空中戦で捉えた獲物(下)をメス(中)にプレゼントし、前脚二本だけで三匹分の重量を支えながら契りを交わすオドリバエのオス(上)。
豊かさをもたらす贈りものの母型は、私欲を満たすための釣り餌に少し似ている。

「現代の技術では七重塔の建設は不可能です」。多くの寺社建設を手掛けた大浦氏が語る。「この石は国分寺の七重塔の心礎です」。肥後考古学会会長が示す。ここは熊本の名勝水前寺公園からほど近くに位置する肥後国分寺。住職の宮田氏は「七重塔守」を名乗り、塔の復興を悲願としている。彼らは2019年11月23日に開かれた第1回肥後国分寺サミットの登壇者であり、宮田住職は主催者でもある。
国分寺は聖武天皇の詔によって全国に建立された。毘盧遮那仏から全世界に“帝網”というネットワークが広がっていくという華厳世界の理念にならい、東大寺を中心とする国分寺ネットワークが構築されたが、現在そのままの姿で残る寺は一つもない。
肥後国分寺は一度途絶えたが、室町時代に禅寺として再興され、現在は曹洞宗の寺として存続している。2016年の熊本地震での瓦、壁、天井などの損傷を乗り越え、地域の人たちが集まる場所となっている。第1回サミットには近隣の商店会会長や町おこし・語り部活動に関わる人々、講師の友人や知人などのべ40名が参加した。
講師の案内で寺の周辺を歩く。駐車場脇の砂利道に落ちている布目瓦が奈良時代の寺に使われたものだと聞き、民家の庭に建つ国分尼寺跡の石碑を見て、歩いていくうちに、いつもの風景の下に奈良時代の存在が浮かんでくる。
布目瓦
宮田住職からの依頼でサミットの企画に関わったのは、イシス編集学校九州支所九天玄氣組の組員、熊本市在住の光澤大志(25[守])だ。2011年の加入当初から熊本八代の妙見祭や新潟での座禅レポートを支所ラウンジに投稿するなど、フットワークが軽く、やたらと本を読んでいる青年であった。その後、輪読座のバジラ高橋こと高橋秀元の弟子としてアーナンダーを名乗り、九州や出雲でバジラツアーを5回も企画しアテンドする強者に成長した。本人曰く「これまで一つの組織に属した最長記録は小学校の6年間だった。九天はそれを越えた」そうだ。地元で頼りにされはじめた光澤を応援すべく、サミットには福岡市住の組員3名(門倉、出崎、石井)も駆けつけ、奈良時代の熊本に触れた。
国分尼寺跡を見学するサミット参加者。左端の黒いトレーナーの青年が光澤。
第2回では歴史をもっと遡ることを目論んでいるようだ。次は何を目指すのか、七重塔の復興はなるのか。冒頭の大浦氏は「住職の積み立ても少しずつ増えているようなので、いつか建つかもしれませんね」と講演を結んだ。
2/22(土) 編集ワークショップ「エディットツアースペシャル」熊本開催
光澤大志も参加!
石井梨香
編集的先達:須賀敦子。懐の深い包容力で、師範としては学匠を、九天玄氣組舵星連としては組長をサポートし続ける。子ども編集学校の師範代もつとめる律義なファンタジスト。趣味は三味線と街の探索。
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ヒトが繋げた植物のその先を、人知れずこっそり繋げ足している小さな命。その正体は、自らの排泄物を背負って育つユリクビナガハムシの幼虫です。