遊刊エディストの編集部がお届けしている新春放談2025、其の陸、最終回となりました。松岡正剛校長なき後、遊刊エディストはどんな方向に向かっていくのか? 何をはじめ、どう編集していくのか? エディスト編集部メンバーたちが交わしあいました。
◎遊刊エディスト編集部◎
吉村堅樹 林頭, 金宗代 代将, 後藤由加里 師範, 上杉公志 師範代, 松原朋子 師範代,
上杉 今年も、新春放談のゲストの皆さんは、どなたもよかったですね。
吉村 編集部も、2025年の抱負を交わしてみましょうか。
🎍新春放談2025、華麗なるゲストたち🎍
🐍1人目のゲスト:大音美弥子 冊匠
🐍2人目のゲスト:畑本ヒロノブ 師範代
🐍3人目のゲスト:寺田充宏 [離]別当師範代/[AIDA]師範代
🐍4人目のゲスト:丸洋子師範代
◆5年ぶりのエディスト改編が目前に
後藤 2025年はエディストのデザイン変更を予定していますが、それがまたメディアの活性につながるといいなと思っています。
吉村 どんな改編かというと、スタートから5年もたてばウェブ・テクノロジーも変化しています。YouTubeやポッドキャストなどの動画や音声も、当たり前になってきています。それに対応するべく、TOPページの改編は必須だと思っていたんですよ。
後藤 [多読アレゴリア]のYouTube番組も始まりましたし、”オツ千”や”ほんのれんラジオ”は音声番組ですものね。
金 まずTOPページに、YouTubeやポッドキャストへのリンクを張りますね。それから、新カテゴリーが2つ増えます。MASTとZEST。編集工学の帆を立てるような骨のある記事、たとえば、学長通信やISIS co-missionたちの記事などはMASTになりますね。講座の師範や師範代から公開される、あふれる情熱を感じる記事はZESTに。あとは、いちばん上に、”松岡正剛&ISIS co-mission”という入り口をつくる予定です。それと、コメント。放談1日目でも吉村さんが語りましたが、記事にコメントを付ける人を選んで、その人たちがコメントをつけていくようにします。そんなところかな。
吉村 それと、Edistメルマガをはじめようかと計画しているよね。
金 ですね、僕もそれは以前からやったほうがいいと思っていたんですよ。毎日記事があがるけれど、よいものも埋もれていってしまうので、工夫しましょう。
マツコ 編集学校に未入門の方もメルマガ登録できるようにしますよね。また2025年にやることがいっぱいになってきてますが(笑)、楽しみですね。
◆松岡校長不在。これを契機にどう編集をおこしていくのか
金 僕は、松岡校長がいなくなって千夜千冊が更新されていないのをみて、ああ、松岡校長が亡くなったんだなと感じることがあったんですよ。千夜がでない、エディションがでない。校長の本もでない。そうすると、今までは編集工学者であるというモデルがあって、編集工学をやっている人の学校だと言ってきた。これから、校長以外に、そのモデルが必要になっていくなというのが、感じているところです。まあ、前から必要なんだけど、一人は編工研の代表をつとめる安藤昭子さんが本を出していることもあるし、『情報の歴史21増補版』が出版されて吉村さんが編集長で前に出ているということもある。そういうことがもっとないといけないなと思っています。
▶安藤昭子著『問いの編集力』を、エディスト渦チームが新しいスタイルでレビュー
『問いの編集力』×3× REVIEWS
金 松岡校長が千夜千冊をつくっていたように、外に対して、反応できるものとして作っていかないといけないなと。2025年なのか、もっと時間がかかってしまうかもしれないけれども、個人的にもエディストのメンバーの中からでも、表現できる人が突出してくるようにしていかないといけないなと。そういう意味では、吉村さんがおっしゃっていたような、情歴のウェブ化プロジェクトなど、コンテンツをつくっていくのも重要だと思っていて、一方で、個が立っていくことが必要不可欠だと思っているところです。
