先人の見立て力にひれ伏すしかないと思って来た「墨流し」。戯れに、Chatさんに「蝶のスミナガシを別の見立てで改名するにはどんな名前がいいですか?」と尋ねてみて、瞬時に現れた名答に打ち拉がれております。

イシス唯一のリアル読書講座「輪読座」。「みんなで読めば怖くない」の精神でこれまで数々の難読古典に挑戦してきました。10月26日からの新コースは、江戸後期の町人にして驚くべき大著を残した異才・山片蟠桃(やまがた・ばんとう)の『夢の代(ゆめのしろ)』を読みます。
ところで山片蟠桃をご存じですか?「いやあ、知りません…」という方、それはちょうどいい!松岡正剛校長が著書『日本流』でかなりのページを割いて蟠桃について語っています。まずはこちらをどうぞ。
◆山片蟠桃:時代を先駆けた批評精神旺盛な異才
山片蟠桃は大阪を代表する経世家で、かなり異色な行動的哲人です。仙台藩の財政を一軒の大店の経済だけでまかなってみせたかとおもえば、日本神話の不備を鋭く突いたりもした。経営哲学者としても政策論者としても重要な位置にいるし、三枝博音の先駆的な日本思想研究のなかではとびきりの唯物論哲学者ともされています。蟠桃は、経世済民の思想を懐徳堂に学びました。
◆懐徳堂:いまの日本にこそ甦らせたい私塾
懐徳堂は、そのころ関西に出現したたくさんの郷学(地方学校)のなかでもとびぬけた私塾です。三宅石庵の創設以来、日本的仏教の問題点を分析した富永仲基や、懐徳堂の先生として多くの塾生を育てた中井竹山をはじめ、かなり多くの人材を輩出したところです。このように先を走っていた連中を次々に輩出した懐徳堂は、こんな私塾こそがいまの日本に出現するといいような、それなら日本もなんとかなると思えるような、そういう学校です。
◆『夢の代』:天文・地理・歴史・制度・経済を編集しつくした稀代のエンサイクロペディア
山片幡桃の先見の明を言挙げしておきます。いまの日本人が失っているかもしれないところです。私が思うに三つくらいのまったく新しい視点を開拓した。だいたいのことは「夢の代」に書いてあります。
第一は、コペルニクス以降の天文学をとりいれ、その天文学の知によって土地に縛られた社会感覚を開放するように努めました。第二に、ヨーロッパの長所と短所をはやくも見抜いていました。第三に、(以下略)
これだけ熱を込めて語られると、蟠桃への興味が一気に高まりますね。つづいて輪読座の講師をつとめる輪読師バジラ高橋にも話を聞きました。
――『夢の代』は12巻からなる百科全書的大著。だいぶ手強そうですけど、今回この本に決めた理由は?
バジラ:『夢の代』というタイトルの真意は不明。でも僕は、かつてセイゴオ先生が「大阪のためにも山片蟠桃賞を設立するべき」と言いはじめたときから、「夢の代」は「夢の代わり」であって、いわば「すべての現実」を意味すると、勝手に思い込んできたんです。『夢の代』には中国の仏教も含めた宇宙論、神道の宇宙論、天動説から地動説までの説を含めた欧州の宇宙論を比較検討し、恒星が宇宙に遍満する宇宙像が提案されています。それにとどまらず、世界中の経済システムを論じ、世界地図の変化について、地政学を含めた検証をしているんです。『夢の代』は宝天文化にインパクトを与えて、日本人の常識を変えていくことになっていきます。僕たちにとっても決して古びていない蟠桃の方法を、今回もみんなで一緒に探ってみたい。輪読座は予習も前提知識も一切不要です。読み間違い、読めない文字の飛ばしも全部OK。どうぞよろしく。
バジラ高橋は、松岡正剛とともに伝説の雑誌『遊』の創刊を手がけ、数々の編集プロジェクトを実現してきた名編集者。松岡をして「学者10人分」と言わしめる博覧強記の頭脳が、いま『夢の代』をどう読み解くのか。そして「日本人の常識を変えるほどのインパクト」とは何なのでしょうか。
名著でありながら、これを逃せば一生読まないかもしれない『夢の代』の輪読座は10月26日(日)13時スタート。みなさまのご参加をお待ちしています!
