から、ジャイアン対角線教室は本選に向けて準備を開始していた。石川さんからは、本選プレゼンアイデアが複数寄せられるとともに、第二回ZOOM作戦会議の提案もなされた。音楽教師でもある倉内祐子さんは、「主題歌作りましょう」と動き始めた。
本選のプレゼンで何を担うか。「これならできます!やります!」のコトアゲをお願いしたところ、三浦克枝さんからは弱気な発言が飛び出した。
「私は何もしていない」「時間はありますが、お役にたてない気がします」
教室の仲間が奮闘しているのを見て、気後れする気持ちはわかる。稽古の途中、仲間の回答を読んで、怯んだり、卑下したという経験は誰もが持つ。だがここからが本番だ。見つけた「不足」が、次に向かうエンジンになるからだ。
三浦さんは最後にこう付け加えていた。
(私にあるのは)ここに発信する勇気だけです。
この勇気のコトアゲこそ、場を動かす魔法だ。三浦さんのひと言が、ジャイアン対角線教室をさらに加速させたことに、本人は気づいていない。
8月26日に予選1位突破の知らせが入った。だが思いのほか、教室での喜びの声は少なかった。8月9日の時点ですでに、本選を見据えていたからである。
27日にZOOMで行われた第2回作戦会議(兼第3回汁講)でも、笑顔はなかった。本選でどうするか。時間はなかった。
作戦会議では以下のことが確認された。それぞれのロールとツール。具体――部分をどう見せるか。
作戦会議のあと、個々人が猛スピードで駆け出した。
川上さんは、具体を見せるべく、画像作りに励んだ。弱気の毛虫から脱皮した三浦さんは、持ち前のスキルを生かし、オリジナルグッズ作りに励んだ。由水充さんは、茶人のキャラでの登場を所望。「イルマロゴの型をしためがねフレームを簡単に作ってみてキャラ変に小道具とします」と踏み込んでみせた。石川さんは、次世代ゲーム研究所長のキャラを設定し、紙芝居で博物館を説明するというアナログとハイパーの融合に打って出た。倉内さんは、モヤイの声を希望。「モヤイ像の悲哀を表現したい」と台詞の推敲を重ねた。北原ひでお師範は、当日、本楼に出現させるモヤイの製作を買って出てくれた。皆、誰かに言われたからではなかった。
それぞれの「不足」から創発したアイデア=部分は、重なり合ってひとつとなった。
このあと、自分たちだけのリハ、学林局も交えてのリハ、と2度のリハを経て本選に臨んだのだが、ジャイアン対角線教室のひと夏の物語としては、あとは結果――最後の一行を書き加えるだけだった。
それがどんな一行で閉じられようとも、誰もが胸を張ったであろう。だが優勝を疑っていた学衆はひとりもいなかった。
本選終了後、勧学会は喜びの声で溢れた。
「角山師範代がガッツポーズしてて、とても嬉しかったです。それぞれの得意分野で東京イルマニア博物館が形作られ、審査員に響き、視聴者に選ばれたハイパーミュージアムを一緒に創れて、編集稽古の最後に良い体験が出来ました」(川上さん)
「私もプレゼンに見入ってしまいました。ひいき目かもしれませんが、うちの教室がダンゼンでした!」(三浦さん)
「優勝はとっても嬉しい反面、これでみなさんとの相互編集の旅、ひと夏の編集祭り、が終わってしまうなぁと少し、しんみり、しております。。。」(石川さん)
「夏の祭りの終わり。最後に一緒にあれやこれやと相談しながらできたことが、思い出になりました」(倉内さん)
「審査員から指摘された不足を取り込みつつ、現実のプランニングに流し込んでいければとも思います。ダンゼンを創るこれからの旅を意気揚々と進みたいものですね」(由水さん)
ダンゼンに向かう編集の旅は、まだまだ続く。(完/全3回)
※アイキャッチイラスト(川上鼓太郎・作)は、入間の「笹井堰」に浮かぶオブジェ「新橋SL」。
角山祥道
編集的先達:藤井聡太。「松岡正剛と同じ土俵に立つ」と宣言。花伝所では常に先頭を走り感門では代表挨拶。師範代登板と同時にエディストで連載を始めた前代未聞のプロライター。ISISをさらに複雑系(うずうず)にする異端児。角山が指南する「俺の編集力チェック(無料)」受付中。https://qe.isis.ne.jp/index/kakuyama
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