え?さだまさし? 渋谷菜穂子のX’mas暴走Eツアー

2019/12/21(土)20:12
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 おしえてーくーだーさいー 誰がくるのですか? これでいいのですか?
 大丈夫なんですか? 校長はOKですか? おしえてーくーだーさいー(『防人の歌』のメロディーで)。
 
 クリスマス直前という与件に、自分がただただ大好きだというさだまさしを加えて、渋谷菜穂子師範代はエディットツアーを組み立てた。BGMは「北の国から」、お菓子はさだまさしの出身の長崎カステラ。本題から外れた準備は万端である。そんな無謀なエディットツアーに参加した勇気ある参加者は5名。
 
 周囲の心配はどこ吹く長崎BREEZE。飄々とした渋谷が自信満々に用意した編集ワークは「ルル3条」。企画やゲームを組み立てるために、ルール(規則)・ロール(役割)・ツール(道具)を三位一体で動かしていく即効性の高い編集術である。その例示として渋谷が持ち出したのが、やはり「さだまさし」。映画『長江』で負った35億の借金を返済するために、債務者というロールになり、借金を返すというルールで、コンサートというツールを使う。年末TV番組「今夜も生でさだまさし」のルル3条は、投稿ハガキ、生放送のルールで、自らはDJで歌手、視聴者と設えのお絵かきというロールを用意し、ハガキ、音楽、ホワイトボードのツールでTVなのにラジオ番組風に仕立て上げた。渋谷が毎年行くというクリスマスディナーの握手コーナーでは、自らの握手は一度だけというルール、ロール。そこに2018年から新たにツールの音楽を「北の国から」にするという編集を加えたことで、歌詞を忘れたり、握手を終えるタイミングを気にしなくてよくなる、というルル3条編集を行った。渋谷曰く、「まさしはルル3条の達人」。とことん、まさしにこだわって見せた。
 
 参加者へのお題は「どこにもないクリスマスイベント」のルル3条。参加者のプレゼンの一つは「捨ててたまるかクリスマス」。穴の空いた靴下をツールに使い、ロールはそれを繕う針子、ルールは靴下の穴を塞いだ人にプレゼントが贈られるというもの。そのほかにも「子どもがサンタのクリスマス」「営業に行かないクリスマス」「違う日にやるクリスマス」「宗教ごとにコスプレするクリスマス」といくつものどこにもないクリスマスイベントがルル3条をつかって出来上がった。渋谷は、自らのまさしフェチという与件を使い、参加者の編集力を引き出してみせたのだ。
 
 あ〜あー あああああーあ ああーあああああー(「北の国から」のBGM)。
 拝啓、菜穂子ちゃん。ぼくはこのエディットツアーがとてもうまくいかないと思っていたわけで。
 でも菜穂子ちゃんは、ぼくが思うよりずっと上手にナビゲートしてみせたわけで。
 
 最後に、松岡校長のスカジャンを羽織り、渋谷菜穂子師範代はしてやったりの会心の笑みを浮かべた。
 
  • 吉村堅樹

    僧侶で神父。塾講師でスナックホスト。ガードマンで映画助監督。介護ヘルパーでゲームデバッガー。節操ない転職の果て辿り着いた編集学校。揺らぐことないイシス愛が買われて、2012年から林頭に。

コメント

1~3件/3件

堀江純一

2025-10-02

何の前触れもなく突如、虚空に出現する「月人」たち。その姿は涅槃来迎図を思わせるが、その振る舞いは破壊神そのもの。不定期に現れる、この”使徒襲来”に立ち向かうのは28体の宝石たち…。
『虫と歌』『25時のバカンス』などで目利きのマンガ読みたちをうならせた市川春子が王道バトルもの(?)を描いてみたら、とんでもないことになってしまった!
作者自らが手掛けたホログラム装丁があまりにも美しい。写真ではちょっとわかりにくいか。ぜひ現物を手に取ってほしい。
(市川春子『宝石の国』講談社)

川邊透

2025-09-30

♀を巡って壮絶バトルを繰り広げるオンブバッタの♂たち。♀のほうは淡々と、リングのマットに成りきっている。
日を追うごとに活気づく昆虫たちの秋季興行は、今この瞬間にも、あらゆる片隅で無数に決行されている。

若林牧子

2025-09-24

初恋はレモンの味と言われるが、パッションフルーツほど魅惑の芳香と酸味は他にはない(と思っている)。極上の恋の味かも。「情熱」的なフルーツだと思いきや、トケイソウの仲間なのに十字架を背負った果物なのだ。謎めきは果肉の構造にも味わいにも現れる。杏仁豆腐の素を果皮に流し込んで果肉をソース代わりに。激旨だ。