自らの体内から這い出したコマユバチの幼虫たちが作った繭の塊を抱きしめるシャクトリムシ。科学者は「ゾンビ化されて繭を守るよう操作されている」と解釈するけれど、これこそ「稜威」の極北の姿ではないだろうか。
イシスの学びは渦をおこし浪のうねりとなって人を変える、仕事を変える、日常を変える――。
ウェブディレクターの内野絹子さんは、福岡を拠点として小規模事業専門にホームページ制作や情報発信のサポートを行う「KoKocreate」の代表だ。自ら写真を撮るカメラマンでもある。
2020年の起業以来、不安だらけだったという内野さんの背を押したものは何だったのか。
イシス受講生がその先の編集的日常を語る、新しいエッセイシリーズ、第5回目をお届けします。
■■イシスの方法で駆け抜ける
「守」を卒門し、続けて「破」を突破した後、編集の未体験ゾーンを走り抜けた実感はあったものの、型を日常で活かすのは難しそうに思っていた。だが、今回よくよく振り返ると使っていた。しかもすごくわかりやすく。
それは、ある事業主(Nさん)の「会社名」のネーミングの相談を受けた時のこと。私はネーミングの仕事は経験がなく、どうアドバイスするか考えた時、咄嗟に取り出したのが、守で学んだ基本的な型だった。
私 「会社を情報として客観的に見てください」
Nさん「?」
私 「なんとなくそう意識する感じで大丈夫です。それで、本当に何でもいいので、この会社のことをいろんな言い方で言い合ってみませんか?」
そこから一緒に、会社に関することやそれに関連するもの・ことを書き出した。これは【たくさんの私】だ。出てきたものを言い換えたり、類義語を辞書で引いてみたり、連想したり、要約してみたり。これは【シソーラス】だ。
途中、スピードが落ちた時、【オノマトペ】を連発してみた。
Nさん「そんなのもあり?!」
散らばった情報を画面上のホワイトボードに分けて眺めてみる。【らしさ】が表されるのはどういうものか、欠かせないものは何か、ざっくばらんに交わしあった。
私ができたことはそこまでだったが、後日、4つに絞られた候補が届いた。
Nさん「どれがいいと思います?」
私 「うーん…」
2つまで絞り、迷った挙句、1つの社名を選んだ。
Nさん「ですよね! これですよね…」
私は昔から「完成!」と思えないと人には見せられない、完璧主義なところがあった。しかし、イシスの稽古でそれをやっていては先に進まないことも早い段階で理解した。「仮留め上等!」とまずは回答を放ってからハチマキをしてペンを振り回す仲間もいたので、いつからか私も真似るようになっていたのだ。
「仮留め上等!」を傍らに置いておいたおかげで、あれこれ悩まずとにかく頭と手を動かしてやるんだという挑戦モードになり、行動が加速した。これは自分の中で大きな変化だった。
未完成のものを人に見せたり、着地点が見えていないものを手放すのは勇気がいるが、自分で考え一旦形にしたら人に渡してみる、そうすることで生まれるものがあると今は知っている。
今後もそうして、人と思考を混ぜ合いながら私は仕事をしていく。
▲内野さんは、仕事と趣味の両方でカメラ Nikon D750を構える。眼前の情報の切り取り方にも「型」を使っていることを意識するという。
文・写真提供/内野絹子(46[守]角道ジャイアン教室、46[破]互次元カフェ教室)
編集/角山祥道、羽根田月香
エディストチーム渦edist-uzu
編集的先達:紀貫之。2023年初頭に立ち上がった少数精鋭のエディティングチーム。記事をとっかかりに渦中に身を投じ、イシスと社会とを繋げてウズウズにする。[チーム渦]の作業室の壁には「渦潮の底より光生れ来る」と掲げている。
編集稽古×合気道×唄&三味線――佐藤賢のISIS wave #70
イシスの学びは渦をおこし浪のうねりとなって人を変える、仕事を変える、日常を変える――。 新年初めての武術、音曲などの稽古を始めることを「稽古始(けいこはじめ)」「初稽古」といい、新年の季語にもなっています。 […]
ミメロギア思考で立ち上がる世界たち――外山雄太のISIS wave #69
イシス編集学校の[守][破][離]の講座で学び、編集道の奥へ奥へと進む外山雄太さんは、松岡正剛校長の語る「世界たち」の魅力に取り憑かれたと言います。その実践が、日本各地の祭りを巡る旅でした。 イシスの学びは […]
【書評】『熊になったわたし』×3×REVIEWS:熊はなぜ襲うのか
熊出没のニュースに揺れた2025年、年末恒例の“今年の漢字”もなんと、熊。そこで年内最後に取り上げるのは、仏のベストセラー・ノンフィクション『熊になったわたし――人類学者、シベリアで世界の狭間に生きる』です。推薦者はチー […]
ロジカルシンキングの外へ――竹廣克のISIS wave #68
曖昧さ、矛盾、くねくね、非効率……。どれもこれも、ビジネスシーンでは否定されがちです。それよりもロジカルに一直線。社会の最前線で闘ってきた竹廣克さんならなおさらのことです。 ところが、イシス編集学校の[守][破]で学んで […]
地域も祭りも「地と図」で編集――大倉秀千代のISIS wave #67
イシスの学びは渦をおこし浪のうねりとなって人を変える、仕事を変える、日常を変える――。 地域の中でリーダーとして長らく活躍してきた大倉秀千代さんは、一方で「このままのやり方を続けていていいのか」とモヤモヤし […]
コメント
1~3件/3件
2026-01-13
自らの体内から這い出したコマユバチの幼虫たちが作った繭の塊を抱きしめるシャクトリムシ。科学者は「ゾンビ化されて繭を守るよう操作されている」と解釈するけれど、これこそ「稜威」の極北の姿ではないだろうか。
2026-01-12
午年には馬の写真集を。根室半島の沖合に浮かぶ上陸禁止の無人島には馬だけが生息している。島での役割を終え、段階的に頭数を減らし、やがて絶えることが決定づけられている島の馬を15年にわたり撮り続けてきた美しく静かな一冊。
岡田敦『ユルリ島の馬』(青幻舎)
2026-01-12
比べてみれば堂々たる勇姿。愛媛県八幡浜産「富士柿」は、サイズも日本一だ。手のひらにたっぷり乗る重量級の富士柿は、さっぱりした甘味にとろっとした食感。白身魚と合わせてカルパッチョにすると格別に美味。見方を変えれば世界は無限だ。