マンガに限った話ではないが、「バカ」をめでる文化というものがある。
猪突猛進型の「バカ」が暴走するマンガといえば、この作品。市川マサ「バカビリーバー」。とにかく、あまりにもバカすぎて爽快。
https://yanmaga.jp/comics/
九天玄氣組は20周年を迎えた。
その目前で松岡正剛校長は彼岸へ渡られた。ともに20周年を祝うつもりが、1周忌の追悼をかねた周年企画を立てることになった。
思い返すのは、2021年10月1日の夜。九州を「本の島」に見立てる「九州本島」構想キックオフのためのZoomミーティングを開き、九天組員らとともに松岡正剛校長にアドバイスを求めたときのこと。
3時間以上に及ぶミーティングの終盤、九天玄氣組組長の中野由紀昌は「最後に教えていただきたいことがあります」と尋ねた。
中野組長「はじめから、九州をえぐってやろう、という構えは必要ですか?」
松岡校長「そうじゃない。だれか1人が〈ふにゅふにゅ〉はじめること。えぐるというのは、よくぞそこまでやるな、と思わせることですよ(笑)」
確かに九天玄氣組は〈ふにゅふにゅ〉と始まった地域支所だった。〈ふにゅふにゅ〉と集まり、〈ふにゅふにゅ〉と交流し、〈ふにゅふにゅ〉と活動してきた。気がつけば20年だ。
〈ふにゅふにゅ〉とは、つねに柔らかにしなやかに蠢き続ける状態のことだと捉えている。
20周年の企画書の冒頭に掲げた「目指す方向」はこうだ。
◎隅々までうごめく編集状態を起こす
◎終わったあとも渦を巻き続ける
◎学内と学外をまぜる装置になる
つまり企画を実施すればおしまい、物を作っておしまい、ではない。
その先の「状態」を生む装置になること。〈ふにゅふにゅ〉の編集なのだ。
20周年企画は2025年4月からスタートした。5月には編集学校の有志(多読アレゴリア、離の火元組、千離衆、松丸本舗ブックショップエディター)に声をかけ「九州の千夜千冊」1000冊ブックナビのための選書プロジェクトをスタート。松岡正剛事務所に協力を得て、松岡正剛さんと縁のある33名のスペシャリストたちにも「わたしの九州一冊」選書への協力を呼びかけた。総勢80名以上が、この本に携わったことになる。
8月には書籍刊行やイベント実施に必要な資金集めのために、クラウドファンディングで支援を募った。すべて初めてのチャレンジだ。
なにしろ1000冊の選書である。選ぶだけでなく原稿も書かなければならない。書籍制作(DTP)も組長が担当したが、スケジュールは悲劇的にずれ込んだために、数ヶ月間、ほぼ不眠不休で取り組むことに。組員も臨戦体勢で臨んだ。九天玄氣組はまるで火だるま状態。その甲斐あって(!?)、予定通り10月末に書籍Qten Genki Book『九』を限定1000部で刊行することができた。ずっしりと重い一冊だ。
手にした読者から驚きの声が続々と届きはじめる。「わたしの九州一冊」選書に協力いただいたゲストの方々からも感想が届く(一部ご紹介します)。
◎今福龍太さん(文化人類学者)
「熱気と遊び心と読書の幸福感とがないまぜになった喜ばしきセイゴウ精神のブレンド本、嬉しく拝受しました。絢爛豪華、読みごたえたっぷりですね」
◎津田一郎さん(数理科学者)
「色々と工夫が凝らされていて、レイアウト、図版も素晴らしく、永らく楽しめる一冊をいただき感謝申し上げます」
◎能勢伊勢雄さん(PEPPERLAND)
「表紙のイメージは『遊』を思わせました。能勢の本棚の『遊』のほとりに並べさせていただきます」
◎中村昇さん(哲学研究者)
「素晴らしい!ゆっくり拝読します。昔日、最新号の『遊』を手にしたときのような気持ちです」
◎佐藤清靖さん(さふじ総合出版研究所 代表)
「本当に素晴らしいご本ですね。多彩な執筆者、素敵で斬新な造本と装幀。なんだか松岡さんを彷彿とさせますね」
◎木村 元さん(アルテスパブリッシング代表)
「たいへん充実した内容ですね。感嘆しながらページを繰っております」
◎湯浅浩史さん(進化生物学研究所理事長・所長)
「ネットの時代に争うような活動が漲り、びっしりと埋め尽くされた編集に昔の「遊」を思い出しました。松岡さんも御存命なら、さぞかし喜んでくれたでしょう」
◎竹下隆史さん(ネットワンシステムズ代表取締役社長)
「本は大変素晴らしく、興味深く拝読いたしました」
◎今井秀実さん(呉式太極拳 順展会)
「本の体裁と編集に松岡先生の面影と教えが立ち上がり、薫陶の声が響いてきました」
言い換えれば、いずれも〈よくぞここまでやるな〉と受け取ってよいのではないか。
オブジェマガジン『遊』と同じB5サイズ、256ページ。完全なる自費出版だ。曼名伽組組長の小島伸吾さんによる「ひょうたん世界」イラストが表紙を飾った。
書籍『九』は九天玄氣組ホームページで購入可能(2025年12月末迄)
書籍刊行後もひと息つくことはできない。
刊行記念イベントとして11月2日、福岡市で「千夜千冊から九州を読み解く~地域を活性化する“郷読”のすすめ~」トークセッションを開催するからだ。
