【多読ジム×工作舎】第二弾は虫、蟲、ムッシッシ! 出版コラボ企画「エディストチャレンジ」

2022/06/11(土)10:58
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 多読ジムが出版社とコラボする「”版元読み”エディストチャレンジ」の第二弾の詳細が決定しました。コラボ出版社は「セイゴオ尽くし」を掲げる来シーズン「多読ジムSeason11・夏」にふさわしく、イシス編集学校・松岡正剛校長の古巣「工作舎」、気になるトレーニングブックは三冊筋のテーマ「虫愛づる」に寄せて、工作舎の田辺澄江さんが「推しの三冊」を選書してくれました。

 

「【予告!】必冊・セイゴオ尽くし 多読ジム season11・夏」のアイキャッチ画像。

デザイン:穂積晴明

 

 トレーニングブックを紹介する前に、ここで簡単に「エディストチャレンジ」の企画内容をおさらいしておきましょう。

 エディストチャレンジは、三冊の本をつないでエッセイを書く「三冊筋プレス」の”オプションお題”という位置づけで出題されます。多読ジム受講者なら誰でも参加することができ、参加者は三冊筋プレスの三冊のうち一冊以上をトレーニングブックから選ぶことが参加条件となります。

 エディストチャレンジに出品されたエッセイの中で、佳作として選ばれた作品は、イシス編集学校のウェブメディア「遊刊エディスト」に掲載されるとともに、出版社のSNS等でも取り上げられるなどプチアワードがついています。

 

出版社コラボ第一弾「多読ジム×太田出版」(Season10・春」)のアイキャッチ。

デザイン:穂積晴明

 

 では、今回のトレーニングブックのご紹介です。田辺さんが寄稿してくださった解説文とともにご覧ください。

 

桃山鈴子作品集『わたしはイモムシ』

本体3800円+税
B5判変型/上製 148頁 2021年6月刊

黒地に縞模様のマントを羽織った異星人のよう、ヒメノコメエダシャクの幼虫らしいけど「イモムシってこんなかたち!?」と思う方へ。これは“アジのひらき”ならぬ“イモムシのひらき”なのです。画家が目の前のイモムシの全身をくまなく虫眼鏡で観察しながら点描していくため、オビカレハもナミアゲハの幼虫もみな開かれて登場します。こうして、体長わずか30~50㎜に展開しているミクロコスモスが顕現します。
飼育観察しながら描く画家のアトリエは、いわば大きな虫かご。卵、孵化、蛹化、羽化という生命の営みに、許されるかぎり寄り添うために。


福井栄一『蟲虫双紙』(むしむしそうし)――ちいさなイノチのファンタジア――』
本体1700円+税
B6判変型/丸フランス装 218頁 2022年4月刊

カバーには大正時代の絵葉書「虫売り」。その看板の絵文字は松虫・鈴虫・轡虫(くつわむし)と、3番目がちと難しいが、本書を開く前の準備運動になります。無脚、四脚、六脚、多脚の4章立てからもわかるように、本書は「昆虫=ムシ」を超え、蛞蝓(なめくじ)から百足(むかで)までの虫づくし。上方文化評論家と称する著者が、古典文学からの虫にまつわる奇譚を採集、テンポよく現代語訳しています。
それにしても漢字というのは面白い、ジーと眺めていると読めてきたりして・・・蚯蚓、蜉蝣、蟷螂、蜘蛛・・・

 

モーリス.メーテルリンク『ガラス蜘蛛』高尾歩=訳 杉本秀太郎、宮下直=解説

定価 本体1800円+税
四六判/上製 144頁 2008年7月刊

メーテルリンク70歳のとき、「銀色の蜘蛛」との再会をきっかけに幼少期の記憶を辿って一気に書き下ろした博物文学としての一冊。ガラス蜘蛛とはミズグモのこと。天敵の魚類のいない酸素欠乏ぎみの沼などにいて、水中では腹部を空気の泡「クリスタルの潜水服」で覆っているため、水銀の玉のように見えます。食事や休息のための「釣り鐘状のエアドーム」を造るときには、クモらしく吐き出す糸を用います。
驚くべき生きる術の数々。現在では絶滅が危惧されるミズグモですが、NHK『ダーウィンが来た』(2013)では釧路湿原で発見されたミズグモを紹介。宮崎駿監督の短編アニメ『水グモもんもん』(2006)もあります。


 「虫愛づる」にはもってこいのムシ、虫、蟲、です!

