道ばた咲く小さな花に歩み寄り、顔を近づけてじっくり観察すると、そこにはたいてい、もっと小さな命がきらめいている。この真っ赤な小粒ちゃんたちは、カベアナタカラダニ。花粉を食べて暮らす平和なヴィランです。
[離]の指導陣は「火元」と呼ばれる。火元は入院した学衆に、時に厳しく、刻印されるような言葉を容赦なく手渡す。創を負い、失敗をし、離中で自信喪失する学衆も少なくない。
師範代育成コース[花伝所]で指南にあたり、まず「受容」の言葉を学ぶイシス編集学校の中にありながら、なぜ[離]はこのようなプログラムになっているのだろうか。
松岡校長が火元に託した3つの課題意識
2021年5月15日、第76回感門之盟「世界読書奥義伝 第十四季 [離]退院式」。
「『表沙汰では必ずや退院式では本楼でお会いしましょう』と誓いながら、またしても画面と画面の間で会うことになってしまいました。切ない14[離]ですね。」
太田香保総匠は、禁じ得ないおもいを言葉にする。つづいて、14[離]がはじまってまもなくの頃に松岡火元校長から火元に託された「3つの課題意識」を退院した学衆へ打ち明けた。
1.今の日本も世界も、ひょっとしたらイシス編集学校も「覚醒」が持続しなくなっている。14[離]の学衆の諸君も、覚醒しっぱなしでいてほしい。
2.社会の流動化・フラット化があまりに進んでいるために、「人並みでいい」「並でよい」と口にして、存在を縮退させたり沈潜させてしまっている。それではいけない。
3.昨今のSNSの影響か「たくさんのわたし」が矮小化しまっている。一人ひとりが例外的で、格別な「たくさんのわたし」になってほしい。
火元から学衆への痛みを伴う言葉は、この三つの意識から手渡されていた。
「本」が、ひとりではできない克服や何かに向かう目標をつくってくれる
こうした課題意識にはどのような大元があるのだろうか。
肺ガン手術から退院したばかりの松岡火元校長が、3階の書斎からZoom越しに、その呼吸とともに発する。

肺ガンにあたり、プロのチームが血糖値や麻酔の効き具合、あらゆるデータ情報をふまえて、手術・入院期間を完璧にコントロールして治癒に向かってくださった。これは僕ひとりの克服では到底無理です。
世界読書奥義伝もこのようなこと。「血糖値はこの本」「血圧はこのテーマ」「ヘモグロビンはこれ」といったように、あらゆる本が、ひとりではできない克服や、何かに向かう目標をつくってくれる。
こうした「本」とは、おそらく一生かかっても一割すらであうことができないだろう。火元校長のしつらえた[離]は、そうした「本」とであいつづけるプログラムであった。
そうして創をみたり長所をみたり、潤いを感じてみる。これが「世界読書奥義伝」という非常に珍しいやり方です。
努力がかたちになって報いる、退院式の一日を楽しんでほしいと思います。
司会を担うのは大久保佳代・桂大介の両右筆。退院を寿ぐ感門之盟がはじまる。

(左から)桂大介右筆(武臨院)、大久保佳代右筆(曵瞬院)、太田香保総匠
【世界読書奥義伝 第十四季 [離] 指導陣】
◆火元校長 : 松岡正剛
◆総 匠 : 太田香保
◆別当師範代: 小坂真菜美/倉田慎一(方師)
◆別 番 : 寺田充宏・小西明子
◆右 筆 : 大久保佳代・桂大介
◆析 匠 : 小倉加奈子
◆方 師 : 田母神顕二郎
上杉公志
編集的先達:パウル・ヒンデミット。前衛音楽の作編曲家で、感門のBGMも手がける。誠実が服をきたような人柄でMr.Honestyと呼ばれる。イシスを代表する細マッチョでトライアスロン出場を目指す。エディスト編集部メンバー。
11/23(日)16~17時:イシスでパリコレ?! 着物ファッションショーを初披露【別典祭】
本の市場、本の劇場、本の祭典、開幕! 豪徳寺・ISIS館本楼にて11月23日、24日、本の風が起こる<別典祭>(べってんさい)。 松岡正剛、曰く「本は歴史であって盗賊だ。本は友人で、宿敵で、恋人である。本は逆上にも共感に […]
「松岡校長のブックウェア空間を感じて欲しい」鈴木康代[守]学匠メッセージ【89感門】
読書することは編集すること 「読書」については、なかなか続けられない、習慣化が難しい、集中できずにSNSなどの気軽な情報に流されてしまう――そうした声が少なくない。 確かに読書の対象である「本 […]
「松岡正剛の方法にあやかる」とは?ーー55[守]師範陣が実践する「創守座」の場づくり
「ルール」とは一律の縛りではなく、多様な姿をもつものである。イシス編集学校の校長・松岡正剛は、ラグビーにおけるオフサイドの編集性を高く評価していた一方で、「臭いものに蓋」式の昨今のコンプライアンスのあり方を「つまらない」 […]
第87回感門之盟「感話集」(2025年3月29日)が終了した。これまでに公開された関連記事の総覧をお送りする。 【87感門】感話集 物語づくしのスペシャルな1日に(司会・鈴木花絵メッセージ) 文:今井サチ […]
「講座の中で最高に面白い」吉村林頭が語る「物語の力」とは【87感門】
イシス編集学校の校長・松岡正剛が、編集工学において、「方法日本」と並んで大切にしていた方法。その一つが「物語」であり、この物語の方法を存分に浴びることができる場が、イシス編集学校の[遊]物語講座である。 「 […]
コメント
1~3件/3件
2025-11-25
道ばた咲く小さな花に歩み寄り、顔を近づけてじっくり観察すると、そこにはたいてい、もっと小さな命がきらめいている。この真っ赤な小粒ちゃんたちは、カベアナタカラダニ。花粉を食べて暮らす平和なヴィランです。
2025-11-18
自ら編み上げた携帯巣の中で暮らすツマグロフトメイガの幼虫。時おり顔を覗かせてはコナラの葉を齧る。共に学び合う同志もなく、拠り所となる編み図もなく、己の排泄物のみを材料にして小さな虫の一生を紡いでいく。
2025-11-13
夜行列車に乗り込んだ一人のハードボイルド風の男。この男は、今しがた買い込んだ400円の幕の内弁当をどのような順序で食べるべきかで悩んでいる。失敗は許されない!これは持てる知力の全てをかけた総力戦なのだ!!
泉昌之のデビュー短篇「夜行」(初出1981年「ガロ」)は、ふだん私たちが経験している些末なこだわりを拡大して見せて笑いを取った。のちにこれが「グルメマンガ」の一変種である「食通マンガ」という巨大ジャンルを形成することになるとは誰も知らない。
(※大ヒットした「孤独のグルメ」の原作者は「泉昌之」コンビの一人、久住昌之)