「松岡正剛の多読術・読相術を体得する」がキャッチフレーズの一風変わったブック・スクールであり、ブック・ソサイエティ。それが<多読ジム>だ。今年1月に開講し、2020年4月13日から2期目となる「season02・春」がスタートした。昨季よりスタジオが一つ増え、109人の読衆が集い、さっそく初月の読相術トレーニング「<1>ブッククエスト」が出題された。
多読ジムのカリキュラムは、3つのプログラムで構成されており、「<1>ブッククエスト」のあと、2か月目に「<2>エディション読み」、さらに「<3>三冊筋プレス」が続く。お題の内容を一言でいえば、「ブッククエスト」は毎季配布されるブックリストから好みの本を選び仮想の本棚をつくる。「エディション読み」はまさに『千夜千冊エディション』(角川ソフィア)を共読し、最終月のフィナーレを飾る「三冊筋プレス」では3冊使ってセイゴオ知文術を書く。
season01・冬の三冊筋プレスの選本テーマは「数寄をつなげて広げて」。読衆は自分の好きな書き手や好きなジャンル、自分の趣味などを出発点にして、3冊選ぶ。この3冊を「バーベル本」と呼ぶのだが、これら要約したり、引用を集めたり、著者のプロフィールを創文したりして、最後は編集思考素(三間連結型・三位一体型・二点分岐型・一種合成型)を使って2000字以内で知文していく。
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今回、「多読ジム × 遊刊エディスト コラボ企画」と題して、season01・冬の若干名の読衆にそのエッセイの記事化を依頼した。まだまだ紹介したい秀作はたくさんあるのだが、初企画ということで、小濱有紀子、福澤美穂子、米川青馬、三津田知子、中原洋子、渡會眞澄の6名の作品に厳選した(おまけで代将・金宗代も末席に加わるかもしれない)。
小濱有紀子と米川青馬はそれぞれ、倉橋由美子とカフカという編集的先達の魅力を愛情たっぷりに綴った。恋文のようで清々しい。米川はジムでは多読師範ロールを担い、最近はエディストで「芝居と読書と千の夜」を連載し好評を博している。
三津田知子は、[花]のエディストらしくイシス編集学校と『論語』を交差させる。仁斎、徂徠、白川静を召喚するあたりがツウである。
中原洋子はseason02・春の「スタジオNOTES」の冊師。軽井沢出身のジャズシンガーでもある。宮澤賢治、内なるミューズ、ショスタコーヴィチの見事な三重奏のタイトルは「おれはひとりの修羅なのだ」。
福澤美穂子は、樹木希林の遺作映画の原作『日日是好日』の続篇にあたるエッセイ集『好日日記』を取り上げ、中野美代子『中国の妖怪』、『「氣」で病を癒す』(サンマーク文庫)を「循環する三間連結」でつなぐ。
「夢二の絵から出てきたような柳腰で、謎のメタファーとともにさらっと歯に衣着せぬ発言も言ってのける。常に初心の瑞々しさを失わない少女のような魅力をもち、チャイコフスキーのピアノにも編集にも一途に恋する求道者でもある」と吉村堅樹林頭から評される、福澤らしいソロイになっている。
沖縄に移住し、日本とアジアの来し方行く末を凝視する渡會眞澄は『アジアの思想史脈ー空間思想学の試み』『アジアびとの風姿―環地方学の試み』『憲法9条の思想水脈』という山室信一の三冊だ。伊藤博文を暗殺し、日本ではテロリスト、韓半島では英雄として、極端な二つの顔をもつ安重根が「仁弱」によってフラジャイル・ピースを説いたことなどなどを粛々と描写する。この静かな叙述がむしろ胸を打つ。『佐藤優の沖縄評論』(光文社)ではないけれど、いつかエディストで沖縄三冊を連載してほしい。
最後に、意匠が光るアイキャッチは、編集工学研究所のデザイナー穂積晴明が制作した。ダンベルを擬いた「冊」の字、編集思考素のアイコン、ページ数をあらわす「Pg」ゲージ、タイプフェイスやフォントサイズなど、細部までこだわってつくり込んでいる。
公開スケジュールは以下の通り。どうぞお楽しみに。
金 宗 代 QUIM JONG DAE
編集的先達:水木しげる
最年少《典離》以来、幻のNARASIA3、近大DONDEN、多読ジム、KADOKAWAエディットタウンと数々のプロジェクトを牽引。先鋭的な編集センスをもつエディスト副編集長。
photo: yukari goto
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