チラ見せ「圧刊大惨寺」

2024/03/18(月)14:39
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 「異国のサンタも金次第」(シェイクスピザ・作)と申しますが、そのサンタが唯一活躍する日に、エディットカフェで始まったのが「シン・お笑い大惨寺」でございます。
 毎朝、「大入道2000」から吐き出されるお題をめぐり、歓声、嬌声、雷声に擬声、笑声に茶利声。「二階から鼻薬」(山田・作)だ、いや「初回から胃薬」(緑青・作)だと、境内には十人十声が響き渡っております。


 先の感門之盟(第83回)では、当寺の出武将(デーブ川崎)が[破]P1グランプリの審査委員長を務め、遊夕番の白馬ッ苦連(バニー新井)が大惨寺を大いに宣伝しておりましたが、なに? まだやったことがない? 
 感門之盟では8ページの「圧刊大惨寺」が配布されておりましたが、なに? 本楼に行かなかった?

 

 「圧刊大惨寺」の目玉は、苦渋難題日(9日、10日)に出題の競作お題「第16番 超短編による大惨寺観光ガイド」。これは、名刹「大惨寺」の見どころを500文字の物語に仕立てるというお題なのです。さらには、超短編作家タカスギシンタロ氏(鮫漫坊)に撰と講評を担当していただきました。で、この「大惨寺観光ガイド」の作品をどどーんと公開してしまおう、というのが今回の「圧刊大惨寺」でした。

 

 では(アタマの中でジングル)、入選者を発表しましょう。

■タカスギシンタロ氏撰

 

◎最優秀作品
「ほどほどの泉」羯磨


⚪︎優秀作品
「大惨寺の別の顔」棗絽
「笑い誘う名刹大惨寺」植木屋
「事抜き地蔵」珍ぬ
「無題」龍雪


△佳作
「禿翁地蔵縁起」椿亭八枝
「大惨寺観光案内」御殿場の凸
「泰山寺の危機」海音寺ジョー
「大惨寺」永子
「私が大惨寺について語るなら」ゴンタ
「流れ星ビバップ」空虹桜
「千日笑い観音」痴喜笑

 

 つづいては(またもやジングル)、人気投票(互選)の結果発表です。

<一番人気作品>

「大惨寺の別の顔」(棗絽)
「無題」(緑青)
「無題」(わさ柱)


<次点人気作品>
「大惨寺」(永子)
「ガイドの花子さん」(楕円)
「私が大惨寺について語るなら」(ゴンタ)
「インバウンド『大惨寺』」(薄墨桜餅)
「夜明け前の大惨寺」(破綻)

 

  え? 作品も読みたい? 合点承知。せっかくですからね、遊刊エディスト読者にもその一部を公開しちゃいましょ。ああ、そうそう、大惨寺ラウンジでは、すべてを読むことができまする。

タカスギシンタロ氏撰・最優秀作品

「ほどほどの泉」(羯磨・作)


 縄文時代から伝わる名札・大惨寺の奥、巌窟に湧き出る泉は「ほどほどの泉」と言われている。
 寺の下女がある朝、水汲みに泉にいったところ、美しい人物が立っていた。実は観音菩薩だったのだが、下女は学がないために「ARE」と呼んだ。「アレ」では困る観音様はここに御堂を建てるよう告げたが下女はよくわからない。観音様は阿弥陀如来に下生願ったが下女は阿弥陀様のことも「アレのアレ」としか呼べず、「アレのアレ」が出る泉として有名になった。
 阿弥陀様は長い修行の年月にないほど苛立ったが、下界の人間は弥陀の本願以上に愚かなもので、「あー、あれあれ」と物名を忘れる者たちが救済と宥しを求めて熱狂して参拝するようになった。
 明治になり、耶蘇の宣教師はこの話を聞いて、ルルドの聖母が日本にも出現したと直感し住職に伝えた。住職は早速インバウンドでひともうけしようとしたが、宣教師が言ったルルドという言葉を忘れてしまった。やけくそで「ホドホド」と言ったところこれが伝わり、いまでは人間の愚かさを救う水が湧く泉として有名になった。(459字)


 

 観音、阿弥陀、宣教師、マリア様まで繰りだして、アレがアレしてアレとなる様を描いた大胆な書きっぷりが見事。もはや読み手の意識は名所「ほどほどの泉」へと飛び込むしかないではないか。どこかとぼけた口調が馬鹿馬鹿しくも真剣な修行の場、大惨寺のテイストにぴったりで、未分化の事物が分節を重ね、ついには言葉遊びにまで至るという、魅力的なガイドに仕上がっている。(タカスギシンタロ評)

 

 棗絽どのは、Wでの入選。めでたいので、こちらもチラ見せ。

タカスギシンタロ氏撰・優秀作品/互選一番人気作品

大惨寺の別の顔」(棗絽・作)

 

 山茶花の花びらが落ちている。少女が二人しゃがみこんで、白とピンクの花びらを交互につないで首飾りをつくっている。陽が傾いてくると、すぐそ ばの庫裡から里芋汁の匂いが漂ってくる。餅もあるよーと言わんばかりにデコピソが跳ねながら迎えにくる。
 正月明けには、本堂わきの欅の木の幹にかじりついて、枝に引っかかった凧を取ろうとしていた少年がいた。夏には、風通しのよい山門の陰で涼む母子を見かけた。少年も母子も今はいない。長くて2週間、ほとんど4、5日で姿を消すのだ。
 大惨寺は出入り自由の寺である。門番もいなければ警備員もいない。修行をしたい者も仏に祈りたい者も故人と会いたい人も、ただただ散策をしたい人も、追っ手から姿を隠したい人々も受け入れる。だが、逃がすものかと追いかけてきた、微笑むことを失くした者の目には、その山門は映らない。
 山茶花の首飾りをした姉妹も、明日には新しい家族のもとに旅立つのだろう。(405字)


 

 彼岸と此岸を花でつなぐ、大惨寺のやさしい顔が垣間見える良作。(タカスギシンタロ評)

 

  他にも「シン・お笑い大惨寺芳名録」「川柳笠附『なによりも』」「海外ドラマ風味シリーズ 刑事ピクルス」などなど、快作に怪作、珍作に偶作、競作に戯作、三毛作に裏工作、たんまりと載っております。


 マンボウ尻なし(魔が差す藤丸・作)、餡よりショコラ(万迷・作)。大惨寺は遊んでナンボ、遊ばにゃ損損。Yammyで結構(わさ柱・作)、道を訊いて風を知る(**!・作)。風に任せて、いざ遊ばん。

 

(筆武将)

  • シン・お笑い大惨寺 遊夕番遊夕番

    編集的先達:一休宗純、川上音二郎、椿三十郎、四方赤良。イシスと社会の狭間に生まれし「シン・お笑い大惨寺」。この河原から毎夕声を発するは人呼んで「遊夕番」。時には抜き身の刀のごとくギラギラと、時にはヌメヌメ艶っぽく、この世もわが身も笑い飛ばす。髑髏を蹴飛ばしオッペケペぇ、雨降らば降れ風吹かば吹け。

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