松岡正剛は語った、「21世紀は、主題ではなく、方法の時代である」と。内海太陽の言い方を借りれば「世界はコンテンツとプロセスのふたつに分けられる」
プロセス・ベース教室の名を背負い、39[守]師範代に登板した内海は抱負をこう語った。「本当に価値あるコンテンツを生み出すために、世界の半分であるプロセスにアプローチしてみたい」
内海は、兵庫姫路で水処理プラントの設計製造会社を営む経営者だ。百戦錬磨、バリバリに磨き抜かれたビジネスマンという出で立ちの内海は、26[花]入伝式でも際立っていた。パッとメモを取り、サッとコンパイルをしてみせる。その機敏な動きは人目をひいた。しかし、イシスでの歩みが順調なわけではなかった。
2006年に15[守]で入門。その後、10年以上イシスを離れる。36[破]で思い立ったように復帰。そのブランクについて内海は「本当に追求したかったことに気づくための、ながめの道草」と説明する。
真のターゲットに向けて、じっと時を待つ。そして機がやってくれば、即座に迎えにいく。内海の趣味は合気道。11年の「せぬ隙」を経て師範代を務めあげると、持ち前のロジカルな思考力に加え、アナロジカルな3Aも開花。世界の半分にアプローチするという抱負を鮮やかに体現してみせたのだ。内海が袴姿で感門表を手渡したのは、2017年夏。前年の天皇陛下の「お言葉」を受け、6月、退位を実現する特例法が成立。平成の終わりが見えてくるころだった。
43[破]合氣プロセス教室の師範代を終えたあとも、内海は稽古を続ける。稽古とは「古」そのものに学び、そのプロセスを習熟すること。自身に課したのは「日本を知る」というお題だった。秋田から小豆島まで全国に出張する内海は、作業着をまとって現場に立つも鞄には『正法眼蔵』を忍ばせる。出張のあいまに古神道の勉強会に通い、神社や八百万の神々を学んだ。内海は「イシスは『あらわるる世界』に強く、古神道は『かくるる世』に鋭い。さらにその根本原理には、量子力学と生命科学が潜んでいるはず」と睨み、『擬』や『日本という方法』を二度三度読み返しているという。
自身の稽古に打ち込むいっぽう、フットワークも軽く、関係性を大事にするのも内海の真骨頂。頼もしくはずみがあると評判の内海は、共読ナビゲーターを務めたほか、43[守]では近畿大学の受講生をサポートする「近大番」に抜擢。その縁で、師範山根尚子とのエディットツアーにも初参画。点と点をつなぐように、人との関係をむすび、その過程を慈しんできた。
その所以を問うと、「今までずっと自分に必死だったぶん、他者にゆだね、他力を信じるようになったんです」と高僧のようにはにかんだ。