「マンガのスコア」ライターをやっております堀江です。
今回「『遊刊エディスト』記事から、選りすぐりの[ピックアップリスト]を作成せよ」とのお題を、編集部より頂戴いたしました。
当サイト内では、そこはかとなくアウェー感を醸しだしている「マンガのスコア」ですが、こう見えてワタクシ、「遊刊エディスト」のヘヴィーリーダーなんです。
ライターデビューこそ遅かったですが、サイト立ち上げ時からメンバーに加えさせていただいていたこともあり、一応、エディスト記事は全部目を通しています(…て、自慢するほどでもないですが)。
というわけで、この無謀とも思われるお題も、やってやれないことはない!
と思い、やってみました。
題して「サブカル魂をくすぐる7選」です。
【Playlist】サブカル魂をくすぐる7選◇堀江純一 選
①【三冊筋プレス】編集的 “異神” 像 「あんごすてんのう」から「GOZ」へ(金宗代)
③髪棚の三冊 vol.1-1「たくさんの私」と「なめらかな自分」
⑤【三冊筋プレス】生きる意味のなさを覗き込むための笑い(米川青馬)
①【三冊筋プレス】編集的 “異神” 像 「あんごすてんのう」から「GOZ」へ(金宗代)
金宗代代将の三冊筋プレスの記事は、毎回、質量ともに、ものすごく力が入っていて、「いったい私は何を読まされているんだ」っていうぐらい頭がクラクラしますが、その中でも、この記事は凄かったです。モーラの神が舞い降りて、グルーヴしまくっていますね。
また「黄色い本 セイゴオ・Mという名の先生」の回も、高野文子から始まり、モロッコでバックパッカーをしていた頃の思い出にいたるまで、いろんな思いが詰まった濃密編集でした。
そして「ツイッター朱子学」では、おそらく「エディスト」全記事の中でも最長の1万字超え!
この長大さを乗り切るにあたり、ツイッターになぞらえたアフォリズム集にしたのが目からうろこのアイディアでした。
金代将は私の「マンガのスコア」の担当編集でもあるのですが、最近「ちょっと長いですね」とは言われなくなりました(笑)。
「遊刊エディスト」の中でも、ちょっと面白いのが、「DUST」のカテゴリー。ふつうなら記事にならないような雑多なトピックを、サラッとすくい取って、クスッと笑えるショート記事にしてしまう。この形式を作り上げて初期の「エディスト」を牽引していたのが、「DUST王」こと井ノ上シーザーさんでした。
井ノ上さんの記事は、私も愛読していたのですが、この名物カテゴリーを掻き乱してブチ壊しにしてしまった犯人は他ならぬ私です(汗)。
しかしあの連載も、いずれ終わりますのでご勘弁を。また、あの楽しいDUST記事が戻ってくることを楽しみにしております。
こちらの記事は200字ちょっとの短いコラム。4つのパラグラフがきれいに起承転結を構成していて見事です。
③髪棚の三冊 vol.1-1「たくさんの私」と「なめらかな自分」
「遊刊エディスト」が創刊されて最初のインパクトとなったのが、この連載記事でした。今も「週刊花目付」シリーズなどで大活躍中のエディストライター深谷もと佳さんの最初の連載「髪棚の三冊」シリーズ。
最初の頃は、「こんな記事だったら私もやってみたいな」と、うらやましく見ていたのですが、連載が進むにつれ「いや、とてもかなわない」と兜を脱ぎました。
「髪棚の三冊」シリーズから間を置かずして始まった太田香保総匠の「OTASIS」シリーズが「NEST」のカラーを決定づけました。小倉加奈子さんの「おしゃべり病理医」シリーズと並ぶじっくり読ませるタイプのロングエッセイ。
サブカル好きとしてはテリー・ギリアムを入口とした「ドン・キホーテ」紹介がツボでした。
「ロスト・イン・ラマンチャ」を観た者は誰でも思う。「ああ、もう絶対に完成しないパターンだ。」
それが完成しちゃったのだから驚きです。決してこの世に存在しないはずの映画を観させられているような奇妙な体験は、まさに現実と妄想の区別がつかなくなったドン・キホーテの内面世界そのものでした。
⑤【三冊筋プレス】生きる意味のなさを覗き込むための笑い(米川青馬)
「【三冊筋プレス】カフカ、絶望を笑う」の記事で登場されたときは、「この米川さんて人、凄いな」と鮮烈な印象を覚えましたが、その後まもなくして始まった「芝居と読書と千の夜」には圧倒されました。私の連載が始まったのも、ほぼ同じ時期だったので、正直、脅威でもありました。
紹介されているお芝居の中でも視聴可能なものは、だいたいチェックしていますが、全くハズレがありません。自分の知らないところに凄い人はいっぱいいるのだな、と毎回、感心させられます。
最近、投稿されたこちらの記事は、「あらら。ホントのことを言っちゃってるよ」と驚きましたが、単なる冷笑系のニヒリズムに落っこちてしまわないところが、米川さんの人間力です。
⑥[interview]『うたかたの国』編集者 米山拓矢に聞くうたの未来【い】古文嫌いの少年時代
あの名著『うたかたの国』編集のバックボーンには、なんと呉智英が!
実は私も呉智英さんを長らく愛読しておりまして、氏が書評で取り上げた本をノートに書き出したりなんて、米山さんと全く同じことをやってました。
『マンガ狂につける薬』に見られるように、呉智英氏の批評は、固いものと柔らかいもの、一見すると全く無関係に見えるものに対角線を引いていく手際が鮮やかで、「編集」的なものを感じさせますね。
建築業界からキュレーターに転身された「すっぴんロケット」岡部三知代さんが、ご自身の手がけられたギャラリーを中心に紹介していくシリーズ。
特にこちらの作品展は「二人の」ってところに心惹かれて手帳にメモっていたのですが、コロナ禍の影響で巡回展の会期が延期され、記事が出てから地元の美術館で見られるようになるまで一年半も待たされてしまいました。それも今となってはいい思い出です。
<おまけ>
ところで、先日の年頭対談では、後藤さんから「レジェンド50のなかに少女漫画が少ないのかもしれないですよね」というご意見をいただきました。
個人的には、ずいぶん少女マンガを描いたような気がしていたのですが、女性目線からすると「全然足りてない!」ということがわかりました。
その不足を補完するべく、女性陣を中心にした井戸端トーク、題して「少女マンガのスコア」(仮)の企画を提議したく思います(^ o ^)/
堀江純一
編集的先達:永井均。十離で典離を受賞。近大DONDENでは、徹底した網羅力を活かし、Legendトピアを担当した。かつてマンガ家を目指していたこともある経歴の持主。画力を活かした輪読座の図象では周囲を瞠目させている。
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