大惨寺新章 -口伝の世紀へ-【第三回焼きそば会*焼きそば比丘尼ック】

2025/03/13(木)18:18 img
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活字に行間あり。セリフに間合いあり。シン・お笑い大惨寺はエディットカフェを飛び出し、新たな間の創造に向けて船出した。

2月大寒波の連休最終日、この世から消えゆく「B面の権化」大惨寺のトンチキ集団による焼きそば会が本楼で敢行された。その名も〈焼きそば比丘尼ック〉。日頃エディットカフェの片隅に集う大惨寺メンバーのリアル結索点だ。ナニがどうすりゃ間の創造に向けた船出となるのか、疑問をおもちの向きはぜひこの先に進まれたい。

 

聞く大惨寺?! あの人が主役!?

おばばと年嵩のトトロがブビンガを挟んでヒソヒソ話。ジブリさながらのシーンが広がる。メンバーが一人増え二人増えする中、ヒソヒソ話が終わる気配がない。あ、年嵩トトロこっち向いた。大惨寺の主催者にして出題者である出武将殿だ。(おばば、後に某師範代と判明)

 

▲大惨寺の主:出武将殿【[破]の飛び道具考案者】。こわくない

 

「大惨寺をラジオにするということでね。お題は《刑事ピクルス》にしました。主役のマリネは名乗りをあげた燦々さんね。ゴーダ伯爵とエメンタール伯爵やりたい人いる? セリフ一言だけ」「これ台本です」

13人の回答が並ぶ台本、昨年夏のお題か懐かしや。ラジオディレクターの顔をもつ出武将殿の差配でいよいよ本番だ。

 

ここで《刑事ピクルス》についてお伝えしよう。職業と名前以外は伏せられたピクルスと周辺人物の会話劇。毎回謎のシチュエーションで空欄のセリフを埋める近代種目だ。川柳だけが大惨寺ではない。ラジオ収録のお題をお目にかけるので、ぜひ脳内で回答いただきたい。

刑事ピクルス◆◆『養殖詐欺事件』◆◆◆

 

Q 以下の会話の空欄を埋めなさい。

 

雨が3ヶ月止まない…

ゴーダ伯爵『うちの倉庫はカビだらけ』

エメンタール伯爵『うちもカビだらけ』

マリネ『                         』

ピクルス『お前もか!』

(がぴーん!)

 

録音前にゴーダ役の魔が差す藤丸殿とエメンタール役のつゆ艸は軽くウォームアップしたが、主役マリネの燦々殿はリハーサル無しの本番一発。立候補しただけあり声優さながらの名調子だ。性年齢を感じさせない声質は、不条理劇の可笑しみを見事に増幅している。いやぁお見事!

 

▲左:主役マリネ録音中の燦燦さん【54[守]師範代】指南完了直後の参加となった。パンチ効いた回答多し、時折お色気もふりまく

 

「では聞いてみましょう」。出武将殿の編集が完了し、試聴の時がきた。

 

雨が3ヶ月止まない…

ゴーダ伯爵『うちの倉庫はカビだらけ』

エメンタール伯爵『うちもカビだらけ』

マリネ『騙されません。本当はカビではなく、不備だらけです! その証拠が……あ、あれ、おかしいな……確かここに入れたのに……』

ピクルス『お前もか!』

(がぴーん!)  

 

雨が3ヶ月止まない…

ゴーダ伯爵『うちの倉庫はカビだらけ』
エメンタール伯爵『うちもカビだらけ』
マリネ『オイラは休日まんだらけ』
ピクルス『お前もか!』
(がぴーん!)

 

雨が3ヶ月止まない…

ゴーダ伯爵『うちの倉庫はカビだらけ』
エメンタール伯爵『うちもカビだらけ』
マリネ『カビの養殖、流行ってますよね。手間かからなくてペットに丁度いいですよね、意外とカワイイし。あ、カビちゃんが増えやすいラブリー壁紙、カビ紙、もちろん貼ってますよね?』
ピクルス『お前もか!』
(がぴーん!)

 

(※ナマ音源についてはこちらを聞かれたし! 「笑い概念の拡張」へ踏み出しています。)

 

「ん?」「ふふっ」「むぅ……」

目を閉じ、2回続けて聞いても追いつかない。所要時間15分の脳内ザワつく不条理コントは、聞けば聞くほど味変繰り返す複雑味に仕上がっていた。聞く大惨寺のおかげでアタマが器械体操を始める。読む大惨寺に慣れすぎだ!

