巣の入口に集結して、何やら相談中のニホンミツバチたち。言葉はなくても、ダンスや触れ合いやそれに基づく現場探索の積み重ねによって、短時間で最良の意思決定に辿り着く。人間はどこで間違ってしまったのだろう。
川邊透
2025-12-16 11:09:14
イシスの学びは渦をおこし浪のうねりとなって人を変える、仕事を変える、日常を変える――。
地域の中でリーダーとして長らく活躍してきた大倉秀千代さんは、一方で「このままのやり方を続けていていいのか」とモヤモヤしていたそうです。一念発起し、イシス編集学校の基本コース[守]、応用コース[破]で学んだ大倉さんは、ここで「今までと違うアプローチ」を手に入れます。その方法と結果は?
今回の「ISIS wave」(第67回)は、町内会のあり方を「編集」してしまった大倉さんの体験談をお送りします。
■■町内会の対立を乗り越える
私の暮らす町内会では、昨年度7年ぶりに「秋祭り」が復活した。ところが、今年度の事業計画を決める町内会総会の場で、祭りを続けるかどうかで議論となった。「開催派」が、「会員の親睦が大切」といえば、「消極派」は、「一部の人だけでやっている」と、町内会予算の使用に難色を示した。
こうした「対立」は、身近なところでよくあることだ。新しいことを提案すると、「いちゃもん」にも聞こえるような反対意見を突きつけられるケースが多々ある。イシス編集学校に入門する前の私なら、適当に議論を切り上げ「多数決」で決めたり、やりたい人だけで実行委員会を作って進めていた。だが、このやり方だと、その場はしのげても、組織の中に「分断」をもたらし、根強く影響が続く。
ところが、この時は違った。今改めて振り返ると、無意識に《地と図》の型を使っていたように思う。私は一歩引いて考えることができていた。
「開催派」も「消極派」も、それぞれの重きを置いている《地》が違うのだ。背景の《地》が異なるから、見えている《図》も違う。だが議論している人たちには、この違いが見えていない。議論は平行線だ。
《地》は、それぞれの町内会員が、それぞれの人生の中で身に付けてきたもので、すぐには変わらない。でも《図》(ここでは対処方法)では折り合いをつけられるのではないか。
そこでまず、昨年度の祭り参加人数と町内会費をもとに予算化し、支出をより限定することにした。それと開催をセットにして、修正案として再提起した。「消極派」も開催に反対しているわけではないので、懸案の予算が見える化されたことで矛を収めた。いつもより議論に時間はかかったが、結果、満場一致で秋祭り開催が可決された。
感情的に対立するのではなく、それぞれの《地》の違いを意識して、それぞれに折り合いのつく《図》(方法)を提起し、議論し決めていく。まさに「編集」だと思う。
長年多様な地域組織で「リーダー」をやっていると、課題への対応が安易にパターン化し、周囲からも頼られるようになる。会はそれなりに運営できるものの、次の世代の人たちの積極的参加を阻害する恐れもあった。
そこでまず、私自身が変わらなければと思っていたところに、たまたま新聞記事でイシス編集学校を知った。2024年の秋に基本コース[守]に入門し、今夏、応用コース[破]を終えた。
編集稽古を通して世を見るといろんな発見がある。「柔軟な発想ができるようになった私」もまた、発見だった。
来年74歳になるが、まだまだ学び続けていきたい。
▲大倉さんはは、備前福岡・吉井川のほとりのうどん屋「備前福岡 一文字うどん」(岡山県瀬戸内市)の2代目会長でもある。
▲「備前福岡 一文字うどん」は、自家採種・自家栽培・自家石臼製粉というこだわりのうどん目当てに、他県からもファンが訪れる。中世鎌倉時代から伝わる郷土料理のばら寿司「どどめせ」(左下)も人気だ。
文・写真/大倉秀千代(54[守]展色ヴィンテージ教室、54[破]讃岐兄弟社教室)
編集/チーム渦(角山祥道、田中志穂)
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2025-12-16 11:09:14
2025-12-16 11:09:14
巣の入口に集結して、何やら相談中のニホンミツバチたち。言葉はなくても、ダンスや触れ合いやそれに基づく現場探索の積み重ねによって、短時間で最良の意思決定に辿り着く。人間はどこで間違ってしまったのだろう。
エディストチーム渦edist-uzu
編集的先達:紀貫之。2023年初頭に立ち上がった少数精鋭のエディティングチーム。記事をとっかかりに渦中に身を投じ、イシスと社会とを繋げてウズウズにする。[チーム渦]の作業室の壁には「渦潮の底より光生れ来る」と掲げている。
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