夫が本屋さんに出かけるというので、出たばかりの千夜千冊エディション『心とトラウマ』を買ってきてもらった。
長男(12)がさっそく「今回の写真どうなってる?」
口絵ページを一緒に開いてみる。
「今回は校長が鏡に映ってるのか。……え、あれ?」
なにか違和感を感じたらしい。
「もしかしてそっくりさん?」
お、見破ったね。物まねっていうよりアートなんだけどねと種明かしする。
「これって、顔は同じでも他人だったらその人の心はわからないってことを意味してるのかな」
ふむふむ。この人は森村泰昌さんっていって校長とは長い付き合いの人。
似せるときには、見た目だけではなく仕草を写すことに相当のエネルギーを使ったらしいよ。ヒゲにも時間がかかったそうけど。
「すごく似てるけど、限界はあるとおもう。シワが少ないよ。校長より10歳以上若いんじゃないかな。だから10年前の校長を真似したらよかったと思う。または10年後に今の校長の真似をするか」
なるほど。それだと背中合わせに立つことはむずかしくなるな。
「ところで、なんで表紙が椅子なの?」
キーになる千夜に『椅子がこわい』っていう本があって、たぶんそれからの連想だと思う。
目次に目を走らせた長男、「心についた傷!」とつぶやいて、私に返す。
今度、4人で手分けして響読すること、第四章担当になったことを話す。
「千夜千冊を要約って、なんかおもしろい」と笑う。
「だって、そもそも千夜千冊が要約なんだよね。もとの本が砂糖だとしたら、千夜千冊は飴とかザラメ? それから綿菓子を作る感じなのかな」。
そうそう、このままだとなかなか「食べない」から、4人で4本の綿菓子にするって感じかな。
我が家の長男、自分なりに喩えることが理解するために必須なのである。
別人も背中あはひの春ぬるむ(玄月)
さあ、読むぞ。
松井 路代
編集的先達:中島敦。2007年生の長男と独自のホームエデュケーション。オペラ好きの夫、小学生の娘と奈良在住の主婦。離では典離、物語講座では冠綴賞というイシスの二冠王。野望は子ども編集学校と小説家デビュー。
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