<速報>初めての再会へ。47期特別汁講「ふきよせ会」開催!

2023/04/09(日)22:30
img JUSTedit

 4月に入り、小学校から大学まで、数多くの入学式が開催された日本。一部の大学では世間の注目を浴びる対話型人工知能の使用を制限する報道があった。どんな制限があっても物事を前に進めるのは人間による編集だ。教師役の師範代と生徒役の学衆が対話を通じて編集の型を学ぶイシスはオンラインの学校。3年間のコロナ禍でも文字ベースの学びは継続されていた。そんなイシスの中での数少ないリアルイベントだった仲間たちと会話しながら方法を交し合う「汁講」も、オンラインのみでの開催となった。リアルで学びあうことは一度もなく、「直接会ってみたかった」という残念な想いもあった。

 

 今回、47期の基本コース(2021年4月開講)と応用コース(2021年10月開講)の師範、師範代、学衆、約25名が世田谷区赤堤にある編集工学研究所に集結し、初めてのリアルな再会となる特別汁講「ふきよせ会」が行われたのだ。

 

 開幕直後、案内役の律師・八田英子による編集工学研究所の本棚紹介ツアーがスタート。本棚は校長・松岡正剛のアタマの中そのもの。現住所に引っ越した直後、編集前の本棚を見た校長が不調に陥ったエピソードが語られる。初めて聞いた学衆は驚きを隠せない。アタマの中とリアルの本棚の配置や書物の構成を一致させることは編集的な読書に向かうためのヒントになる。

 

 ふきよせ会への参加ルールの1つに蔵書1冊の持参があった。くじ引きを通じて参加者同士で持参した本の交換が行われる。元々の持ち主による本の紹介を聞きながら受け取ることで、手元の1冊が特別汁講を思いだすトリガーな1冊へと変容するのだ。くじ番号が偶然にも相互となる事例も。二人の絆が将来にわたって固く結ばれる予感がある。

 

 汁講にはいくつかのルールがある。その一つが参加型の「ワークショップ」を盛り込むことだ。今回の「ふきよせ会」も例に漏れず、編集工学研究所1Fの本棚から自分にとって「関係のない」と思った本を1冊取り出すところからワークは始まった。「ないモノ」を見つける編集稽古は[守]の基本コースで既に学んでいる。つづいて4人一組となって集まった4冊を並べ、編集の型を使いながら、本同士の関係線を引き、独自の見方づけを行ってタイトル編集を行う。制限時間後の発表ではタイトルに至るまでのプロセスを全員でシェアする。マイクを持ったプレゼンターが突出した発見を説明する場面では、聞き手が特徴的な書物の表紙にも注意を向けることも。

 

 会の後半では、47期に関わった数名がランダムで選ばれ、当時を振り返る「思い出編集」が行われた。担当師範代から見た学衆の様子や稽古へのカマエが重ね合わされる。「編集学校に入る前にあった無念が、師範代登板を終えた頃には成仏できた」と、感謝する声も。語らいが進むにつれて、さらに先の編集道を歩むためのエネルギーがチャージされていった。「ふきよせ会」の参加者がイシス編集学校の内と外で動きまわることを期待できるイベントとなった。彼らの活躍が再びレポートされる日が待ち遠しい。

 

  • 畑本ヒロノブ

    編集的先達:エドワード・ワディ・サイード。あらゆるイシスのイベントやブックフェアに出張先からも現れる次世代編集ロボ畑本。モンスターになりたい、博覧強記になりたいと公言して、自らの編集機械のメンテナンスに日々余念がない。電機業界から建設業界へ転身した土木系エンジニア。

コメント

1~3件/3件

山田細香

2025-06-22

 小学校に入ってすぐにレゴを買ってもらい、ハマった。手持ちのブロックを色や形ごとに袋分けすることから始まり、形をイメージしながら袋に手を入れ、ガラガラかき回しながらパーツを選んで組み立てる。完成したら夕方4時からNHKで放送される世界各国の風景映像の前にかざし、クルクル方向を変えて眺めてから壊す。バラバラになった部品をまた分ける。この繰り返しが楽しくてたまらなかった。
 ブロックはグリッドが決まっているので繊細な表現をするのは難しい。だからイメージしたモノをまず略図化する必要がある。近くから遠くから眺めてみて、作りたい形のアウトラインを決める。これが上手くいかないと、「らしさ」は浮かび上がってこない。

堀江純一

2025-06-20

石川淳といえば、同姓同名のマンガ家に、いしかわじゅん、という人がいますが、彼にはちょっとした笑い話があります。
ある時、いしかわ氏の口座に心当たりのない振り込みがあった。しばらくして出版社から連絡が…。
「文学者の石川淳先生の原稿料を、間違えて、いしかわ先生のところに振り込んでしまいました!!」
振り込み返してくれと言われてその通りにしたそうですが、「間違えた先がオレだったからよかったけど、反対だったらどうしてたんだろうね」と笑い話にされてました。(マンガ家いしかわじゅんについては「マンガのスコア」吾妻ひでお回、安彦良和回などをご参照のこと)

ところで石川淳と聞くと、本格的な大文豪といった感じで、なんとなく近寄りがたい気がしませんか。しかし意外に洒脱な文体はリーダビリティが高く、物語の運びもエンタメ心にあふれています。「山桜」は幕切れも鮮やかな幻想譚。「鷹」は愛煙家必読のマジックリアリズム。「前身」は石川淳に意外なギャグセンスがあることを知らしめる抱腹絶倒の爆笑譚。是非ご一読を。

川邊透

2025-06-17

私たちを取り巻く世界、私たちが感じる世界を相対化し、ふんわふわな気持ちにさせてくれるエピソード、楽しく拝聴しました。

虫に因むお話がたくさん出てきましたね。
イモムシが蛹~蝶に変態する瀬戸際の心象とはどういうものなのか、確かに、気になってしようがありません。
チョウや蚊のように、指先で味を感じられるようになったとしたら、私たちのグルメ生活はいったいどんな衣替えをするのでしょう。

虫たちの「カラダセンサー」のあれこれが少しでも気になった方には、ロンドン大学教授(感覚・行動生態学)ラース・チットカ著『ハチは心をもっている』がオススメです。
(カモノハシが圧力場、電場のようなものを感じているというお話がありましたが、)身近なハチたちが、あのコンパクトな体の中に隠し持っている、電場、地場、偏光等々を感じ取るしくみについて、科学的検証の苦労話などにもニンマリしつつ、遠く深く知ることができます。
で、タイトルが示すように、読み進むうちに、ハチにまつわるトンデモ話は感覚ワールド界隈に留まらず、私たちの「心」を相対化し、「意識」を優しく包み込んで無重力宇宙に置き去りにしてしまいます。
ぜひ、めくるめく昆虫沼の一端を覗き見してみてください。

おかわり旬感本
(6)『ハチは心をもっている』ラース・チットカ(著)今西康子(訳)みすず書房 2025