宮谷一彦といえば、超絶技巧の旗手として名を馳せた人だが、物語作家としては今ひとつ見くびられていたのではないか。
『とうきょう屠民エレジー』は、都会の片隅でひっそり生きている中年の悲哀を描き切り、とにかくシブイ。劇画の一つの到達点と言えるだろう。一読をおススメしたい(…ところだが、入手困難なのがちょっと残念)。

いったいどういう風が吹いてきたのか。AIが文章を書いてくれる時代に、編集的に書く講座[破]が盛況だ。48[破]61名、49[破]67名だった受講者が、今期はぐんぐん増え続け、予定を超えて2教室増設、96名での開講となった。
開講前の師範代の研鑽の会「伝習座」では、北原ひでお評匠が、ChatGPTに編集稽古をさせる実演を行った。[破]のお題を入力すると、ChatGPTは、すらすらと回答を書き出す。完成した回答をパッと一気に出すのではなく、一文字一文字が一定のスピードで表示されてゆくので、「いま書いている」感じがする。文章を書きだすときに「うーん」とうなり、書いては消してを繰り返すもどかしさがまったくない。淡々とした出力ぶりを、とってもAI「らしい」と感じた。
文章を書くことがもどかしくないなんて! と驚くとともに、回答の出来栄えもなかなかであった。内容によってヘンだなと思うものもあるが、人間が書いたものと区別がつかないような回答もあった。こういう便利ツールが使えるようになった世界で、悩みながら、時には絞り出すように書きたい人たちが[破]に続々集まってきたとは、いかなることか。
ChatGPTにまかせていいような文書もあるだろう。いままでだって例文集やテンプレート集は重宝されてきた。これからは、AIにまかせられないものを人間が書いていく。AIはいまの世界に存在している情報を組み合わせ、最適な、あるいは妥当な回答を効率的に出してくる。対して編集学校では、なんらかの発見があり、読者と絶妙なコミュニケーションを図る文章を書きたい。書き手の思想や感興がスタイルをもって表象された「創文」をめざしている。
[破]では、最適、妥当を超えて「創造」したい。AIに追いかけられて、人間の編集力がアップするのか? それもいいが、存外、視点を変えるだけでいいのかもしれない。AIには「言えないこと」が、たくさんあるはずだ。校長曰く「AIではルンバのエロスはつくれないじゃないか。」) 注)ルンバは掃除機でなく、ダンス。
50[破]は、本日4月24日12:00に開講した。初回答は12:23に、体内止観教室に届いた。つづく回答は12:38に、異郷エンシオス教室とモーラ三千大千教室に同時に到着。準備万端の師範代と、稽古を待ち構えていた学衆の手合わせが始まる。あなたにしか書けないことを、方法をもって生き生きと綴ってゆこう。
原田淳子
編集的先達:若桑みどり。姿勢が良すぎる、筋が通りすぎている破二代目学匠。優雅な音楽や舞台には恋慕を、高貴な文章や言葉に敬意を。かつて仕事で世にでる新刊すべてに目を通していた言語明晰な編集目利き。
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コメント
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2025-09-18
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2025-09-16
「忌まわしさ」という文化的なベールの向こう側では、アーティスト顔負けの職人技をふるう蟲たちが、無垢なカーソルの訪れを待っていてくれる。
このゲホウグモには、別口の超能力もあるけれど、それはまたの機会に。
2025-09-09
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豊かさをもたらす贈りものの母型は、私欲を満たすための釣り餌に少し似ている。