吉村 かつての仏像の意味は、人間の理想像だよね。こういう人間になっていくのだというモデルとしてつくっている。エディストにも、次のモデルは必要ですよね。
金 例として相応しいかわからないけれど、吉本に入ったら芸人になれるじゃないけど、ダウンタウンとか令和ロマンとか、芸人のモデルや先輩がいて、ここに入ったらこうなれるという道がありますよね。編集学校に入って出た人がどうなっているのか、そこに結果がともなっていれば説得力を持つと思うので、編集学校を出た人がエディストで表現力を発揮してくれたらとってもいいですよね。
上杉 僕の場合、[多読アレゴリア]が新しく動き出しているので、担当している“音づれスコア”をどう展開していくのか。これが自分にとっては大きいです。
【多読アレゴリア:音づれスコア】イシス初! 聴覚情報を編集するサロンがオープン
上杉 [多読アレゴリア]は、今までのイシス講座とはまた違う特徴があると思っています。一つは、参加者で、数年前に入門した方から1[離]の方まで、編集学校歴や校長との関わりが多様で、イシス的なクロニクルな人々が集まっている場になっています。二つ目は大音さんも言及されていた「未知」、そして「好奇心」です。”音づれスコア”の中で参加されている方々に期待を聞いたら、色々な可能性があるのが分かってきました。知らない音楽や新しい音楽を知りたいという方もあれば、音楽の演奏表現に関心がある方もいる。文字や文章で好きな音楽をシェアしたい人もいれば、音楽の共読ならぬ「共聴」を楽しみたい人もいる。こうした、与えられる問いだけでなく場に集うメンバーの好奇心が場をうごかすエンジンになる場に、いままでにない未知なる編集可能性を感じています。編集される情報が、音楽だけでなく、参加される方々や生活も全部対象となるわけです。一方で、単なる既存の音楽好きが集まる同好会にならないために大切なのが、明示的でも暗示的でもいいのですが「編集工学」をベースとすることであると思います。
マツコ 上杉さんが師範代をされた教室名が”音づれスコア”だということで、大切な名前を[多読アレゴリア]のクラブ名にされたのですよね。思い入れを感じます。しかし、”音づれスコア”以外にも、編集工学を”地”にテーマ性のあるユニークなクラブが「12」も立ち上がったと思うと、やっぱり圧巻ですね。エディストでもその一端を読んでみたいです。
上杉 そうですね。個人的には、”音づれスコア”で起こっていることを、そこで紹介される音楽や好奇心ごといかに記譜(スコアリング)していけるかにチャレンジしていきたいです。そのスコアによって、参加される方々のあいだの対話がより豊かになって、”音づれスコア”に集まる方々の好奇心や関心が、ポリフォニックに充実していけたら嬉しいです。
後藤 私は[多読アレゴリア]で頭がいっぱいなのですが、これからクラブが立ち上がる計画もあるので楽しみですし、コミッションのコラボには、2025年も力を入れたいと思っているところです。
吉村 コミッションも、まだ大澤真幸さん他、クラブがないメンバーもいますので、2025年は、まだご一緒に活動を始められていないメンバーの方々とも、何かおこしたいですね。
マツコ 寺田さんが企画中のものもあって、これからさらに増えるとも聞きましたしね。春にまたいい波がきそうですね。
後藤 [AIDA]では大澤真幸さんが、松岡校長不在をどう補うかを真剣に見てくださっています。編集学校でもさらにご一緒いただけたらいいなと思っています。
◆『情報の歴史21』増補版はイシス・ネットワークをひろげる
後藤 それから、『情歴21増補版』が発売されました。みなさんもう購入はお済ですか(笑)?みなさんにぜひ手に取ってもらいたいですね。
吉村 すでに『情歴21』の書籍を持っている方も、2022年、2023年の情報が入っ手更新された新バージョンを手にしてほしいですよね。編集工学研究所のウェブから購入いただくと、紙の本と一緒に、PDFも無償で贈呈していますので。今度は、高解像度ですからね。
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上杉 高解像度になったんですか?