 「虫のひらき」に「虫奇譚集」、宮崎駿も偏愛する「ガラス蜘蛛」も加わって、”セイゴオ尽くし”ならぬ、まさに”虫尽くし”の三冊になっています。

 三冊目のメーテルリンクは運命哲学の思想家として千夜千冊でも取り上げられています。代将もメーテルリンクフリークを自称し、三冊筋プレス「青の三冊」(season09・冬)で『青い鳥』や『花の知恵』について書きました。

 ちなみに工作舎からは『ガラス蜘蛛』『花の知恵』のほか、メーテルリンクの博物文学と冠して『蜜蜂の生活』『蟻の生活』『白蟻の生活』の昆虫三部作も刊行されています。こちらもどうぞ読み逃しなく。

 

 千夜千冊の愛読者は田辺澄江さんのこともよくご存知のことでしょう。ロバート・キャパ『ちょっとピンぼけ』(148夜)、野尻抱影『日本の星』(348夜)、宮田登『ヒメの民俗学』(537夜)、実野恒久『乾電池あそび』(619夜)、ロレンス・ダレル『アレキサンドリア四重奏』(745夜)、ラスロー・モホリ=ナギ『絵画・写真・映画』(1217夜)、吉福伸逸『世界の中にありながら世界に属さない』(1680夜)、ゴットフリート・ベーム『図像の哲学』(1784夜)など数々の千夜にそのお名前が登場し、そこで松岡校長は田辺さんとの出会いや思い出をなつかしそうに綴っています。

 

1974年当時、松岡校長が桑沢デザイン研究所で生徒に教えている様子。

千夜千冊1784夜 『図像の哲学』より。


 それによると、校長は28歳のとき、桑沢デザイン研究所の写真科の講師を任され、そのとき初めて人前で何かを教えるということになったのですが、そのセンセイ初挑戦の授業に写真科の田辺さん、グラフィックデザイン科の木村久美子月匠や戸田ツトムさんが出席していて、そこでの出会いをきっかけにして、田辺さん含め桑沢の学生たちが工作舎で編集やデザインの仕事をするようになったのだそうです。校長は田辺さんたちが「『遊』の最初の黄金期ともいうべきをつくってくれた」とも記しています。

 

雑誌「遊」の巻末広告でモデルをつとめる田辺澄江さん(左)と木村久美子月匠(右)。

千夜千冊1784夜 『図像の哲学』より。

 

 それにしても、桑沢デザイン研究所の写真科ではいったいどんな授業が繰り広げられたのでしょうか。また、その様子は学生たちの目にはどんなふうに映ったのか。伝説の授業の真相はいずれ田辺さんや木村月匠に取材を申し込みたいと目論んでおります。その際は、田辺さんがいかにして編集者を志すことになり、当時の雑誌「遊」そして工作舎の編集者とはどんな仕事だったのかについても明らかになることでしょう…。

 本づくりには編集者、エディターが不可欠です。にもかかわらず、編集者の顔やその姿、プロフィールや仕事のルル三条(ルール・ロール・ツール)はなかなかオモテにあらわれてはきません。謎に包まれています。雲隠れしています。この出版コラボ企画では「遊刊エディスト」を通じて、そんな「編集者の謎」にも迫っていきたいと考えています。ムッシッシ!

 

Info


◉多読ジム season11・夏 三冊筋プレス「”版元コラボ”エディストチャレンジ」

 

∈コラボ出版社

 工作舎

 

∈トレーニングブック

 ◇桃山鈴子作品集『わたしはイモムシ』

 ◇福井栄一『蟲虫双紙』(むしむしそうし)――ちいさなイノチのファンタジア――』

 ◇モーリス.メーテルリンク『ガラス蜘蛛』高尾歩=訳 杉本秀太郎、宮下直=解説

 

∈参加資格

 「多読ジムseason11・夏」受講者

 

∈DESIGN the eye-catching image
 穂積晴明

  • 金 宗 代 QUIM JONG DAE

    編集的先達:水木しげる
    最年少《典離》以来、幻のNARASIA3、近大DONDEN、多読ジム、KADOKAWAエディットタウンと数々のプロジェクトを牽引。先鋭的な編集センスをもつエディスト副編集長。
    photo: yukari goto

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