 

「う~、プロにやってもらおうと思ってたけど、我々で作っちゃってもいいかもしれんね。一発当てて、億じゃ、億」

ほくそ笑む出武将殿。《大惨寺ラジオ》ここに爆誕。ついに大惨寺、外界浸出か。この先どうなる?

 

ここで、おばば帰る。さらばおばば。その属性は伏せられたままだった。

 

▲出武将殿が愛機で編集。よく見ると蓋がとれかけている

▲オンエアチェック中の出武将殿。プロの顔。巨匠の顔

 

比丘尼ックタイム B面食文化の拡張がとまらない

極寒の本楼で焼くだけじゃタマランと出武将殿肝煎りの「おでん」調理から宴がスタートした。高級だしの素が寸胴鍋にぶち込まれ、おでんだねが膨れて鍋から溢れ出す。ここにザ・B面食材「牛すじ煮込み」がドドんと登場。我らが出武将殿が手間を惜しまず自作した逸品だ。フルフルの煮凝りと化した牛すじがおでんに溶け出す。あぁ早く食べたい。

▲あふれかえるおでんだね

▲出武将殿の自信作牛スジ煮込み:おでんに、やきそばにB面風味注入

 

そこに、大惨寺遊夕番の獏蓮殿が登場。

やおら三つの玉を取り出し、猛スピードで剥き始めた。「土佐文旦三種類ですヨ。あとで味比べしましょうネ」。清涼な甘酸っぱい文旦の香気に満たされ、焼きそば会はかつてないA面モードに。「文旦は柑橘界の数の子だね」。That’s it! 出武将殿のメタファーで即座にB面へ逆戻り。

 

▲左:玉を剝く菊八さん【7守破出身】。300番から大惨寺に飛び込み、質量ともにリッチな回答をクールに連発。右:遊夕番獏蓮殿。飛び道具ムッキーちゃんを駆使

▲あたりをはらう清らかな香りを放つ土佐文旦。あっという間になくなった

 

そこから先は、ホットプレート奉行と化した出武将殿とフードの鉄人・獏蓮殿が「パリカリ韮焼きそばinおでん出汁」「西洋もんじゃ」「スイーツもんじゃ」と矢継ぎ早に焼きまくる。前回の焼きそば会を凌ぐキテレツメニューを堪能し尽くし、比丘尼ックダンシングタイムは幕を閉じた。

 

▲左:ホットプレート奉行。右:獏連殿がだれも見たことがない西洋もんじゃ創作中

▲左:魔がさす藤丸殿。人生がネタの宝庫なので、回答に困らない。右:大惨寺番長を務める白馬ッ苦連殿。お若いが何やら重き荷を背負っておられるご様子

▲左奥:屁意十度さん【51守破出身】。比丘尼ック真っ最中の参加者緊急募集コールに応え、焼酎持参で飛び入り参加

▲ニラを刻む出武将殿。出来上がりを待つ田中所長と菊八さん

 

大惨寺のB面味はやってみなくちゃワカラナイ

シン・お笑い大惨寺は、一昨年12月25日に大興行を開始した。千日回答行をターゲットに正月も休まぬ一日一出題が続き、現在、300番台後半を疾走中だ(たまに連続休暇)。千のお題を毎日出し続ける。自分だったらと想像すると途方も無い。しかも無料。さらに笑える。お布施を払いたいくらいだが、回答することがお布施と信じたい。

 

指南はないが上からヨコから声がする。型はあるが破壊する者あり。古典あれば近代あり。粋を尊びダサいを嫌う。強制ないが共読あり。楽あれば苦渋あり。途中下車前途有効。笑いに時折涙も滲む。一期一会のイシス人生やってみなくちゃワカラナイ。大惨寺の水は甘いか塩っぱいか、味見できるのはあと600日(仮)だけ!

 

文/アイキャッチ:つゆ艸(中田ちひろ

▼どう考えても参加人数に見合わない量のお酒とともに。大惨寺へ、来たれ!

  • シン・お笑い大惨寺 遊夕番遊夕番

    編集的先達:一休宗純、川上音二郎、椿三十郎、四方赤良。イシスと社会の狭間に生まれし「シン・お笑い大惨寺」。この河原から毎夕声を発するは人呼んで「遊夕番」。時には抜き身の刀のごとくギラギラと、時にはヌメヌメ艶っぽく、この世もわが身も笑い飛ばす。髑髏を蹴飛ばしオッペケペぇ、雨降らば降れ風吹かば吹け。

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