1部イベント冒頭に上映したオープニング動画。クリックするとYoutubeで視聴できます(約3分)
冒頭15分ほど「九天玄氣組の本遊び」をスライドで初披露。松岡正剛校長に送った年賀作品や本にちなんだ企画を紹介した。
1部のイベントでは、東京からイシス編集学校の田中優子学長、福岡の出版社・石風社の福元満治さんをお招きしてトークセッションを実施した。田中学長と福元さんは30年ほど前に会ったものの、じっくり話すのは初めてという。
しかし、二人には共通するキーマンがいる。石牟礼道子、渡辺京二、甲斐大策である。3名とも松岡校長が注目し、千夜千冊で著書を取り上げた九州ゆかりの粋人である。そのうち、石牟礼道子『はにかみの国』、甲斐大策『餃子ロード』を刊行した版元こそ、福元さんの石風社である。
石牟礼道子さん、渡辺京二さん、甲斐大策さん、中村哲さんと密に接してきた福元さん。田中学長は「現場で彼らと過ごした福元さんのお話は大変貴重です」と讃えた。
二人は中村哲医師とも縁が深い(2019年12月4日にアフガニスタンのジャラーラーバードにて武装勢力に銃撃され死去)。福元さんはペシャワール会の理事であり、田中学長がペシャワール会に入ったのも、30年前に福元さんと会ったときに話を聞いたのがきっかけだという。
意外な組み合わせかもしれないが、千夜千冊を核として「郷読(きょうどく)」してきた九天玄氣組にとっては必然の対談であった。田中学長も「まさか九州で、福元さんと石牟礼道子さんや渡辺京二さん、中村哲さんのお話をするとは思ってもみなかった」と嬉しそうに話してくださった。これはまちがいなく松岡正剛さんの千夜千冊が結んだ縁である。
後日、遠方よりイベントに駆けつけた二人の学匠からも感想が届いた。九天20th企画全体の編集意図を立体的に汲み取ってくださっていた。
●鈴木康代さん:[守]学匠(from 福島)
「九天の冊子編集からイベントまでほんと大変だったと思いますが、とてもよかったです!九天メンバーもイキイキしていて。今、いろんなところで九天イベントの話をしています」
●原田淳子さん:[破]学匠(from 東京)
「福元さんの語る石牟礼さんや中村哲さんの面影が、九州という方法を立ち上がらせる感じがしました。表面ではなく、根っこでつきあい、根っこから変えようとするパワーですね。『九』もそのような視点で、なんども読みます」
ほかにも手応えのある言葉が、今も九天玄氣組のもとに届いている。
左から学長の田中優子さん、石風社の福元満治さん、九天玄氣組組長の中野由紀昌
春からスタートした20周年企画も、ようやく一区切りだ。
最初に掲げた3つの目的は、達成したのではないか。
◎隅々までうごめく編集状態を起こす
◎終わったあとも渦を巻き続ける
◎学内と学外をまぜる装置になる
セイゴオ校長、九天玄氣組は〈ふにゅふにゅ〉をやり尽くしましたよ!
※夜の2部では会場を変え、松岡正剛さんをしのぶ会「玄氣玄影のつどい」を開いた。1部イベントのテーマが「九州」なら、2部は「九天玄氣組」カラー爆発のイベントだ。詳しくはこちらをどうぞ。
【特報】ピアニスト・山下有子さん、九天玄氣組のイベントをラジオで語る!
ピアニスト・山下有子さんが京都から駆けつけ、九天玄氣組イベント(1部・2部)に参加してくださいました。2部ではサプライズゲストとしてミニライブも!20年の記録映像に合わせて松岡校長の好きだった曲を披露してくださいました。
イベントの感想をご自身のラジオ番組で、2週にわたり語ってくださいます。ぜひご視聴ください!
radikoのタイムフリーで視聴できます。(山下有子さんの記事は2部レポートをどうぞ)
❶11月30日(日)19時~20時
❷12月 7日(日)19時~20時
エフエム京都(アルファステーション)
『アリコピータースレストラン』
https://fm-kyoto.jp/blog/arico_knows_peters_restaurant/
写真:飛永卓哉
中野由紀昌
編集的先達:石牟礼道子。侠気と九州愛あふれる九天玄氣組組長。組員の信頼は厚く、イシスで最も活気ある支所をつくった。個人事務所として黒ひょうたんがシンボルの「瓢箪座」を設立し、九州遊学を続ける。
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2025-11-27
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2025-11-25
道ばた咲く小さな花に歩み寄り、顔を近づけてじっくり観察すると、そこにはたいてい、もっと小さな命がきらめいている。この真っ赤な小粒ちゃんたちは、カベアナタカラダニ。花粉を食べて暮らす平和なヴィランです。
2025-11-18
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