発声の先達、赤ん坊や虫や鳥に憑依してボイトレしたくなりました。
写真は、お尻フリフリしながら演奏する全身楽器のミンミンゼミ。思いがけず季節に先を越されたセミの幼虫たちも、そろそろ地表に出てくる頃ですね。

「子どもにこそ編集を!」
イシス編集学校の宿願をともにする編集かあさん(たまにとうさん)たちが、
「編集×子ども」「編集×子育て」を我が子を間近にした視点から語る。
子ども編集ワークの蔵出しから、子育てお悩みQ&Aまで。
子供たちの遊びを、海よりも広い心で受け止める方法の奮闘記。
いただいたり、買ったりが重なり、果物が揃った。
幼いころから植物に心を奪われてきた長男(12)、机の上に白い紙を敷き、あれこれ配置を変えて、写真を撮り始める。
いろんな種類の果物が並んでいる……この図、覚えがある。
なんども読んだ安野光雅さんの『はじめてであうすうがくの絵本』だ。
本を棚から出してきて、長男に「似てるよね」というと「たしかに!」
果物の群に冷蔵庫からピーマンを取り出して、混ぜてみる。
長女(6)を呼び、このなかでどれが「なかまはずれ」だと思うか、質問してみた。
答えはピーマン。「だって、これだけ野菜だから」
うんうん。じゃあ、ピーマンがなかったら? ピーマンを台所に戻しつつ、尋ねてみる。
「えっと、イチジクかな」。理由をきくと言い淀む。それから「やっぱりやめる。レモンにする」。おっ、答えが変わった。「だって、レモンだけ酸っぱいから」
長男の答えは「レモンかイチジクか、わからん」。
味だったらレモン。だけど、やわらかさや傷みやすさという見方だったらイチジクがなかまはずれになるという。
選択の【軸】が変わると答えが違ってくるということが見えているため、逆に答えを出すのに時間がかかるようになっている。あえてどれか選ぶとしたらどう?
話していると、長女が「柿かもしれない」と言い出した。へたの形が一つだけ違うから。
「ほんまや」。長男、妹の答えに感心する。
「なかまはずれ」。言い換えると「ひとりぼっち」。
この【お題】、実は、作者の安野光雅さんが幼い子に「すうがく」を語り始めるにあたって、「なにをもって1とするか」という問いにまず向かってほしいという思いで設定したものだ。
■の中の一つの●。
花の中に、一枚だけモミジ。
「1」と「多」の【対比】で「1」をつかむ。その「1」はある条件を設定して、探し出すことで見いだされる。その条件は人や場所によって異なるし、兄弟や友だちどうしで【軸】を交し合うことは、実に発見的で心踊る体験になり得る。
簡単なのから難しいのまで、なかまはずれが何かとその理由、もっといろんな人に聞いてみたい。というわけで、子ども編集学校のお題候補に加えることになった。
〇〇編集かあさん振り返り
【お題】を受け取ると、アタマのなかの注意のカーソルが一気に動き出します。果物に付随する様々な情報が収集、比較され、【軸】がアブダクションされます。仮留めされた【軸】で対象の適合具合を再びチェックし「答え」となります。
この日は、理由を言葉にできなかったことで、答えが変わったということに目がとまりました。アブダクションは言葉以前の感覚が大きいけれど、再チェックには言葉のスキルと密につながっている。子どもと対話するときに忘れないようにしたいです。
◆千夜千冊1566夜 米盛裕二『アブダクション』
https://1000ya.isis.ne.jp/1566.html
〇〇遊んだ本
『はじめてであう すうがくの絵本』(安野光雅 著 福音館書店)
シリーズ1冊目。なかまはずれ、ふしぎなのり、じゅんばん せいくらべの4つのテーマが収められています。
「読み聞かせ」する本ではなく、子ども達とわいわい対話しながら読む本です。
松井 路代
編集的先達:中島敦。2007年生の長男と独自のホームエデュケーション。オペラ好きの夫、小学生の娘と奈良在住の主婦。離では典離、物語講座では冠綴賞というイシスの二冠王。野望は子ども編集学校と小説家デビュー。
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コメント
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2025-07-01
発声の先達、赤ん坊や虫や鳥に憑依してボイトレしたくなりました。
写真は、お尻フリフリしながら演奏する全身楽器のミンミンゼミ。思いがけず季節に先を越されたセミの幼虫たちも、そろそろ地表に出てくる頃ですね。
2025-06-30
エディストの検索窓に「イモムシ」と打ってみたら、サムネイルにイモムシが登場しているこちらの記事に行き当たりました。
家庭菜園の野菜に引き寄せられてやって来る「マレビト」害虫たちとの攻防を、確かな観察眼で描いておられます。
せっかくなので登場しているイモムシたちの素性をご紹介しますと、アイキャッチ画像のサトイモにとまる「夜行列車」はセスジスズメ(スズメガ科)中齢幼虫、「少し枯れたナガイモの葉にそっくり」なのは、きっと、キイロスズメ(同科)の褐色型終齢幼虫です。
添付写真は、文中で目の敵にされているヨトウムシ(種名ヨトウガ(ヤガ科)の幼虫の俗称)ですが、エンドウ、ネギどころか、有毒のクンシラン(キョウチクトウ科)の分厚い葉をもりもり食べていて驚きました。なんと逞しいことでしょう。そして・・・ 何と可愛らしいことでしょう!
イモムシでもゴキブリでもヌスビトハギでもパンにはえた青カビでも何でもいいのですが、ヴィランなものたちのどれかに、一度、スマホレンズを向けてみてください。「この癪に触る生き物をなるべく魅力的に撮ってやろう」と企みながら。すると、不思議なことに、たちまち心の軸が傾き始めて、スキもキライも混沌としてしまいますよ。
エディスト・アーカイブは、未知のお宝が無限に眠る別銀河。ワードさばきひとつでお宝候補をプレゼンしてくれる検索窓は、エディスト界の「どこでもドア」的存在ですね。
2025-06-28
ものづくりにからめて、最近刊行されたマンガ作品を一つご紹介。
山本棗『透鏡の先、きみが笑った』(秋田書店)
この作品の中で語られるのは眼鏡職人と音楽家。ともに制作(ボイエーシス)にかかわる人々だ。制作には技術(テクネ―)が伴う。それは自分との対話であると同時に、外部との対話でもある。
お客様はわがままだ。どんな矢が飛んでくるかわからない。ほんの小さな一言が大きな打撃になることもある。
深く傷ついた人の心を結果的に救ったのは、同じく技術に裏打ちされた信念を持つ者のみが発せられる言葉だった。たとえ分野は違えども、テクネ―に信を置く者だけが通じ合える世界があるのだ。