三軒茶屋の住宅街の一角に建つごくごく普通の一軒家。門をくぐると、印象が一変する。真っ赤な襖に、版画に囲まれた板張りのリビング。江野澤由美師範代の運営するこのサロンで、「色」を切り口に編集術の力を体感するエディットツアーが開かれた。
今ここにいる部屋の眺めもちょっと色を意識するだけで見え方が変わる。例えば、床、テーブル、壁。それぞれが同じ木製だとしても、それぞれの木の色の違いにだんだん気が付いてくる。
あるいは「おいしそうな色」というフィルターをかければ、ドアはチョコレートに変身。編集術を使うとガラリと見方がカワル。見方がカワルと違いがワカル。5名の参加メンバーは「たしかに!」「それもあったか!」と目からウロコの様子だ。
次の稽古では部屋の中の色から「サマースイーツ」を連想し、そのスイーツから3色を取り出す。詩歌に遊ぶ私塾を開いているダンディな男性は、時間軸で浮かび上がるグラデーションを発見した。
かき氷の真っ白な氷、仕上げの苺色の鮮やかなシロップ、食べて溶けた水彩の薄紅色。今度はその3色でファッション塗り絵を染めていく。ベースの白と薄紅色の洋服に、シロップの苺色はアクセントのボタンや靴紐の色に置きかわる。
ぼんやりと眺めているだけでは見えなかった情報も、捉えなおして関係づけていくうちにお洒落な着こなしアイデアの一丁あがり。編集のチャンスはふだんの生活の中に山ほどある。
江野澤由美
編集的先達:堀内誠一。寝る前の香水は欠かさず、そのカラフルな色香で中小企業の社長を骨抜きにするコンサル&プランナー。薔薇は咥えない情熱のフラメンコダンサーでもある。野望は編集スナックのママ。