●日時 全日程 13:00~18:00
2025年10月26日(日)
2025年11月30日(日)
2025年12月21日(日)
2026年1月25日(日)
2026年2月22日(日)
2026年3月29日(日)
●受講資格
どなたでも、お申し込みいただけます。
イシス編集学校の講座を未受講の方でも歓迎です。
●受講料
◎本楼リアル参加◎ 6回分 55,000円(税込)
◎オンライン参加◎ 6回分 33,000円(税込)
*リアル/リモートともに全6回の記録映像が共有されますので
急な欠席でもキャッチアップいただけます
●詳細・お申込はこちら
https://es.isis.ne.jp/course/rindokuza
★講座スタート後でもお申込みOK!見逃した回は記録映像でお愉しみください。
福井千裕
編集的先達:石牟礼道子。遠投クラス一で女子にも告白されたボーイッシュな少女は、ハーレーに跨り野鍛冶に熱中する一途で涙もろくアツい師範代に成長した。日夜、泥にまみれながら未就学児の発達支援とオーガニックカフェ調理のダブルワークと子育てに奔走中。モットーは、仕事ではなくて志事をする。
【参加者募集】56[守]にも間に合う!10/12(日)本楼エディットツアー
アタマが固い、鈍い、動かない。もうAIには敵わない…と諦める前に、「編集術」を試してみませんか。 10/12(日)14時からの「本楼エディットツアー」では、松岡正剛の編集術を使ったいくつかの編集ワークを体験いただきます。 […]
【田中優子の「酒上夕書斎」】はご存じだろうか?5月に優子学長がはじめた読書系YouTube LIVEで、毎月とっておきの1冊を紹介している。だがオープニングが独特。「まずはひと口飲みますね」と言って赤ワインをゴクリ。本よ […]
10匹の出世魚、ただいま誕生!55[破]出世魚教室名発表【89感門】
イシスの魚はマグロだけじゃない。カワル、メトード、ほたほた・・・ふしぎな魚が泳いでいる。 [守]師範代から[破]師範代へかわるとき、EDITされる教室名を”出世魚”という。55[破]に遊撃する10匹の出世魚 […]
東京は急に秋めいた。朝晩は肌寒いくらいだ。ちょっと温もりがほしいとき、お茶やカフェオレ、ホットワインで温まるのもいいが「先達文庫」もオススメだ。 55[守]師範代に贈られた先達文庫は計18冊。感門之盟で手渡 […]
【参加者募集】とっておきのお茶×読書×編集体験!9/13「本楼共茶会」コールドブリューベリーモヒート茶篇
9月13日(土)、松岡正剛プロデュースのブックサロンスペース「本楼」にて、お茶×読書×編集で参加者のみなさまを意外な世界へお連れする「本楼共茶会」(ほんろうともちゃかい)を開催します。7度目となる今回は「コールドブリュー […]
コメント
1~3件/3件
2025-10-20
先人の見立て力にひれ伏すしかないと思って来た「墨流し」。戯れに、Chatさんに「蝶のスミナガシを別の見立てで改名するにはどんな名前がいいですか?」と尋ねてみて、瞬時に現れた名答に打ち拉がれております。
2025-10-15
『キャラ者』は、”マンガ家”だった頃の江口寿史の、(まとまった作品としては)ほぼ最後の仕事。恐るべきクオリティの高さで、この才能が封印されてしまったのはもったいない。
「来年こそはマンガ家に戻ります!」と言ったのは、2016年の本の帯(『江口寿史KING OF POP SideB』)。そろそろ「来年」が来てもいいだろう。
2025-10-14
ホオズキカメムシにとってのホオズキは美味しいジュースが吸える楽園であり、ホオズキにとってのホオズキカメムシは血を横取りする敵対者。生きものたちは自他の実体など与り知らず、意味の世界で共鳴し続けている。