初恋はレモンの味と言われるが、パッションフルーツほど魅惑の芳香と酸味は他にはない(と思っている)。極上の恋の味かも。「情熱」的なフルーツだと思いきや、トケイソウの仲間なのに十字架を背負った果物なのだ。謎めきは果肉の構造にも味わいにも現れる。杏仁豆腐の素を果皮に流し込んで果肉をソース代わりに。激旨だ。

弐のドク:『世界のほうがおもしろすぎた──ゴースト・イン・ザ・ブックス』『Birds』
「ISIS now 遊撃するブックウェア」(第89回感門之盟)で2番目に登場したのは、松岡正剛校長の火を誰よりも苛烈に燃やし続けている、世界読書奥義伝[離]の太田香保総匠。紹介するのは、『百書繚乱』(アルテスパブリッシング)とともに今年の命日のために刊行された『世界のほうがおもしろすぎた──ゴースト・イン・ザ・ブックス』(晶文社)、『Birds』(bookshop M)の2冊だ。
『世界のほうがおもしろすぎた』は校長の最初で最後の自伝。昨年3月に朝日新聞で連載された、「人生の贈り物」という全14回のインタビューが元となっている。もともと校長は自ら自伝を書く計画を立て、あとは着手するのみ、というところに取材企画が舞い込んだ。自伝執筆の事前準備のつもりで引き受けたであろうインタビューのおかげで、「最後の自伝」がまとまった。
インタビュアーを務めた記者・山崎智さんが動画メッセージを寄せ、「(松岡さんは)わかりやすさを徹底的に嫌って、複雑なものを複雑なまま、何とかして私に伝えようとしてくれた」と取材時の様子を語ってくれた。松岡校長の発言を受けた「世界のほうがおもしろすぎた?」という山崎さんの問いがタイトルに採用されているが、太田総匠がまとめたこの本で、何度でも「松岡さんのゴーストに出会うことができたらいい」と結んだ。
そして、『Birds』。校長が亡くなった後、書斎の片隅から鳥をモチーフにした書画がたくさん見つかった。鳥を「ここ」(here)と 「むこう」(there)をつなぐ媒介者と見立てていた校長を、軽やかに羽ばたかせたい、との願いから編まれた書である。
セイドクにて、そこここに揺蕩う校長の気配を感じたい。
▼以下順次公開
壱のドク:『百書繚乱』と千夜千冊絶筆篇
弐のドク:『世界のほうがおもしろすぎた──ゴースト・イン・ザ・ブックス』『Birds』【本稿】
参のドク:多読アレゴリア
肆のドク:ほんのれんラジオ/多読アレゴリア「ほんのれんクラブ」
伍のドク:九天玄氣組プロジェクト Qten Genki Book『九』刊行など
アイキャッチ・写真/後藤由加里
文/白川雅敏
白川雅敏
編集的先達:柴田元幸。イシス砂漠を~はぁるばぁると白川らくだがゆきました~ 家族から「あなたはらくだよ」と言われ、自身を「らくだ」に戯画化し、渾名が定着。編集ロードをキャメル、ダンドリ番長。
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コメント
1~3件/3件
2025-09-24
初恋はレモンの味と言われるが、パッションフルーツほど魅惑の芳香と酸味は他にはない(と思っている)。極上の恋の味かも。「情熱」的なフルーツだと思いきや、トケイソウの仲間なのに十字架を背負った果物なのだ。謎めきは果肉の構造にも味わいにも現れる。杏仁豆腐の素を果皮に流し込んで果肉をソース代わりに。激旨だ。
2025-09-23
金緑に輝くアサヒナカワトンボの交接。
ホモ・サピエンスは、血液循環のポンプを遠まわしに愛の象徴に仕立て上げたけれど、トンボたちは軽やかに、そのまんまの絶頂シアワセアイコンを、私たちの心に越境させてくる。
2025-09-18
宮谷一彦といえば、超絶技巧の旗手として名を馳せた人だが、物語作家としては今ひとつ見くびられていたのではないか。
『とうきょう屠民エレジー』は、都会の片隅でひっそり生きている中年の悲哀を描き切り、とにかくシブイ。劇画の一つの到達点と言えるだろう。一読をおススメしたい(…ところだが、入手困難なのがちょっと残念)。