吉村 前回は実はスキャンしたものだったんだけれど、今回は全部のページを穂積くんがデザインレイアウトしなおしているので、むちゃむちゃ綺麗でくっきり見やすいですよ。ぜひ検索したおして、編集稽古に活かしてほしいですね。
上杉 だいぶ変わりますね。
後藤 2025年も、情歴を通じて、外とのつながりを大事にしたいと思います。
上杉 以前、多読ジムスペシャルで、“大澤真幸を読む”を開催したときのイベントで、大澤さんが、ご自身の本を題材に講座をもったことについて、とても喜んでくださったんですよね。多読ジムスペシャルは1回限りの場でしたが、今は[多読アレゴリア]といういつでも参加ができる場があるので、ISIS co-missionや外部の方々とも、継続して関係を編んでいくことができますよね。実際に、今福さんのクラブでは今福さんから手紙が届いたり、武邑さんのクラブでも連載をクラブメンバーで共読するなど、「多読アレゴリア以前」とはちがう新しい関係がつくれていると思うんですよね。いろいろなメディアや場のあいだをつなげながら、2025年はイシスの活動が内外にもっと開かれていけたらいいですね。
書くとは全部を出す覚悟 多読SP「大澤真幸を読む」読了式 10shot
金 コミッション・メンバーが審査員となって、アワードみたいなものをつくれないですかね。例えば、山本七平賞とか、河合隼雄賞とかあるじゃないですか。あんなふうに、例えば、イシス賞をつくってスポンサーを付けて、賞をとった人には200万円など賞金が贈呈出来て…みたいなことができないですかね。編集工学という視点から、今年のイシス賞を出せるようにしたらどうでしょうか。編集学校に貢献できるものになるんじゃないかな。
吉村 それはありえるよね。テーマが本であればできそうですね。そこまでいかなくても、新聞などで年末になると色々な人に今年の演劇とか、今年の映画10本とかをあげさせているじゃないですか。コミッションに、今年の音楽、今年のアートなどをあげてもらうというのもおもしろいですよね。余談ですけれども、僕が最近注目している漫画があって、『どくだみの花咲く頃』というのは、久しぶりにいいなと思っているんですよね。この著者の方はいいですよ。それから、Macaroom(まかるーむ)というバンドに穂積くんと一緒にハマっているんだけど、曲を作っているASAHIさんが、YouTubeをやっていて、松岡校長の『多読術』を取り上げているんですよ。
金 そういう方々もどんどん混ざっていくといいですね。
吉村 松岡校長が懇意にしていた方々ではない人たちともネットワークを広げていきたいですね。
◆新しい言語が、思考を変え、行動を変える
吉村 僕はね、今年やりたいことはいくつかあるんだけど、テーマとしては言語です。ISISフェスタの”情歴を読む”に、ゲストとして安田登さんが来ていた回があって、そのときに、そろそろ新しい言語をつくる時期だと言われていたんですね。それとも重なることです。
言語っていうのは、どういう言語を使うかによって、人間の思考や行動がすごく変わりますよね。本居宣長が、漢意(からごころ)を排して大和心で考えないと古事記は読めないと言ったように、使う言語によって考え方も振る舞いも変わっていく。そこで、“AIDA言語”というものを考えたほうがいいと思っているんです。情報は対になっているし、情報は関係やあいだに存在するのだから、常にそれを意識するようなAIDAを表すような言語を考えていったらどうか。僕のほうでは、少し腑分けを始めていて、AIDAの方法、AIDAをつなぐ言葉、次の情報を呼ぶ言葉などを目次だてしはじめています。
上杉 なるほど~。
吉村 それと、編集工学については、金くんが個を立てていく必要があると言っていたけれど、それはそのとおりです。自分自身、今までもプロジェクトをつくったりディレクションしたりしてきたけれども、個としてどんなことが可能かも考えたいと思っています。ずっと思っているのは編集工学をどういう切り口で示せるのかということ。欲望や感染などネガティブにも捉えかねないような切り口から、編集工学をとらえなおしてみたいと思っています。
金 僕は気になっているのは、[多読アレゴリア]が始まりましたから、ここで、21世紀型クラブとサロンというテーマについて、メディエーションしていったらどうかなと考えているんですよね。僕や吉村さんが綴ったり、その他の[多読アレゴリア]のメンバーたちも、外に出ていくことも必要なのかなと、今は思っています。
吉村 そうだね、編集学校の外に示していくことも大事だと、僕も考えています。たとえば、近江ARSの関係者の皆さんとも、連携が進む可能性もあるでしょう。それから、[多読アレゴリア]や情歴ウェブ化プロジェクトはもちろんのこと、エディストではデザイン改編にプラスして、連載を増やしたい。コミッションのメンバーのみなさんの連載も可能性があります。
◆10周年を目指して、エディストがみせるさらなる編集力に期待
吉村 もうひとつ、エディストは、JUSTライターがたいへん重要な仕事をしていると思っているんです。だからこそ、スクープ、取材、追っかけ、定点観察など、もっともっと刺激のあるレポートができるんじゃないかな。エディストがJUST記事によってエネルギーに満ちた場所になるといいですよね。
マツコ 私、2025年、エディストを頑張りたいです。まぁいつも地道に走ってはいるんですけれども(笑)。そういえば、編集部が前月の公開記事から推しキジをPickするシリーズを担当してますが、これが昨年で50本を超えたんですよね~。それはそうと、どの記事も良くて今月の推しキジ選ぶの困っちゃうね、というぐらいに、よい記事が乱立する状態になるにはどうしたらいいか。金さんと重なるのですが、エディストの記事を見て、編集学校で学んだ人はこういうスゴイ記事が書けるのねと思われるようなメディアにしていけたらいいなと。
吉村 それはどうやったらできると思いますか?
