「物語の本質は広い意味での「紛糾」(complication)である。
その解きほぐしと解決(resolution)である。」
千夜千冊577夜『物語論辞典』より
たとえば、「部屋に入ろうとしたら、ドアノブが無くなっていた。」といったことが起こる。どうしてそんなことが起こったのか? その謎、不可解な事態ははどのように解決されるのか? 物語とは、このように紡がれてゆく。
その一端に触れてほしいと企画した<エディットツアー[破]応用コースの方法に迫る!>。ISISフェスタ「エディットツアースペシャル(ETS)2021春」の一番手として、2月7日(日)に、オンラインで開催された。
今回のナビゲーター:植田フサ子45[破]評匠が、緊張気味の参加者10名をエスコートする。「自己紹介のために、本を1冊用意して下さい。1分で!」の声に、全員が本を取りに走る…あっという間に戻ってくる…40秒かかっていない。本をよすがに、自分の興味や、いま気になっていることを手短に話す。植田の温かな受けとめと、多彩な返球に場がほぐれてゆく。
続いて、この日のメイン、野嶋真帆45[破]師範による「物語編集ワーク」に入る。そこにあった「調和した状態」が破れ、「不調和、紛糾」が起こる。そして「新たな調和」の状態になるのが物語の基本型なのだ。日常の“小さな破れ目”がお題として提示される。
「自分の家の庭に見知らぬ花が咲いている。」
なぜそうなったのか…? そしてどうなるのか…?
参加者は、[守]のお題にあった「IF・THEN型」のアナロジーを駆使し、もっともらしく、かつ面白い、理由や展開を考える。
「植木屋が間違えて植えていった」
「小人の仕事→次の日には小さな花壇ができていた。」
「最近よくくる鳥が運んできた。→好みの庭を作ろうとしている」
いかにもありそうなリアリティのある理由、ファンタジーの世界に遊ぶ展開が次々に披露される。
野嶋は語る。物語はこのように、なにか語りたくなる特異性をはらんだことから始まる。噂が広まるのはそのため。しかしそれが共同体のなかで流通するには「語る価値」と「語り方」が必要である。[破]ではそのための「型」を学ぶのだ。
最初にかかげた千夜千冊577夜『物語論辞典』に戻ろう。物語の本質は「紛糾」であり「その解きほぐしと解決」であると聞けば、実にシンプルで簡単そうだ。しかし、そこにはたくさんの階層や部分や要素があり、それらを関係づけるたくさんの手法があると続く。[破]では、そこを実践してゆく。
一人ではできない。師範代や仲間の学衆という「読み手・聞き手」がいてこそ、物語の「作り手・語り部」となることができる。人類が古代から駆使しつづけてきた物語という方法を、実践できるのが[破]。物語編集は、また文体編集でありクロニクル編集であり、プランニング編集でもある。あなたの持っているイメージや、まだ言葉になっていないメッセージを、物語というカタチにする方法を手にしてほしい。
参加者の進破への期待が高まった様子がZoomの画面ごしに伝わってきた。4月には、今日のメンバーと46[破]で再会できるだろう。
原田淳子
編集的先達:若桑みどり。姿勢が良すぎる、筋が通りすぎている破二代目学匠。優雅な音楽や舞台には恋慕を、高貴な文章や言葉に敬意を。かつて仕事で世にでる新刊すべてに目を通していた言語明晰な編集目利き。
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