誰にでも必ず訪れる最期の日。
それが、どのような形で訪れるかはわからないが、一番ありえそうなパターンの一つが終末介護病棟での最期じゃないだろうか。沖田×華先生と言えば、自虐ネタのエッセイマンガでよく知られるが、物語作家としても超一流だった。深く死に向き合いたい方は、是非ご一読を。
(沖田×華『お別れホスピタル』)
多読ジム出版社コラボ企画第四弾は、小倉加奈子析匠が主催するMEditLab(順天堂大学STEAM教育研究会)! お題のテーマは「お医者さんに読ませたい三冊」。MEdit Labが編集工学研究所とともに開発したSTEAM教材「おしゃべり病理医のMEdit Lab-医学にまつわるコトバ・カラダ・ココロワーク」で作成したブックリストから今回のコラボ企画のために厳選した30冊が課題本だ。読衆はここから1冊選び、独自に2冊を加えて三冊セットを作り、レコメンドエッセイ三冊屋(500〜600字)を書く。MEdit賞はいったい誰の手に?
お医者さんは話がうまい。チェーホフやモームも、収容所体験を著したフランクルも白衣がよく似合う。米国で、その系譜を継いだのはインド系の外科医アトゥール・ガワンデ。研修医時代の体験と考察を記した『予期せぬ瞬間』は世界の医師と患者に愛読された。現場が最も嫌う「不完全、不可解、不確実」の三つで外科医の仕事を照らした作品だ。とはいえガワンデは告発者たろうとしたのではない。限界に直面し、更新し続けようとする不屈の魂が体験を通して語りかけてくる。
医師の表現力が高いのは、点と点を結び、補助線を引く訓練を重ねているからだろう。そんな幾何学と繊細の精神が合体しないと、どんな徴も読みとれないと記した作品がある。パスカルの『パンセ』だ。400年前も今も変わらない「救済」に向かうこころを知ることは、医師自身の癒しになるのではないか。なぜなら癒しは、病気の治療とは別の原理。支えつつ揺さぶる力が必要になる。『科学と科学者のはなし』では、高校生の寺田寅彦が漱石に出会い、俳句とは? と問いかけて「扇のかなめのような集注点を指摘し描写して、それから放散する連の世界を暗示するもの」の答えで俳句に目覚めた話が紹介されている。物理学と俳句に生きた寅彦の語りは、筋の通し方、目の前の現実から普遍へと跳躍する力にあふれている。話のうまい医師では足りず、まだ求めたいもののある欲張りさんに、3冊をまとめて贈りたい。
Info
⊕アイキャッチ画像⊕
∈『予期せぬ瞬間』アトゥール・ガワンデ/みすず書房
∈『パンセ』ブレーズ・パスカル/中央公論社
∈『科学と科学者のはなし』寺田寅彦/岩波書房
⊕多読ジムSeason13・冬⊕
∈選本テーマ:お医者さんに読ませたい三冊
∈スタジオNOTES(中原洋子冊師)
大音美弥子
編集的先達:パティ・スミス 「千夜千冊エディション」の校正から書店での棚づくり、読書会やワークショップまで、本シリーズの川上から川下までを一挙にになう千夜千冊エディション研究家。かつては伝説の書店「松丸本舗」の名物ブックショップエディター。読書の匠として松岡正剛から「冊匠」と呼ばれ、イシス編集学校の読書講座「多読ジム」を牽引する。遊刊エディストでは、ほぼ日刊のブックガイド「読めば、MIYAKO」、お悩み事に本で答える「千悩千冊」など連載中。
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