マツコ 以前からやりたかったことなのですが、今年は、なんらかみんなの研鑽の場をつくれたらどうかなと。たとえば、編集部主催で、吉村さんや金さんが直接指南してくださるような、エディストのスタート時に松岡校長がみんなの記事にコメントしてくださったような感じでできたら、いかがでしょうか?
吉村 エディスト・ライターの工冊會や伝習座のようなものを、年に1回ぐらいはやってもいいですね。参加は任意ですが、個別に指南したり、実際に例を見せて、ここはこうじゃないよね、というような確認をしたりね。
マツコ はい、2025年のデザインをリニューアルするタイミングでもいいですし、学校行事が忙しくない時期に。そんな時期はないかもしれないのですが(笑)、やってみたいですね。
上杉 JUSTライターにとってもそういう機会があったらすごくいいなと思いました。ゲストにお呼びした丸さんも、吉村さんとの関わりの中で、お題と指南があることがエンジンになったとお話されていましたよね。JUSTライターの皆さんも、そういう機会があるとフィードバックがかかって、より生き生きしてくるんじゃないかと。
吉村 エディストは編集学校の要のメディアだからね。さらに活性化させなくちゃダメなのよ(笑)
マツコ はい、ですので、みんなでエディストを盛りあげないと(笑)。編集学校にとっては社会との接点。編集的世界観への文字通り媒介になるメディアです。日々かなりの方々に閲覧いただいていますし、可能性は計り知れないと思っています。
金 最近、ロバート秋山の俺のメモ帳っていうラジオがあって、面白いんですよ。相当下品ですけど、面白い。アマチュアの視聴者にお題を出して、電話したりとか、投稿させて、それを秋山がリミックスするんですが、それがいいんですよね。エディストも、いろんなレベル感の記事があるかもしれないけど、リミックスとか編集をかけて面白くできるっていう状態ができるといいですよね。
吉村 そうだね、「遊気」をもって、さらに刺激的で活動的なイシスにしたいですね!
一同 はい!!!!!! エディスト・ライター、そして読者の皆さんとご一緒にぜひ!
2025年の新春放談はこれにて終了。いかがでしたでしょうか。
エディスト編集部は、遊刊エディストを、そして編集学校を再編集し、さらに刺激的で愉快痛快なイシスにすると宣言したのでした。
エディストを、本年もどうぞよろしくお願いいたします🐍
2025年も、さらに編集力をあげていこう🐍
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🎍2025年 新春放談🎍
其の壱 – 今年、エディストは“松岡正剛の再編集”へ向かう(1月2日公開)
其の弐 – 死者との約束を胸に、新潮流[多読アレゴリア]を動かす(1月3日公開)
其の参 – イシス随一のマエノメリな姿勢が武勇伝をつくる(1月4日公開)
其の肆 – [離]・[AIDA]・[多読アレゴリア]をまたにかけ、創跡を残す(1月5日公開)
其の伍 – ひと文字から広がるシソーラスが自由の境地をひらく(1月6日公開)
其の陸 – 編集力をあげ、「遊気」をもって、いざさらに刺激的なイシスへ(1月7日公開)(現在の記事)
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エディスト編集部
編集的先達:松岡正剛
「あいだのコミュニケーター」松原朋子、「進化するMr.オネスティ」上杉公志、「職人肌のレモンガール」梅澤奈央、「レディ・フォト&スーパーマネジャー」後藤由加里、「国語するイシスの至宝」川野貴志、「天性のメディアスター」金宗代副編集長、「諧謔と変節の必殺仕掛人」吉村堅樹編集長。エディスト編集部七人組の顔ぶれ。
2025新春放談 其の伍 – ひと文字から広がるシソーラスが自由の境地をひらく
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