何の前触れもなく突如、虚空に出現する「月人」たち。その姿は涅槃来迎図を思わせるが、その振る舞いは破壊神そのもの。不定期に現れる、この”使徒襲来”に立ち向かうのは28体の宝石たち…。
『虫と歌』『25時のバカンス』などで目利きのマンガ読みたちをうならせた市川春子が王道バトルもの(?)を描いてみたら、とんでもないことになってしまった!
作者自らが手掛けたホログラム装丁があまりにも美しい。写真ではちょっとわかりにくいか。ぜひ現物を手に取ってほしい。
(市川春子『宝石の国』講談社)

AI時代の編集力
第89回感門之盟「遊撃ブックウェア」が終了し、学衆、師範代は次なる門へ出遊しました。最終プログラムのテーマは「ブックウェアとAI時代の編集力」。田中優子学長と編集工学研究所の安藤昭子社長、奥本英宏師範による対談を受けて、着物姿の学林局林頭・吉村堅樹が登壇しました。
生成AIが急速に進化し、合理化や利便化に向かう世の中で、われわれは何を身につけ、何を大事にしていくのか。どのような編集力を発揮していくのか。吉村林頭は、55[守]卒門者の熱視線を浴びながら、AI時代の編集力をめぐる2つの焦点について語りました。
編集の方向性を自覚する
生成AIをどう捉えればいいのか。その問いに対する答えは、編集学校がこれまで体現しつづけてきたものの中にあります。AI時代の編集力にとって大事なものは、すでにイシス編集学校の編集稽古のプロセスである「問・感・応・答・返」の中にあるのです。
まず一つ目は、「問」と「答」のところです。松岡校長は「出発のレトリック」「到着のレトリック」という言葉を使ったことがありますが、「問」が「出発のレトリック」、「答」が「到着のレトリック」にあたると思います。
「出発のレトリック」とは、どういったところに、どんな問いを立てるのか、注意のカーソルをどこに向けるのかということです。自身の意図の視線に無自覚になってしまうと、社会やデバイス、サービスやテクノロジーの方がアフォードしてくるものを、あたかも自分が注意を向けたかのようにして判断してしまいます。知らぬ間にテクノコードに規定されていってしまう。編集稽古の回答後に、それぞれが自身の注意のカーソルの動向を振り返ってもらった理由は、そこにあるのです。
次に、「答」の「到着のレトリック」です。
漫然と答えを出してはダメなんです。生成AIがものすごい速さと量と内容でアウトプットを出す中で、われわれはどういう基準をもつのか、どういうふうな判断、選択をするのか。それを編集稽古の中で自分に問い直しながら、磨いていって欲しいのです。編集稽古に正解はないと言われますが、確かに正解はないです。しかし、正解はないけれども、方向性はある。「どういう編集に向かいたいのか」という判断をする基準を「6つの編集ディレクション」にしているので、参考にしてください。
イシス は 「方法の学校」
もう一つは、「感」と「応」です。
生成AIが結果を代替してしまう時代にあっても、個々人が「日常として何を体験するのか」は代替してもらうことはできません。一人ひとりが何を「感」じ、どう「応」じるのか。一人ひとりの「感」「応」は、AIに代わってもらうことはできないのです。そして決してAIに奪われることがないものです。
私たちの人生とはプロセスそのものです。どのような結果を出すかということによる他者や社会の評価ではなく、どういう日常をおくっているのか、歩んでいるのかという過程こそが人生でしょう。
イシス編集学校はまさに「プロセスの学校」です。日々のお題、回答、指南という編集稽古を通して、これまでにない日常に変化していく。自分自身が他者と交わりながら、成長し続けていく稽古というプロセスが、編集学校のエンジンなのです。AI時代にはますます「感」「応」とともに、どのような日常、プロセス、スタイルをもっていくのかが重要になります。その答の一つが「稽古という日常」にあるのではないでしょうか。
卒門から、感門之盟へ。編集の学びはずっと続いていく道でありながら、始まりと終わりの “門” という節目がある。門は、そこを通るにあたって、あらためて初心を呼び興こし、次に進む気力を充実させるためのものです。感門之盟という “門” に、自分自身のゲート・エディティングを考え、次の遊撃に向かってください。では、「また会う日まで、グッド・バイ!」。
“God be with you“
校長・松岡正剛が永遠に不在となってから一年が経ちました。8月26日に出版された『百書繚乱』の最後のページには、本楼で千夜千冊全集に囲まれた校長の写真が大きく掲載されています。そこで松岡正剛が読者に向けて記したメッセージが “また会う日まで、グッド・バイ!” でした。
吉村林頭のラストメッセージは校長の言葉を借りての「グッド・バイ!」。元々の語源は “God be with you” だという説があるといいます。この神はもちろん一神教の神ではない。八百万の神やお天道様やご先祖様、大澤真幸流に言えば「第三者の審級」。我々を鼓舞し、戒める存在として、あえて校長・松岡正剛を「編集の神」と見立てて、これからの、今すぐの編集道のプロセスを歩みたいという決意を示しました。その先の道で、また会う日まで。
かくて「ブックウェア」もいったんお開きです。
残念ながら「BOOKWARE」はいったん終了するけれど、今後もぼくの「本」との共闘は続いていく。連載で感じたことはいろいろあるけれど、とくに本をめぐる写真や映像が今後もっともっと世の中に出回っていくことを、また本のイメージが新たな写真や映像によって官能をましていくことを期待している。愛読、どうもありがとう。ではまたの日を、グッド・バイ!
2016.03.31「BOOKWARE」最終回
アイキャッチ/阿久津健
文/北川周哉
イシス編集学校 [破]チーム
編集学校の背骨である[破]を担う。イメージを具現化する「校長の仕事術」を伝えるべく、エディトリアルに語り、書き、描き、交わしあう学匠、番匠、評匠、師範、師範代のチーム。
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